亀山早苗の恋愛コラム

「男としてダメ!」と言われて…浮気も借金も暴力もない“普通の夫”に離婚を迫った妻の言い分

男性は離婚したとき、その理由をあまり語りたがらない。女性側はよく語るので、なんとなく「離婚するのは男が悪い」イメージを世間は勝手に持っていることが多そうだ。浮気や借金、暴力もないのに離婚した男性が、その理由を話してくれた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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男性は離婚したとき、その理由をあまり語りたがらない。女性側はよく語るので、なんとなく「離婚するのは男が悪い」イメージを世間は勝手に持っていることが多そうだ。浮気や借金、暴力もないのに離婚した男性が、その理由を話してくれた。
 

離婚は青天の霹靂だった

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「ごく普通の家庭だったと思います。妻が離婚したいほど不満をためているとは思わなかったから、突然、離婚届をつきつけられたときは本当に驚きました。そういう鈍いところが嫌だったのと罵倒されましたが」

穏やかな笑みを浮かべながらそう言うのは、コウイチさん(40歳)だ。34歳のとき3歳年下の女性と社内結婚、ひとり娘をもうけたが38歳で離婚した。

「妻は昼間、短時間のパート仕事をしていました。共働きなんだからもっと家事をやってほしいと言われていましたが、コロナ禍の前は僕は本当に忙しかった。『だらだら残業したり飲みに行ったりして忙しいだけでしょ』とよく妻は言っていましたが、そういう感じではなかったんです。

企業に属してはいましたが、仕事は個人でやるような職種だったので、新卒で入社したころから就業時間なんてあってないようなものでした。もちろん、好きだから続けてこられたんですが。妻も同じ会社だったからわかっているはずなのに、それでも『無駄な時間が多いのよ、あの会社の仕事は』と言っていました。その無駄な時間さえ、ものを作り出す時間なんですが、妻は事務職だったからわかってもらえなかった」

妻は結婚当初、たびたび「こんなはずじゃなかった」とため息をついた。どんなはずだったのかと尋ねて返ってきた答えに、彼は驚いたという。

「僕がほとんど定時で帰って、家事を一緒にこなして、一緒に夕飯を作って食べて団らんの時間を過ごす。週に一度くらいはふたりで外食、週末には朝までふたりで映画を観たりする。年に2回くらいは国内旅行をしたかった、と。そんな理想の生活をしている人がどこにいるんでしょう。

こっちは午前中から終電間際まで走り回り、週末に仕事をすることも多い。たまの休みには寝ていたいと思っていました。30代、いちばん仕事で動けるときに家庭に縛られたくない気持ちもありました」

それでも週末には一緒に買い物に行くこともよくあったし、時間がとれるときは妻とランチに出かけたりもした。彼は「がんばった」と思っていたのだ。
 

不満をためこんでいた妻

子どもが生まれてから数カ月は、妻の母が一緒に住んでフォローとケアをしてくれた。もちろんコウイチさんもできる限り手伝った。

「その後、妻はこんなはずじゃなかったという代わりに、ときおり僕をじっと見るんです。視線を感じて妻を見ると目をそらす。そういうことがよくありました。『なに?』と聞くと『ううん、いい』と。それで娘の2歳の誕生日にいきなり離婚届ですからね。わけがわからなかった」

とにかくもう一緒にはやっていけないと妻は頑なだった。話し合いたいと言ったが、離婚届をつきつけて数日後には娘を連れて実家に帰ってしまった。

「人の気配のない家に帰るのは寂しかったけど、同時に僕は解放されたような気持ちにもなりました。娘に会えないのは耐えがたかった。それでも、ひどいヤツだと思われるかもしれませんが、ホッとしたところもあったんです」

なぜなら、妻はほとんどコウイチさんの話を聞いてくれなかったから。仕事で忙殺されるのはまだいい、だが当時の上司はパワハラがひどく、朝令暮改の人間。朝言ったことを懸命にやっていると、夕方には「こんなこと頼んでいない。方向性が違う」と怒られた。家に帰っても気持ちを切り替えることができず、うっかり愚痴ったことがあった。すると妻はプイと横を向いて言ったのだ。

「男の愚痴は聞くに堪えないわって。あのときはせつなかったですね。男だから愚痴ってはいけない、弱音を吐いてはいけないというのは妻の理想。でもこっちだって人間です。妻が近所のママ友の愚痴を言ったときは僕、きちんと聞きましたよ。うまく励ませなかったかもしれないけど、朝まで聞いたこともある。なのに夫の愚痴は聞きたくない、男としてダメでしょと烙印を押される。これは差別だと言いたくなりましたが、そんなことを言っても始まらない。だから黙るようになった」

数カ月後、離婚届にサインして送り返した。コウイチさんに特別非があるわけではないので慰謝料などはナシ、養育費を送る代わりに娘とはいつでも会えると言質をとった。

「とはいっても妻の実家はそこそこ遠いので、なかなか会えないんですけど。それでも月1度は必ず会いに行っています」

待ち合わせ場所には、たいてい妻の母が娘と一緒に来る。妻はコウイチさんへの気持ちを完全にこじらせてしまったようだ。

「義母が謝ってくれるんですよ。『あの子のわがままで申し訳ない』といつも言われる。義母さんにも、離婚理由はよくわからないようです。人の気持ちは変わることがあるから、急に顔も見たくないほど嫌になってしまったんでしょう、僕がそうさせたんだと思いますと言うしかありません」

コウイチさんは今も、妻と娘と一緒に暮らしたマンションで生活している。コロナ禍で仕事の内容は激変したし、在宅ワークも増えた。ひとりは寂しい。だが、ひとりだと愚痴を吐く相手がいないから吐かずにすむ。妻がいたから甘えて愚痴ったのかもしれないと思うこともあるそうだ。

「ひとりだったら自分で処理するしかない感情ですからね。すべて飲み込むしかない。ただ、相手がいたらお互いに少しは甘えてもいいんじゃないか……。それを僕には許さなかった妻が間違っているとは言わないけど、僕自身をきちんと見てはくれなかったんだろうと思うんです」

夫の愚痴は許せない。そんな言葉を実際、妻たちから聞いたことはある。男だから、女だからと考えると、お互いに不自由になるばかりなのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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