TOEIC・英語検定アーカイブ

更新日:2002年06月20日

英語が話せる2つの理由

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「10年間も勉強しているのにちっとも話せないなんて!」と何かと風当たりの強い日本の英語教育。しかし、私に言わせれば、これ程世間一般に広まった誤解はありません。

そのような学ぼうとしている外国語(target languageと言います)と、学習者の母国語との言語学的距離が外国語習得に影響を及ぼす、ということを証明する1つの調査があります。それは、アメリカ国務省の付属機関、Foreign Service Institute(以下 FSI と省略)が1973年に実施した調査のことです。

FSIの調査によると、アメリカ人国務省研修生がフランス語・ドイツ語・スペイン語などの外国語における日常生活に支障のないスピーキング能力を習得するのに約720時間かかったのに対して、日本語・中国語・朝鮮語・アラビア語などの4つの言語で同等の能力を習得するには、約2400 - 2760時間の集中的な特訓が必要であった、と言います。

アメリカ人国務省研修生が
習得するのにかかった時間
フランス語・ドイツ語・
スペイン語
約720時間
日本語・中国語・
朝鮮語・アラビア語
約2400 - 2760時間

FSIの調査は、target languageと母語との距離が遠ければ遠いほど、その外国語の習得が困難になることを示しています。ゆえに、同じ「外国語」として英語を学ぶとしても、日本人はゲルマン語やロマンス語系の語を母語とする話者よりも習得が遅いのは当然なのです。

慶応大学の鈴木孝夫名誉教授の言葉を借りれば、このような「言語の親近性」と、「文化や宗教の同一性」により、「ヨーロッパの平凡なタイピストがいくつもの外国語を操ることが出来たり、欧米各国の首脳や高級官僚たちが集まる国際会議で、互いに通訳なしで話が出来たりもする」のです。

ですから、例えば「ドイツに旅行したら普通の人でもみんな英語が上手かった。日本の英語教育は、ドイツのそれに比べたら質が低いに違いない」とか、「フィリピンのTOEFLスコアは日本のそれよりも高いから、日本の英語教育は、フィリピンから学ぶべきところが多々あるのではないか」という類の批判には、あまり意味がありません。

前者はドイツ語がゲルマン語に属し、日本語と比べるとはるかに英語との共通点が多いことを考慮に入れていませんし、後者はフィリピンがかつてイギリスアメリカ(註)の植民地であり、「英語は共通語でアジア一通用度が高い」ということを考慮に入れていないからです。

(しかし、あるビジネス雑誌に掲載された、「株価低迷は経営者の英語力にあり!?」という記事では、「日本人の英語力はTOEFLテストでは韓国やフィリピンを下回る」という文句を用い、日本の英語力がフィリピンのそれを下回っていることを、驚きをもって伝えています。)

日本人の英語力が国際的に低いからといって、その原因をすべて日本の英語教育のせいにすることは、妥当性を欠いているといえそうです。諸外国の人々が日本人より英語に遥かに堪能なのは、国内における英語の社会的地位だとか、母国語と英語との言語学的距離によるものが大きいからです。


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【連載】「日本人英語が話せない本当の理由」
第1回 TOEFLスコア アジア最下位の衝撃
第2回 英語が話せる2つの理由 
第3回 英語が話せないのは文法のせい? 
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(執筆者:中田 達也)

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