人間関係

「ほんっとに、かわいくない女」と義母に言われて…今なお女性に「かわいらしさ」は重要か?

「私は昔から、かわいいと言われるとムカッとくるタイプだったんです」という40歳の女性は、結婚以来、ことあるごとに義母とぶつかってしまうという。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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女は愛嬌、男は度胸と昔からいわれている。人としての「愛嬌」を問うなら性別は関係ない。愛嬌がある人は確かに誰からも愛されやすい。ところが女の子だけに「かわいさ」を求める人たちが一定数存在する。女はかわいくないといけないのか。そしてそのかわいさの基準とは?
 

かわいくない女

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「私は昔から、かわいいと言われるとムカッとくるタイプだったんです」

サトコさん(40歳)は苦笑しながらそう言った。ごく普通のサラリーマン家庭に育ったが、夫(サトコさんの父)に対して不満をためこんでいた母からは、「結婚なんてしなくていい。男の言うなりになってはダメ。女だって手に職をつけたほうがいい」と言われて育った。母には母の鬱屈したものがあるのだろうと考えられるようになったのは、サトコさんが大人になってからだ。

「母の教育のせいなのか、もともとの性格なのか、私は子どものころから『かわいくない子』でした。先生に何か言われると理屈で返すような。子どもだから屁理屈なんだけど、自分が納得できないことには同意しなかった」

遠足にもっていくおやつが300円以内と言われたときは、300円の根拠は何かと教師に尋ねた。女の子をからかう男子には、「どうしてそういうことを言ったのか」と理詰めで迫った。

「中学生のときには問い詰めすぎて教師を泣かせてしまったこともあります」

高校生になると、男子も女子も異性を意識するようになる。だが、どちらに対してもサトコさんの態度は変わらなかった。だから一部女子からは信頼感を得ていたが、一部男子からは「かわいくねえな」と言われ続けてきたという。

「そんな私でも大学生になってからは恋愛しました。でも相手を好きであることと、相手の言いなりになることは違う。好かれたいからといって、理不尽な要求を受け入れることはできませんでした。大学からはひとり暮らしだったので、つきあっている彼が夜中に『会いたいんだ。これから行ってもいい?』と言うことがあったんです。暇なときはいいけど、忙しいときは『レポートを書いているからダメ』と断る。それが当然だと思っていたんですが、結局、彼には『かわいくない』とフラれました」

男の言うなりにはならない、男のわがままを安易に受け入れない。それが「かわいくない」根拠だとしたら、そんな男とはつきあわないほうがいいと彼女は思っていた。
 

結婚はしたけれど

そんな彼女だが、20代後半で知り合った同い年の男性と1年半つきあい、30歳で結婚した。結婚したのは妊娠がきっかけ。

「よほどのことがない限り、結婚したいと思うことはないだろうなと感じていたんです。ところが避妊していたにもかかわらず妊娠。彼に告げたら『やったあ』と大喜びして、婚姻届をつきつけられました」

子どものことを考え、婚姻届にサインした。通常の結婚式などはおこなわず、友人たちとのパーティーだけ開いた。親への紹介はそのあとだった。

「スケジュール上、そうなってしまったんですが、結婚は本来、親には関係のない話だと私が考えていたのも事実です。ただ、むやみに敵を作りたいわけでもないし、嫌われたいわけでもないので、届を出したあとそれぞれの実家に顔を出しました」

夫の実家では親戚まで来てしまい、「まるでさらし者」と彼女はムッとしていた。そこへもってきて、義母が『息子にこんなきれいなお嫁さんが来てくれるなんて』と言ったので、彼女は内心、激怒。「嫁に来たつもりはありません」と言ってしまう。

「その後、義母が『ほんっとにかわいくない女』と私のことを言っていたそうです。でも、『かわいい』は、旧来の男女役割を受け入れる女性のことですか、と聞きたいくらい。夫は私の性格をわかっていますが、それでも『もうちょっと素直になればかわいいのに』と言っていました。人に逆らわないのがかわいいということ? なんだかさっぱりわからなくなったんです」

他人との関係において、「感じがいいこと」「機嫌良く接すること」をサトコさんは自分に課しているが、それは相手の言いなりになることでも、何もかも受け入れることでもない。対等な関係を作りたいだけなのだ。男が「そそられる」女になる必要などないと思っているだけだ。

「義母も孫には会いたいだろうと思って、年に1、2回は夫の実家に行くんです。今、10歳と7歳の女の子がいますが、先日、義母が『女の子はね、人の言うことをにこにこしながら聞いて、なんでもやってあげなくちゃダメよ』『男の人の言うことに逆らっちゃダメ』と言い聞かせていたんです。思わずやめてくださいと言ってしまいました」

義母は「あなたが娘たちに、女の子としての大事なことを言わないから」とぶつぶつ言っていたが、「男女は関係ないです」と彼女は言い切った。

「最近は夫まで、長女に向かって『そういうときは言い返さないで、はいって言いなさい。かわいくないよ』と言っているのを聞いて怒ったばかり。かわいいことを重視しないでほしいんですよね。もし言うなら『かわいい』の基準をきちんと提示してから言ってほしい(笑)。女の子はかわいくあるべき、なんて誰が決めたんでしょう」

サトコさんは内心、かなり憤っている。今の時代、確かに何でも「かわいい」と言いがちだ。それが動物や物に向かっているなら理解しやすい。「かわいい」が人に向いたとき、そう言った人は何を求めているのだろう。

「女も男もかわいくなくていい。人への悪口でない限り、自分の思ったこと、意見をはっきり言いなさいと私は娘たちによく言っています。ちゃんとそういう大人の女性になってくれればいいんですが……」

男女平等の教育に走ったあまり、娘に「平等でなくてもいいの。私、かわいくなりたい」と言われてショックを受けた夫婦がいるという話を聞いたことがある。かわいいと人に庇護される。それが心地いいと思う女性もいるのかもしれないが、庇護されるということは下に見られているも同然ともいえる。

むずかしいけど、その人はその人でしかない、男だから女だからとくくってはいけないと思うとサトコさんはきっぱりと言った。
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