文章:坂本 光里(All About「犬」旧ガイド)
犬は吠えるものという認識に立って、
吠える理由ごとに対応を考えていく
日本臨床獣医学フォーラムの年次大会では毎年、市民フォーラムという一般の飼い主向けの講演があります。その中でも、一番気になったのがこの
「吠える犬の言い分---うちのこは何でうるさいの?」というプログラムでした。講師は専門学校ちば愛犬動物学園・しつけ担当選任講師の伊藤佐枝子先生です。

ところでみなさんは、犬にはそれなりの理由があって吠えているということをご存じですよね。じゃあ、犬が吠えるのはどんなときでしょう? 伊藤先生はつぎのように分類しています。
◆インターホンの音(来客、宅急便など)に反応して
◆外からの音(散歩中の犬の気配、販売車のアナウンス)に反応して
◆外出時や帰宅時に興奮して吠える
◆留守中ずっと吠えている
◆通行人や散歩中の犬や猫、クルマ、自転車、バイクに反応して
◆来客、訪問者に反応して
◆散歩中の犬に対して
◆人やクルマ、バイクなどに対して
◆クルマの中から外部の人や犬に対して
なるほど、みなさんは身に覚えがありますか?うちの場合は室内飼いですが、
まあほとんどのケースが当てはまります。
そこで一度、伊藤先生は「犬とはどんな動物なのか?」という話をされました。動物界におけるイヌという種を、その習性と行動から見ますと、つぎのようなことがいえます。
■グループ、群れで行動する動物である
■動く物に対して追いかける習性がある(狩猟本能)
■咬む(狩猟本能、闘争本能、力の誇示)
■守る(防御、種や群れの維持)
■吠える(あやしい外敵を遠ざける、テリトリーの誇示)
つまり、「犬は吠える動物である」ということです。
吠えるのは大事な仕事の一部であり、種を存続していくための必要な行為だともいえるわけですね。そしてそれはときに外敵から群れを守り、ときには群れの中での自分の地位を確保するためでもあり、ときには獲物を仲間の輪の中へ追い出すためでもあった。その意味で、吠えるという行為はもっとも「犬らしい」行動のひとつといえるかもしれません。
では、とくに吠えやすいのはどんな犬種かを見てみましょう。
日本犬、シェパード、ドーベルマン、日本スピッツなど
ビーグル(ウサギを追う)、ワイヤーフォクステリア(キツネ)
シュナウザー(ネズミ)、ダックスフンド(アナグマ)など
コリー、シェットランドシープドッグ、ビアデットコリーなど
ウェルシュコーギー(牛を追う)
ポメラニアン、ヨークシャテリア、パピヨン、チワワ
けっこう、人気の犬種が入っていますね。いくら姿形がかわいいからといっても、もとをたどれば番犬や牧羊犬として開発された犬たちは、もともと「吠える」ために生まれてきたといっても言い過ぎではないようです。

しかし、いまはこうした犬種の多くは、都会でペットとして飼われています。もともと吠える犬を連れてきて家の中で飼い、吠えないようにしたいとは、どう考えてみても人間のエゴのようにも思えてきます。ですがそうはいっても、飼ってしまったからにはかわいい我が子。なんとかして周囲に迷惑がかわらないようにトレーニングできないものか、多くの飼い主さんがそう思ってらっしゃるとおもいます。
じつは、わたしたち飼い主が彼らを吠えるようにしてしまっている現実もあると、伊藤先生は言います。甘やかして育てたため、また散歩に出さず他の犬と接触させなかったために、世間知らずになってしまった。その結果、ちょっとでもこわいことがあると吠えたり、何かしてほしいときに吠えて要求することを覚えてしまったのですね。
それでは次に「なぜ吠えるのか?」を犬の視点から考えてみましょう。
なぜ吠えるのか?