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ある伝統ある学校のエピソード 私立伝統校の凄さ

ある講演会に参加して知った、伝統ある私学の底力を感じることのできるエピソードを御紹介します。

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

ある私立男子校事務長M先生の講演会で伺った話をご紹介します。昨年末にメルマガのコラムにも書いていますが、若干加筆しています。M先生は歴史家としてあちこちに寄稿している人ですが音楽にも造詣が深く、ムラビンスキー全盛期の日本での演奏録音テープを所有されていたそうで、CDとしてリリースされるとのことでした。

この講演会は息子が通っている塾主催です。この塾は東京と湘南2カ所に教室を持つだけの小規模な塾ながら、私立中学を訪問する独自の学校説明会を開いたり、私学関係者を招いての文化講演会を催したりしています。

演題は入試や学校紹介ではなく、学校とつながりの深い明治の偉人についての講演です。学校改築にあたり倉庫を整理したところ、歴史的に貴重な資料が発見されたので、その資料についての解説でした。

歴史のある学校なので、その話もとても興味深く楽しいものでした。学問的にも貴重な資料で、新聞にも紹介されたそうです。

講演の趣旨はそのようなものでしたが、話の折々にこの学校に関するエピソードも沢山出てきました。その中で印象に残ったエピソードをご紹介します。

K学園は創立が明治に遡ることができる伝統のあるトップクラスの進学校です。勉強勉強でがんじがらめのような印象を受ける学校です。しかし次のようなエピソードが披露されました。

<エピソード1>
割と最近のことです。春の新学期に入ってすぐに事務室へ一人の新入生がやってきました。
新入生 「Mさんて、いますか?」
M氏_ 「私がMだけど。」
新入生 「オレは作曲をずっとやってるんだけど、この学校では音楽の先生よりも音楽に詳しいMって人がいるから、その人と友だちになった方がいいよって聞いたもんだから。」
M氏_ 「それなら見てあげるから持って来てごらん。」
ということで書き溜めた作品をM氏のところへ持っていったそうです。その後もずっと彼の相談にのり、大学進学時には芸大の作曲科(定員3名)に見事合格して入学したそうです。

<エピソード2>
 K学園では事務長室は校門に近く、事務長席から正門がよく見えるように作られているそうです。来訪者にいち早く気づくことができ安全管理上好ましいためとのこと。

 ある日のこと、下校時間に校門の傍で木刀を持った他校の男子生徒を見つけました。校門から中に入りそうになったり引き返したり行動が不審なので様子を見に行きました。

すると校門のそばにはさらに助っ人と思われる数人の男子学生がいたそうです。彼に話を聞いたところ、呼び出しを受けたという。呼び出したのがK学園の生徒で、しかも呼び出された方が木刀を持っているとは穏やかでないので、当人以外はそこのベンチで待機させ、彼を応接室に通しました。

呼び出したという当事者を教室から連れてくると彼は身に覚えがないと言います。
よく話を聞くと携帯電話のメールで呼び出されたと判りました。それを聞いてその生徒は「携帯を1週間前から友達に貸していた。」といいます。それで携帯を持っている生徒を連れてくると、いきなり土下座して謝り始めたそうです。

ふざけて呼び出しメールを送ったけれど、まさか本当に来るとは思わなかったとのこと。事情を聞いて呼び出された他校生も毒気を抜かれて許したそうです。そして「K学園は俺の話をちゃんと話を聞いてくれていい学校だな。」と感心して帰ったそうです。

M氏曰く、「こういった問題は当事者同士から話を聞くのが一番解決の早道です。大人だけで話をつけようとすると、恨みが残ってリンチ事件などに発展することがある」と話していました。

普通なら校門のところで追い返すところを、他校の生徒でありながらその言い分をきちんと聞き、当事者双方から事情を聞いて一方的でなく事態を収拾するというその対応は見事です。

他にも「経営上の合理化を進め、借り入れせずに校舎改築ができるようにしているし、生徒の親にできるだけ負担をかけないようにしている。さらに先生の評価は厳しくしているが、優れた先生には高い報酬で報いる。だから先生の質は高い。」というような話もされました。

講演会を聞いて、M氏の教養の高さと学校運営の手腕に驚きました。そのM氏は校長ではなく事務長という役職なのです。教職をしていなくても、このような生徒の立場に立った対応ができる人物が事務長を務める学校の伝統の凄さというものを感じます。そしてそれは一朝一夕には出来るものではないのです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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