文章:大原 朱理(All About「アメリカ東海岸」旧ガイド)
2004年トニー賞最優秀ミュージカル賞受賞
今年の夏、2004年トニー賞受賞のアベニューQというミュージカルを見に行きました。トニー賞というのはミュージカルのアカデミー賞のようなもので、アベニューQは、最優秀ミュージカル賞、最優秀脚本賞、最優秀原作賞をとったということで、期待を膨らまして劇場に向かいました。
ジェネレーションXを描写
ストーリーは、大学を卒業したばかりのプリンストンという青年が、仕事が見つからず、ニューヨーク、ブルックリンの庶民的な地区、アベニューQに引っ越すところから始まります。プリンストンは最初希望にあふれ、"Something coming, something good"(何かが来る、何かいいことが)という歌を明るく歌い上げるのですが、就職面接試験に次々と落ち、だんだんと落ち込んでいきます。
苦労知らずでテレビに囲まれて育ったジェネレーションXのプリンストンは、日本でいうとマニュアル人間で、自分の屈折に対処するために、そのうち生きる意味を素直に問い始めます。
2つの顔を持つ主人公
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| 主人公をはじめ、多くの登場人物が2つの顔を持つアベニューQ(copyright:Carol Rosegg) |
ここまで話をすると、よくありがちなミュージカルのように思いますが、アベニューQのユニークなところは、プリンストンが二つの顔を持つということです。つまり人間としてのプリンストンと、プリンストンが手に持つ、パペット(人形)が二重に演技をし、歌を歌っていることです。
この効果はシリアスなテーマを軽く受け止められ、何かアニメを見ているような錯覚に陥ることです。逆に深いテーマをてらいなく伝えられるのかなと思いました。
愉快な近所の住人達
アベニューQの他の登場人物もとてもユニークでした。昔子役スターだった過去の栄光に引きずられている、アパート管理人の黒人ゲリー、プリンストンと恋に落ちる幼稚園の先生ケイト(パペット)、ウォール街で働く、共和党員で同性愛者のロッド(パペット)、ロッドの同居人でそのうちホームレスになってしまうニッキー(パペット)、コメディアンを目指すブライアン、ブライアンの妻で日本人心理セラピスト、クリスマス・イブ等。
それぞれの登場人物が悩みを抱えながら、お互いを思いやりながら、厳しい世の中の問題、障害を、明るく歌ったり踊ったりしながら潜り抜けていく姿は、ニューヨークの下町の姿を肯定的にスマートに、テンポよく描いているなと思いました。
- GQ JAPAN11月号のNYエコ特集にて、最旬NYエコスポットを寄稿。09/10/02