島そのものがアート。香川直島の旅　前編

いよいよ「芸術の秋」の到来ですね！　都内の身近な美術館めぐりもいいけれど、最近は地方発のアートが、新たな旅の目的として注目を浴びています。アート観賞って、人それぞれにペースが違うもの。私は常々「ひとりで訪れるのにぴったりの場所」だと思っています。

先日お仕事で、以前から興味のあった香川県の直島にある「ベネッセアートサイト直島」の取材に行ってきました。現地へ行って驚いたのは、ひとり旅の女性をことのほか多く見かけたこと。誰もが地図やガイドブック片手に、真剣な眼差しでアートを観賞し、きままな街歩きを楽しんでいました。

今回は前編、後編の2回にわたって、直島の自然と融合するアートプロジェクト「ベネッセアートサイト直島」、そして私の目に映った「素顔の直島」をご紹介していきたいと思います。

タイムリーなことに、10月から5年ぶりの一大イベント「NAOSHIMA STANDARD 2」も開催されます。この秋、特に注目しておきたいスポットといえるでしょう。

島内での移動は町営バスかレンタサイクルで

町内の主要スポットへ運んでくれる町営バス「すなおくん」

直島へは高松港からフェリーで入るのがベスト。四国汽船フェリーでおよそ1時間ほどで宮浦港に到着します。島内での移動は、港にもバス停のある町営バス「すなおくん」（1回乗車100円）の利用が便利です。体力に自信があるなら「まちの案内所」か「ハナヤ」でレンタサイクルを借りて移動するのもいいでしょう。でも島内はアップダウンが激しいので、音を上げてしまわないように。また歩くところが多いので、歩きやすい靴で回るのがおすすめです。また靴を脱いで観賞するところも多いので、脱ぎやすい靴だとさらにいいでしょう。

ホテルやレストランを併設したミュージアム

今年5月には新たな宿泊棟がオープンした「ベネッセハウス」

まずは直島をアートの島として印象づけた中核施設「ベネッセハウス」へ。宮浦港からバスで約20分で到着します。ベネッセハウスは、建築家・安藤忠雄氏の設計による宿泊施設を併設した現代美術館です。宿泊棟には、海に面した地中海風料理のレストランやスパなどもあり、ホテルに滞在してアートを楽しむこともできます。

草間彌生「南瓜」1994。堤防の先端に置かれた南瓜のオブジェ。瀬戸内海の風景に自然と溶け込んでいます

高台に立つミュージアム棟には、アーティスト達がその展示スペースのために、この島に赴き作り上げた作品も永久展示されています。屋内スペースにとどまらず、施設を飛び出して海岸線や林のなかにも点在しています。まるで昔からそこにあったかのように、直島の自然に溶け込んでいるのが不思議です。

ミュージアムで手渡されたマップを片手に海岸線を散策していると、東ゲート付近の海にせり出すようにぽつんとある、カボチャのオブジェを発見！　近づいてみると、鮮やかな黄色に黒の水玉模様が印象的な、草間彌生氏の作品「南瓜」でした。思っていたよりも小ぶりで、まるで遠くの小島を見つめているように、静かにそこに佇んでいました。

大竹伸郎「シップヤード・ワークス 船尾と穴」1990。すぐ近くにシリーズ作品「シップヤード・ワークス 切断された船首」もあります

そこからさらに歩くこと約8分、岬の突端にいくつもの小さな穴が空いた不思議なオブジェが立っています。これは大竹伸朗氏の作品「シップヤード・ワークス 船尾と穴」。廃船からヒントを得た作品で、船を作る手順で作ったものを分割して塗装したもの。思わずその穴から、遠く広がる海や小島をのぞいてみたくなりました。

ジョージ・リッキー「三枚の正方形」1972-82。三枚の正方形の板が時間差で少しずつ動きます

屋外作品は20点近くあり、海岸線を歩いたり芝生公園の遊歩道を散策しながら、およそ35分ほどで観賞することができます。潮風を体いっぱいに吸い込んで、直島の真っ青な海や自然を身近に感じながらアートが楽しめるなんて、素敵だと思いませんか？


「ベネッセハウス」
・住所：香川県香川郡直島町琴弾地
・地図：Yahoo!地図情報
・TEL：087-892-2030
・開館時間：8:00～21:00（最終入場は20:00）
・定休日：無休
・料金：大人1,000円
・交通：宮浦港から町営バスで約20分、ベネッセハウスバス停下車すぐ

次ページでは、直島に残る古い家屋を利用したアートパフォーマンス「家プロジェクト」、そして「地中美術館」をご紹介します。