緊急提言 温泉問題を考える
にごり湯で有名な温泉にイオウ製剤の
六一〇(ムトウ)ハップが入れられた問題、水道水や井戸水を沸かした湯を温泉と表示した不当表示の問題、循環器の清掃不足から発したレジオネラ属菌繁殖問題、と温泉に関する残念なニュースが続いています。
個人的には、消費者受けする表面的なニュースに終始し気味の最近のメディア報道(サウナ用冷水を温泉でなく水道水だと表示していないことが本当に真っ当な意見なのか、何か他の圧力が働いているように勘繰りたくなります)や、そうした風潮を作り上げ、さらに温泉枯渇を促進するおそれもある「源泉賛美主義」の行き過ぎが気になります。
また、温泉地のほうでも、温泉配湯や温泉権の問題ははるか昔からの頭痛のタネ。元湯を持っている方の力が強く、その方と万一こじれたらどうなるか、地域の悩みを誰が知っていることでしょう。
ということのほかに、明らかに人災であろう、これら残念なニュースの根元にある大きな原因のひとつが「コスト削減」のやり過ぎ。
原発事故もしかり、対面通行の高速道路の量産による事故多発、もしかして、みんな「ケチったための事故」ではないでしょうか。温泉も然り。
もちろん、温泉は石油と同様、限りある地球の資源。自然湧出で大量に捨てている場合を除き、適度にケチらないと、それこそ本当に枯渇してしまいます。あるいは、白骨のように、源泉の質の変化で白濁が透明になっていくこともあります。これは全て自然の成り行きです。許してください。
が、そういう温泉の資源的枯渇の問題ではなく、温泉利用のための温泉組合費や利用料を支払えない、温泉管理の人件費が払えない、なんてのがもしかして「コスト削減」のためだとしたら、これは別問題です。
なぜ、コスト削減をするかといえば、売上ダウンが続くなかでの利益の確保。
なぜ、利益確保が必要かといえば、借金返済促進のため。
なぜ、借金返済が促進されるかというと、金融機関の自己資本比率向上のため。
と、日本経済の構造の縮図と重なります。
しかし、短期的な借金返済で有効な方法は「徹底したコスト削減」と「安売り多売」。
そのため、各地に「安かろう悪かろう」旅館(失礼!)がどんどん新設され、あるいは金融機関に優遇されています。もちろん、そんな宿でも、旅の目的に適っているのなら全くOKですが。
でも、その陰で、まっとうな温泉で、きちんと定期的に浴槽を洗い、建物維持に気を払い、伝統を守り、地域の人材を雇用し、多少原価の高い地域の食材を使い、その代わり多少高く、と言ってもデフレであまり高くできないので、利益を削ってでも喜ばれている旅館が、逆に今、存亡の危機にさらされています。
皆さんに(金融機関さんにも)お願いです。まっとうな旅館を守りましょう。
目先のコスト削減も大切ですが、それ以上に「人に長く愛され、馴染み客の多い」しっかりした経営理念のある旅館を残して欲しいものです。
温泉問題を、表面的な問題としてだけとらえず、ぜひこの機会にその原因を考える機会にしていただければ幸いです。
※温泉の歴史や成り立ちをもっと知りたいという方には
「温泉と日本人」という好著があります。お時間ある皆様はこの機会にぜひご一読を。