文章:坂本 光里(All About「犬」旧ガイド)
地域住民の「人と人とのつながりの積み重ね」で
解決していくことが肝心

3/21と22にわたって開かれた『ヒトと動物の関係学会』の年次大会に行ってきました。
まずは「動物愛護・セクターを超えた問題解決のために」と題されたシンポジウム第1部からのレポートとわたしなりの感想です。
これには「コミュニティでの産学官民協働」との副題が付いていて、発表者は地域で活動している動物愛護推進員や個人のボランティア活動者、NPO団体の主宰者、動物愛護センターの職員、大学の研究者といった多彩な人たちが顔ぶれをそろえ、いろんな角度から意見が交わされました。
山岸恵美子さんのスライドを使っての活動報告
とくに今回は「動物愛護推進員」制度を設けるなど、人と動物の社会的な共生を積極的に推進しようとしている兵庫県からの発表者が中心。兵庫県は阪神淡路大震災の経験をふまえて、こうした問題に他の地域より一歩早く取り組まれたのでしょう。
発表の内容は、公園で犬のウ○チを拾う活動とか、リードを外して遊ばせる飼い主たちに注意を呼びかけるとか、しつけ教室とかを通して、地域住民の「意識の向上」を図っていこうという地道な活動の報告。とくに「犬嫌いは犬好きがつくる」という川西市民でボランティア活動に取り組まれている山岸恵美子さんのセミナーのキャッチは印象的でしたね~。これは子どもたちが公園の芝生で遊ぼうとすると、あちこちに犬のウ○チが落ちている、そんな環境をつくっているのは愛犬家であるというふくみですが、同じことが平気でノーリードで犬を遊ばせる人にも言えますよね。子どもが犬に咬まれてすっかり動物嫌いになってしまうということもあるでしょう。
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| 森文彰さんと細川有里子さん |
聞けば聞くほど頭が下がる取り組みですが、その成果はどうかと言われれば「なかなか耳を貸してもらえない」というきびしい現実があるようです。ようはそうしたアドバイスを素直に受け入れ、セミナーなどに来る人たちは最初から意識の高い飼い主さんたちで、本当に出席してほしい人は来ないということなのでしょうね。動物愛護推進員の森文彰さんは、地域の仲良しグループや自治会などの集団で、フン拾いを行うなどして当事者の関心を高め、放置しにくい環境をつくっていくしかないと言われていました。
この主張は、NPO的な会社組織
「ネイチャースケープ」代表の中川芳江さんや、
兵庫県動物愛護センターの細川有里子さん、
関西学院大学の総合政策研究科に身を置く上野山晃宏さんの意見と同じで、地域の活動グループが相互に連絡を取りあい、コミュニティレベルでの問題解決にとどまるだけでなく、ネットワークをつくって活動の知識・情報を交換しあって、より大きな運動にしていくべきだというのが結論でした。
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| 上野山晃宏さんと中川芳江さん |
ネイチャースケープの中川さんは「特定の人びとや自治体、愛護団体の“がんばり”のみで解決をめざすのは限界。より多様な人びとの関わりによる産学官民協働の方法しかない」と言われていました。そしてその第一歩は、飼育の放棄、殺処分、マナー、虐待などについてその原因を究明し、それを相互に「共有」していくこと----それが共通理解を深め、産学官民の壁を取り除いて解決に通じる方法を生み出したり、それぞれの立場から問題にアプローチしていく行動につながるというわけ。この相互の「納得感」が大切だということですね。
森さんによると、いまは動物愛護推進員同志の連絡網もなく、推進員の地域社会への浸透度もうすいそうで、腕章をしていることで多少の抑止力にはなるものの、ほかに何かの権限があるかといえば何もないということでした。県の予算も100万円が動物愛護センターを中心に組まれている程度で、推進員が自発的にセミナーを行うほどの報酬はありません。せっかく推進員制度を設けたのですから、報酬はともかくセミナーやしつけ教室の開催には何かの援助をしてほしいものですよね。
しかしながら、小型犬を中心に急伸したペットブームの影響は今後、いろんな問題を膨らませていく可能性は否定できません。ウ○チの放置だけでなく、1日じゅう繋がれっぱなし、いくら鳴いていても散歩にも出さない、多頭飼いで公衆衛生や環境汚染を招いているといったことは、あちこちで犬嫌いの人を増やしているかもしれません。
だけど考えてみれば、これらはみんな犬のせいではなく、飼い主の身勝手つまり人間の問題なのです。だから地域住民の「人と人とのつながりの積み重ね」で解決していくしかない。そのためにも産学官民協働による「対話」の場をつくるという試みが早く実現してほしいと思いました。