亀山早苗の恋愛コラム

コロナ禍、久々に再会した彼に抱いてしまった「違和感」

新型コロナウイルスの影響で、なかなか会えないカップルがいる。そんなふたりがようやく会えたとき、彼女の心の中に芽生えた「今までとは違う感情」とは。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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久々に会えた彼だけど……

危機感皆無

新型コロナウイルスの影響で、なかなか会えないカップルがいる。そんなふたりがようやく会えたとき、彼女の心の中に芽生えた「今までとは違う感情」とは。

 

つきあって4年たつけれど

昨年秋に彼が転勤となり、遠距離恋愛が続いていたアキナさん(33歳)。同い年の彼とはつきあって4年を超え、そろそろ結婚も考えていた。

「お互いにあまり結婚したいと思っていなかったせいもあって、のんびりつきあっていたんですが、子どもはほしいよねということになり、彼がまた東京勤務になったときは結婚しようと決めたんです」

ところがこのコロナ禍で、彼の会社は規模を縮小せざるを得なくなった。それにともない、1年の転勤の予定が半年で東京本社に戻ることに。

「今年に入って会ったのは2月の半ばくらいだったか、彼が出張で東京に来たときでした。それからは彼も帰ってこられない、私は在宅勤務で出かけられないという状態が続き、そしてゴールデンウィーク直前に彼が戻ってきたんです」

彼はひとまず会社の借り上げマンションへ入居。引っ越しを手伝ってほしいと言われたものの、彼女は家でしなければいけない仕事がたまっているからと断った。自粛、ステイホームと言われている中、会いたい気持ちより感染の怖さが勝ってしまったという。

「彼が転勤で住んでいた地域は、感染者が少ないところだったんです。東京のことも数字的には知っているけど実感がなかったんでしょうね。連休初日に東京に戻ったら、あまりに人がいないのでびっくりしたと言っていました。だから東京はそういう状態だよ、と」

それでも彼は連日、「遊びにおいでよ。会いたいよ」と連絡をしてきたそうだ。彼女自身も彼に会いたい気持ちはあったので、4月最後の週末に、彼の新居近くで待ち合わせた。

 

違和感が拭えず

待ち合わせ場所に来た彼は、マスクもしていなかった。驚く彼女に、「だって買えないんだもん」と彼は平然と言った。

「たまたま新品が1枚バッグに入っていたのであげました。彼は『マスクなんてする必要あるの?』と大声で言い出して。彼の家の近くで営業している喫茶店に入ろうとしましたが、すごく狭くて混雑していたんですよ。それで私が入るのをやめようと言ったら、彼が『いったい、なんなんだよ。久しぶりに会ったのにうれしそうな顔もしないで。楽しくないわけ?』と怒り出した。いや、事態が事態だからと言ったんですが、彼は実感がないみたいでした」

地域によって、新型コロナウイルスへの温度差は確かにあるだろう。感染者がそれほど多くないところにいれば、危機感が薄くてもしかたがないのかもしれない。

ただ、都内の実態を見れば「これは日常ではない」とわかるはずだというのがアキナさんの考え。彼は想像力がなさすぎる、と。

「ケーキを食べながらお茶して、彼はその間中、自分が転勤していたときの話をやたらとしていましたね。自分はがんばったのに会社の業績が悪化したのはウイルスのせいではなくて、上層部が無能だからとかなんとか……。聞いていて楽しい話ではなかった」

その後、急に「アキナのほうはどうなの」と尋ねられ、彼女は在宅で仕事をしている話をした。すると彼は言ったのだ。

「遊んでるみたいでいいね。オレはカレンダー通りだよ」

彼は想像力がなさすぎる。その感が強くなった。在宅勤務にはメリットもあるがデメリットもある。それを痛感しているときの彼の無神経なひと言に彼女はげんなりしたそうだ。

喫茶店を出ると、彼は当然のように自分の新居へと歩き出した。アキナさんは、「今日は帰るわ」と言った。

「彼、あわてて近づいてきて、『久しぶりなんだよ。したいだろ?』って。さすがにそこで黙ってはいられませんでした。濃厚接触したくない。だいたいあなたには想像力がなさ過ぎると言って帰ってきちゃったんです」

帰宅してから、こんな非常事態だから自分は神経質になりすぎているのだろうか。温度差のある彼の気持ちをわかってあげなかったのは冷たかっただろうかと反省したという。

それから数日、彼からは連絡がなかった。彼女も連絡しなかった。

「連休後半になって、彼からメッセージが来ました。『うちも在宅メインになったけど、オレの部署は週に2回は出社だって。これからも忙しくなりそう』と。先日の話はまったく書いてない。私がどんな気持ちでいるのかも考えてないんでしょうね。反省したことがばかみたいに思えました」

それでもアキナさんは、彼は今、久々に様変わりした東京に戻ってきて平常心ではいられないだけかもしれないと心の中で彼を擁護しようとした。それでも違和感は抜けない。

「4年つきあって、彼のことはだいたいわかったつもりでいるけど、ほとんど何もわかってなかったんだということがわかりました(笑)。さて、これからどうしようか。今はそんな気分です」

急いてはことをし損じるともいう。状況が収束に向かってからじっくり決めても遅くはないのかもしれない。
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