文章:秋本 俊二(All About「世界のエアライン」旧ガイド)
「9.11同時テロ」に端を発した旅客減や原油価格の高騰で、エアライン業界を取り巻く環境はより厳しさを増しています。そうした中で、各社はどう生き残ろうとしているのか。エアライン評論の第一人者・秀島一生さんをゲストに迎えての約2時間。航空界の現状と未来への展望、これからのエアライン選びのポイントなどをテーマに、幅広い角度から意見を交換しました。
(撮影協力 / Photographer 木村 基)
── Page Index ──【P.1】
9.11同時テロと原油高だけが航空不況の原因か【P.2】
欧米3社の成功事例が示す生き残りの鍵とは?【P.3】
対米戦略で手を結ぶ欧州と、独自路線を貫くアジア【P.4】
JALとANA──国内2大エアラインの現状と今後【P.5】
“世界一安全”と言われた過去を日本は思い出せ!【P.6】
シンガポール航空のA380就航が業界に及ぼす衝撃【P.7】
コンチネンタル航空の新提案が問いかけること
9.11同時テロと原油高だけでは
現在の航空不況は語れない
秋本 一言で「航空不況」といっても、国によって、地域によって、エアライン各社の置かれた状況はだいぶ違うようですね。
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| 「航空業界全体として見ると、旅客需要はむしろ増えている」(秀島) |
秀島 アメリカ、ヨーロッパ、アジアの3つを軸とする国際的な航空情勢はいま、かなり複雑化しています。そこにボーイングとエアバスの次世代機をめぐる熾烈なバトルが絡まり、一つの角度からだけではなかなかとらえられなくなってきていますね。
秋本 その複雑な糸を解きほぐすために、まずは航空先進国であるアメリカの動きから見ていきましょうか。かつてあのパンナムが姿を消したときは、まさに信じられない思いでした。
秀島 そうですね。その後も、2001年にTWA(トランスワールド航空)がアメリカン航空に吸収されて消滅し、世界第2位のユナイテッド航空が経営破綻し……。ことし(05年)9月にはデルタ航空とノースウエスト航空が破産法を申請している。
秋本 現在の不況は9.11同時テロと原油高が原因だと各社口を揃えていますが、秀島さんもそう思われますか?
秀島 テロや原油高の影響はたしかに深刻でしょう。しかし一方で、本当にそれだけかという思いもある。だって航空業界全体として見ると、世界を飛び回る人の数は決して減ってはいないのですから。旅客需要はむしろ増えています。
秋本 とすると、経営不振の原因は他にもあると。
秀島 着実にシェアを伸ばしているエアラインも現実に存在するわけで、そう考えると、問題はビジネス(経営)のあり方なのではないかという気がどうしてもしてくる。余計なことに事業を広げたり、バブリーなことに手を染めたり……。日本では「本業を忘れるな」というのが、バブルの教訓だったわけでしょう。
秋本 JALのグアム線運休、スカイマークの鹿児島線からの撤収といった動きが日本では見られますね。採算に合う路線にビジネスを集中させる──これは「本業回帰」という意味で仕方のないことなのでしょうか。
秀島 採算か不採算かという物差しで存続・撤退を決めるのは、経営者として当然の判断だとは思います。赤字路線をいつまでも長く持ち続けていては、会社が持ちませんから。ところがアメリカの老舗エアラインの場合は、そこがちょっと違うんです。
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| 航空先進国アメリカのエアラインは利用者たちの期待に応えよと頑張っているが……。 |
秋本 採算・不採算だけでは路線を決められない?
秀島 デルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空、ノースウエスト航空といった大手は国際線の長大路線をたくさん持っていて、たとえ採算が合わなくても飛ばし続けるという姿勢を貫いている。自分たちは歴史ある航空先進国のキャリアなんだというメンツがかかっているんですね。しかし、これがじつは大きなプレッシャーとなって重くのしかかっている。所有する機材も半端な数ではないし、その中にはB747をはじめキャパシティの大きな飛行機もたくさん含まれ、コストがかかってもずっとそれを維持し続けているわけです。
秋本 同時に運航に必要な従業員も数多く抱えなければならない……。なるほど、経営が苦しくなるのは目に見えていますね。
秀島 そういった大手を尻目に、一方では採算がとれる国内路線をビジネスの中心に据え、着々と業績を伸ばしている新興エアラインが存在する。ジェットブルーなどはその典型ですね。
秋本 あの「奇跡の着陸
※」で話題になった──。そういえば秀島さんは最近、ジェットブルーについての本格的な研究を始めたそうですが。
※奇跡の着陸 = 05年9月にジェットブルーのA320型機が飛行中に前輪が収納不能の状態に陥り、白煙を巻き上げながらもパイロットの巧みな操作でロサンゼルス国際空港に後輪だけで無事着陸。そのシーンは世界中のテレビニュースで報じられた。 ≫≫≫ 次ページのテーマは「欧米3社の成功事例が示す生き残りの鍵とは?」