疲労回復法

お風呂上がりの保湿は○分以内!肌の乾燥予防リミット

【温泉療法専門医が解説】お風呂で肌が乾燥することをご存じですか? 最新の研究結果から明らかになったお風呂上がりの肌乾燥の実態と、お風呂上がりに保湿ケアをすべき制限時間、保湿リミット、上手な保湿の方法を解説します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

お風呂で肌が乾燥する!? 入浴による乾燥の原因・メカニズム

お風呂保湿

美肌には正しいお風呂保湿が大切

スキンケアのためにも欠かせないお風呂。肌を洗浄し清潔にするだけでなく、身体を温めることで血行が促進され、肌の隅々に栄養が行き渡り、肌の代謝も良くなります。

このように美肌を保つメリットも多い入浴ですが、実は弱点があります。お風呂上がりに浴室を出てしばらくすると、肌のカサカサを自覚される方も多いでしょう。実際にお湯から上がって浴室から出ると急激なスピードで肌乾燥が始まり、やがて入浴前よりも肌水分量が低くなる過乾燥の状態に陥ることは以前から指摘されていました。お風呂から出たら早く保湿をすべきだと言われるのはこのためです。
 

入浴後の肌乾燥の実態が明らかに……研究でわかった保湿リミット

今回、私たちは複数の被験者に実際に浴槽に浸かってもらい、お風呂上がりの肌の水分量を時間経過で計測。急激な過乾燥が出浴後何分で訪れるのか、肌への悪影響を防ぐためには保湿ケアを出浴後何分までにするべきなのかを検証しました。なお、お風呂上がり後(出浴後)に保湿ケアすべき制限時間を、ここでは「保湿リミット」と呼びます。

今回は入浴可能な健康に問題のない、20~40代の女性14名を対象に、40℃10分間の入浴前後の皮膚水分量の変化を計測しました。その結果、出浴10分後までは入浴前より皮膚水分量が多く、差(統計学的有意差)が認められました。以降の計測では、入浴前と同程度まで低下し、さらに出浴30分後、出浴60分後では皮膚水分量が低下し、入浴前と比較して有意に低い数値となっています。

皮膚水分量が保たれているうちに保湿ケアをすべきという皮膚科学の観点から、皮膚水分量が有意差を持って入浴前より高い「出浴10分後」が保湿すべき限界時間であり、「保湿リミットは10分」であることがわかりました。
 
figure1

「保湿リミット」実験結果 10分以内の保湿が必要 (早坂,2017)

 

お風呂上がりの保湿のコツ・効果的な肌乾燥対策法

次に、入浴中の保湿による、出浴後の皮膚乾燥予防効果を検証するために、入浴中に保湿化粧品(泡パック状製品)を肌に塗布したかどうかで皮膚水分量を比較しました。その結果、保湿化粧品の塗布群は、何も塗らない群(無塗布群)より出浴後の皮膚水分量が有意に高い結果となりました。特に出浴1分後から2倍近い水分量を保ち、出浴60分後まで入浴前の肌水分量をキープしていました。

今回の研究では2017年9月に発売を開始された、入浴中に塗布し、出浴前に浴室で洗い流して使うタイプの保湿化粧品を使用しました。加水分解シルク・セリシン・Wヒアルロン酸などの保湿成分を配合していたことから、これにより保湿性が高められたと考えられます。

以上の結果から、お風呂での保湿ケア(インバスケア)がお風呂上がりの過乾燥予防に効果的であり、「お風呂保湿」をすることで「保湿リミット」が延びることがわかりました。
 
figure2

お風呂保湿効果検証結果 (早坂,2017)

 

保湿のタイムリミットは出浴後10分以内! お風呂保湿の重要性

入浴は重要な生活習慣で、血流改善や洗浄作用、美肌効果など人体にとって利点があります。一方で、入浴による皮脂の損失、角層細胞間脂質NMF(天然保湿因子)の流出によって起こる皮膚乾燥は大きな問題で、出浴後早期に保湿する必要性が指摘されていました。

入浴すると一時的に水分が浸透して角層が膨らむので潤った状態になりますが、お湯で皮脂やNMF(天然保湿因子)、角層細胞間脂質といった、本来肌に備わっている保湿物質が流出してしまい、肌の水分を保てなくなり、肌は過乾燥状態になるのです。

今回の実験結果により、
 
  1. 保湿すべきタイムリミットは出浴後10分以内であること
  2. 「お風呂保湿」をすることの有効性

を確認できました。

「お風呂保湿」(インバスケア)により、保湿リミットは延びる可能性があります。

今回入浴の唯一とも言える弱点「お風呂上がりの過乾燥」を、お風呂の中での保湿ケアによって克服できるという研究成果を情報発信することで、特にお風呂離れが進む若い人にもお風呂の美容効果を知ってもらいお風呂に親しんで欲しいと考えております。

(本研究結果は日本健康開発雑誌39号(2017年9月12日早期公開)、「お風呂と肌乾燥」に関する最新研究発表会(2017年9月13日、東京)にて発表しました)
 
発表会

研究発表会にて発表しました

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