爬虫類・両生類/カメ・リクガメ・水生ガメの飼い方

リクガメと暮らすと言うこと 「リカ」という名のホウシャガメ(2ページ目)

ホウシャガメと暮らす老夫婦がいます。リクガメとの30年間とはどんな生活なのか。取材してきました。

執筆者:星野 一三雄

▼「リカ」の生活
さて、「リカ」は毎日どんな生活を送っているのでしょう。
◇ケージ
「リカ」は30年間、基本的にずーっと、家の居間で生活しています。毛布が掛けられた段ボール箱が小屋として与えられていますが、毎日狭くて、暖かい場所を選んで寝ています。
◇保温
南国宮崎とは言え冬の寒さはリクガメたちにとっては耐えられるレベルではありません。もちろん「リカ」も同じです。「リカ」は冬の間はストーブによって暖められた居間で生活し、夜の間は「あんか」をあてがわれて30回の日本の冬を乗り切りました。
◇紫外線
リクガメには強く十分な量の紫外線が必要です。日本一の日照量を誇る宮崎は、そういう意味ではリクガメの飼育に向いているかもしれません。特別な紫外線灯等なしで30年間を過ごしています。基本的には居間の窓からガラス越しの日光浴が中心です。また、ときどき外に出してもらうときも、絶好の日光浴のチャンスのようです。
◇餌
リクガメは草食ですので、「リカ」も新鮮な無農薬の野菜をたくさん食べています。基本はレタスとキャベツ。意外に小食で、一回に二枚ほどの葉を食べています。果物が多く入手できるときは「リカ」にも回ってきます。イチゴは大好物で、一回に半パックを平らげるといます。

◇排泄
長い間、飼育をしているとだんだんと行動のパターンもわかってくるようで、餌を食べた後はご夫婦二人がかりで「リカ」をおふろ場に連れて行きます。「リカ」もわかっているのか、連れて行くとすぐに排泄を始めるそうです。

▼「リカ」との生活
Mさんが「リカ」との生活を始めた30年前などは、もちろんリクガメ飼育に関するノウハウなどは皆無だったでしょう。
例えば、モーリシャスから「リカ」が日本にやってきたときには、環境の激変からでしょうか、まったく餌を食わなかったそうです。心配した、Mさんが話しかけながら、甲羅をさすってあげたときにはじめて「リカ」は餌を食ったそうです。

今では、もちろん手に持った餌も食うようになっています。私がうかがったときも目の前に差し出されたリンゴをしゃりしゃりと音を立てて食い、他の皆さんが飼育されているリクガメ同様に口の横に食べかすをつけて満足そうな表情をしていました。

Mさんは私に「アルバム」を見せてくださいました。そこには色の褪せたカラー写真がたくさん貼られていました。お子さんたちの結婚前日の時、はじめてのお孫さんが遊びに来た時、家族みんなで海に遊びに行った時、お孫さんの七五三の時...いろいろな場面で「リカ」が中心になって写っていました。
これこそがリクガメ、そしてカメを飼育する楽しみなんだな、と20年間をミドリガメと過ごした私も改めて認識しました。

遠いモーリシャスから連れてこられた「ホウシャガメ」の「リカ」。
CITES1と言う不名誉で特別な存在であることなど意に介さず、Mさん夫婦の歩く後をトコトコとついていく姿は、改めて「生き物を飼育する」と言うのはどういうことなのかを私に考えさせました。

「リカ」は確かに「CITES1のホウシャガメ」です。しかし「リカ」がたとえ夜店で売られていたミドリガメであっても、Mさん夫婦にとっては子供さんたちと同等か、あるいはそれ以上の存在だったでしょう。

Mさんご夫婦と「リカ」、いつまでもお元気で。

※今回の記事は、掲載にあたり多くの方のご助言をいただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。また「自然環境研究センター」に問い合わせて、記事を公開することに問題がないか確認をしたところ「CITES批准の前の個体であるし、個人が飼育を続けると言うことならば登録等の問題もない、ので記事にすることに問題はない」とのことでした。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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