安全性とサービスで世界一と評された時代を
日本のエアラインは思い出せ!
秋本 JALとJASが06年10月に正式合併し、日本はいよいよJALとANAの2大エアラインの時代になりますね。その両雄が覇を競いながら、同時に世界と伍して戦っていかなければならない。日本のエアラインがはたして世界を相手に厳しい競争に勝ち残っていけるのかどうか。秀島さんはどんな展望をお持ちですか?
 |
| 「伝統的なサービスという面では、かつて世界中で日本の右に出る国はなかったですよ」(秀島) |
秀島 まず明るい材料としては、先ほども言ったように、旅客は確実に増えていることですね。右肩上がりで需要は伸びている。そんな業界はほかに見当たりません。また、隣国の中国がものすごい勢いで発展しているのも好材料です。その巨大市場に食い込んでいけば、大きなビジネスに発展する可能性も十分。ただし市場が可能性を秘めていても、その市場をモノにできるかどうかは別問題ですが。
秋本 いまのままでは、世界との競争に勝てない?
秀島 むずかしいところですね。ですが、日本のエアラインが非常に高い潜在能力を持っているのも事実です。飛行機を飛ばすのに重要なことは何か? 最も重要なことの一つが「安全に飛ばす」ということでしょう。日本の航空会社はかつて、世界で一番安全だとずっと言われ続けてきた。過去にやれたことは、これからも必ずできる。私はそう思っています。
秋本 日本のエアラインが成長し巨大化する過程で、何を失ってきたのか。原点に立ち返って、そこをまずきちんと洗い出すことですね。
秀島 そうです。そうして、経営の方針をもう一度しっかり建て直すことが必要です。たとえば「サービス」について考えてみる。伝統的なサービスという面では、過去に日本の右に出る国はなかった。日本のサービスは世界一だと誰もが認めていた。いまでこそ、ジェットブルーなどが「きめ細かなサービス」をうたい文句にしていますがね。
秋本 きめ細かなサービス……。どこかで聞いたようなセリフですね(笑)。
秀島 日本のお家芸ですよ。かつて世界の外れの、ファーイーストの国に、すごいサービスのエアラインがあると評判になった。外国人旅行者の人気も見る見る上昇して……。それがJALだった。機内では着物を着たクルーが接客に当たったりしてね。乗客は何を評価したかというと、言われる前に何でも出てきたんです。寒いなと思うと、クルーが気がついて毛布を持ってきてくれる。そんな行き届いたサービスは世界中どこにもなかったわけです。
 |
| 日本のエアラインは安全面でも世界一と評価されていたが……。 |
秋本 日本が大切に守ってきたそうした伝統的なサービスが、いつの日か置き去りにされてきた。置き去りにして、何をやってきたのでしょうね(笑)。
秀島 いろいろです。いろいろ、余計なことに労を費やしてきた。機内でいろんなものを販売しますよ、こんな食事が楽しめますよ。テレビも見られるし、電話もかけられますよ──と。でも、そういうことは、じつはどこでもやっている。なのに日本の伝統的なサービスを捨てて、どこでもやっていることに追随してきた。
秋本 その間、アジアなどでは独自のコンセプトによる独自のサービスを追求し、個性を打ち出してきた。アジアのエアラインの人気が急上昇している理由の一つが、そうした独自スタイルの追求にあるわけですね。
≫≫≫ 次ページのテーマは「シンガポール航空のA380就航が業界に及ぼす衝撃」