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更新日:2008年01月18日

金熊賞受賞作品「トゥヤーの結婚」

編集部 All About 写真

2007年国際ベルリン映画祭で金熊賞≪グランプリ≫を受賞した「トゥヤーの結婚」は2008年2月より日本でも公開されます。失われつつある遊牧民の生活、強くたくましく生きる女性の姿が美しい作品です。

「トゥヤーの結婚」レビュー



■目を奪われるモンゴルの自然
「トゥヤーの結婚」より、トゥヤー
トゥヤーは、過酷と思える労働も日々淡々と自然にこなしているので、あまり悲壮感がありません。とはいえ、無理は続かないのですが…。

映画のロケは、中国の中で最も降雨量の少ない内モンゴル自治区、アラシャー盟で行われたそうです。荒涼とした広大な砂漠の中、羊の群れを率いてキビキビ働くヒロインの姿には、生命力溢れる美しさを感じます。

大きなスクリーンで見るモンゴルの大自然にも目を奪われるのですが、その中で生活していく厳しさは、我々日本人の想像を超えています。映画の中の物語といえども、そこで描かれている生活は現実のもの。蛇口をひねれば水が出る、ちょっと近所のコンビニで何でも買える…そんな環境の我々が、とてもひよわな存在に思えてきます。
実際に、我々がトゥヤーの生活の中に放り込まれたら数日ともたないでしょう。自分なら1日もつかどうかも怪しいです。

■生命力溢れるトゥヤー、モンゴルで生きるということ
トゥヤーは、美しき肝っ玉母さん、たくましき妻、強き女性…、すべてを包み込むような生命力とか母性の象徴のように感じました。
トゥヤーと、夫バータル
トゥヤーと夫バータルの間からは、おだやかで強い絆を感じます。


トゥヤーの生活、置かれている状況は過酷そのもののような気がするのですが、映画全体のトーンはそう暗いものではなく、不思議なおかしみというか、ユーモアが感じられます。実際、試写会でもしばしば会場からクスクス笑いが聞こえてきましたし、自分も見ていてちょっと笑ってしまったシーンがいくつかありました。

おそらく、登場人物が、みんなそれぞれ「いい人」で、それぞれ一生懸命生きているのが伝わるからではないかと思います。おだやかな自然の中で暮していれば、人間の側の思い通りに生活を進めていけるでしょう。けれども、過酷な自然の中で生きていくならば、人間の側が自然の都合に合わせて、なんとかやっていける形を模索するしかないわけです。その結果、日本人の日常生活の中にいると、「そんなのありえない!」と思えるようなことも、トゥヤーの生活の中では、普通に「アリ」になるのです。

最初は、トゥヤーや、映画の中にある考え方・生活の仕方について頭の中が「???」という状態だったのですが、徐々に「そうだね…それもアリだね…」と納得できるようになってきました。

■失われつつある遊牧民の生活
中国では現在、砂漠化が進んでいて草が減っているため、遊牧民としての生活がどんどんできなくなっているとのことです。映画の中でも、トゥヤーの生活は深刻な水不足に悩まされており、水さえあれば…井戸さえできれば…という想いがひしひしと伝わってきました。モンゴルの遊牧民が使う移動用テント「パオ」も現在は観光用がほとんどで、映画の中のトゥヤーが営んでいた生活様式はどんどん失われているそうです。

この作品を創った王全安監督は、この映画のロケ地付近で生まれ育った人で、自分の故郷の風景が永遠に失われてしまう前に、この映画を撮ることを決意したそうです。
自然の中で生きるということ、自然とともに生きるということ、自然が失われるということ…、生命への畏敬の念が湧いてくる映画でした。

「トゥヤーの結婚」公式サイト(予告動画などが見られます)

(執筆者:望月 愛生)

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