ハウスメーカー・工務店/ハウスメーカー・工務店の特徴

暮らしを便利、豊かにする「収納」の工夫を実例で紹介

年末年始は大掃除で大わらわという方がいらっしゃると思います。しかし、収納に工夫をし、日頃から整理整頓を心掛けていれば、大掃除での苦労も減るはずです。そこで、今年最後の記事として「収納」にクローズアップしてみました。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

仕事柄、私は住宅展示場のモデルハウスや分譲住宅、さらには完成した個人住宅など様々な住まいを取材してきました。その中で数万点にのぼる写真を撮影し保存しています。その中には収納も含まれます。そこで今回の記事では、その写真の中から収納に関する「これは」というものをピックアップし、その良さを解説します。収納は住まいや暮らしの重要なテーマであり、それに関わる工夫を施すことで、家の中がキレイに片付きやすくなることだけでなく、家事時間の短縮や子どもの健全な成長などといった様々な効果が期待できますので、改めて取り上げるものです。

家事動線に合わせた収納

【写真1】をご覧ください。手前には脱衣所を含む浴室スペースがあり、奥にはキッチンスペースがあります。その真ん中には洗濯のためのスペースがあるわけですが、そこには下着などを入れる収納が用意されています。

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【写真1】


女性が座ってますが、ここには洗濯物をたたんだり、アイロンをかけたりできる机、その背後には室内干しをできるスペースもあります。要するに、ここでは洗濯に関する作業が全て1ヵ所で行えるわけです。

このようなゾーニングにすると、日々の家事を行うための動線(家事動線)を短くでき、結果的に家事にかかる時間を短縮できます。このようなゾーニングは子育て世帯や共働き世帯の方々にとっては、大変暮らしやすい間取りとなるはずです。

【写真2】では手前に主寝室、奥に子ども部屋があり、その間にウォークインクローゼットが設けられています。このウォークインクローゼットは主寝室と子ども部屋の共有のスペースですから、ここに家族の衣装や持ち物を収納することで、収納に関わる時間を減らすことができます。

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【写真2】


最初にまず、これらの写真を紹介したのは、収納は家族が家で行う行動に寄り添うかたち、つまり家事動線上に配置すると、大変使い勝手が良くなるということを知っていただきたいためです。言葉を換えると、収納は量だけの問題ではないということです。

デッドスペースを活かした収納

とはいえ、限りのある住空間の中で収納量を確保したいもの。ここで紹介するのはデッドスペースになりそうな場所に収納を確保した事例です。【写真3】は、階段下を活用したものです。階段の形状に合わせて設けられ、キッチンの近くにあることから飲み物のボトルなども入れられるようになっています。

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【写真3】


これも住まい手の家事動線に合わせた収納の配置の事例といえます。加えて、デザイン的にもユニークだといえるのではないでしょうか。デザイン的に優れている事例として【写真4】も紹介します。これは、掃き出し窓の部分を室内側に張り出して、ベンチにしていますが、収納として活用しているものです。

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【写真4】


このベンチ型収納がある場所はリビングなのですが、リビングは家族全員が集う場所ですからどうしても散らかりやすくなります。この収納の場合、モノをすぐに片付けられますし、家族などの居場所を作ることにもなりますので一石二鳥といえます。

また、リビング側に棚を設けたキッチン(【写真5】)があると、これもリビングで使うモノを手軽に片付けやすいため便利です。最近のキッチンはこのように食事の用意に必要な道具や皿などを収納するだけでなく、リビングを構成するインテリアの要素にも考慮した商品が発売されています。

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【写真5】


ちなみに、これはシステムキッチンに棚の造作を施したもの。収納、特にリビング回りをスッキリさせたいという方は、このようなキッチンのスタイルをハウスメーカーの設計担当者に希望されるといいでしょう。

子どもが整理整頓の習慣を身につけやすい収納

【写真6】は、リビングに隣接するタタミスペースに収納を設けた事例。タタミスペースは幼い子どもの遊び場になりますが、このような設えにしておくと、子どもに整理整頓の習慣を身につけてもらいやすくなる効果が期待されます。

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【写真6】


また、このケースではタタミスペースとリビングの間に引き戸があり、二つのスペースを簡単に間仕切ることができるようになっています。不意の来客時などにリビングの散らかりものをタタミスペースに隠すことができますから、リビングをキレイに見せやすくなるはずです。

子どもがある程度、成長している場合は【写真7】のようなロッカーのような収納も良いと思われます。これは家族一人ひとりが普段使うもの、例えば子どもの外出着やランドセルなどがしまえる収納です。

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【写真7】


もちろん、ご主人用のロッカーもあります。このように家族それぞれが自分でモノを整理整頓、管理するようにしておけば、それだけ家事の負担が軽減され、主婦の方にとっては暮らしやすい住まいになるわけです。

空間の有効活用を兼ねた収納

収納を工夫することで、この他にも様々な副次的効果が生まれる場合もあります。一つは限られた空間の有効活用です。【写真8】は平屋建て住宅の中の様子ですが、リビングに隣接して1.4mほどの高さの大空間の収納が設けられています。

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【写真8】


リビングの横にこのような収納があると片付きやすくなりますし、横にスライドしてモノを取り出せるため使い勝手が良いはずです。しかし、ここで注目したいのがその上にベッドルームのような空間があることです。

つまり平屋建てなのに、小屋裏空間を利用した1.5階建てのように空間利用されているわけです。加えて、このようにすると天井高が高くなり、空間全体の開放感が高まるという、住環境を向上させるメリットも生まれます。

災害時に役立つ収納

副次的効果のもう一つは災害への備えです。【写真9】を見てください。これは玄関からキッチンに至る動線上で、しかもキッチンの側に設けられているため家事動線を短くする配慮が行われていることが第一の特徴です。

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【写真9】


加えて、大量にまとめ買いしたモノをしまえますし、消費期限なども把握しやすくなります。このことは災害時の食糧不足、モノ不足の時に慌てなくてすむため、安心を感じられる要素になるはずです。

水や即席麺なども含めて購入した順番に消費し、少し減った分を買い足して、できるだけ大量に保存しておくという暮らしを習慣づけておけばなお良いでしょう。このような収納の仕方を「ローリングストック」といい、災害への備えの工夫の一つとされています。

収納で見落としがちな箇所

ところで、冒頭にもある通り腐るほど住宅関連の写真を撮影し残してきた私ですが、これといった良い写真が見つからなかったのが玄関部分です。実はこれには理由があって、玄関回りのスペースはあまり広くなく、写真撮影に向かないという点があります。

また、リビングなど他の見どころにどうしても目が行って、玄関部分の写真を撮り忘れてしまったということもあります。しょせん言い訳なのですが、このように収納に関して見落としてしまいがちな部分というのがありますから、最後に指摘しておきます。

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【写真10】


【写真10】は、その中でもマシなもので玄関に土間部分を設けて、履き物だけでなくベビーカーなども収納できるようにしています。このような玄関だと幼い子どもがいる世帯にとって使い勝手の良い住まいになるはずです。例えばゴルフバックなどもここに置いておくと良いかもしれません。

住まいづくりでは、皆さんが今、ニーズとして重視していないことが、後々大きな不満となって表れてくるものです。中でも収納はそれが強く表れてくる部分です。そうした、皆さんが気づかないニーズ、困りごとについてしっかりと対応するのが「良い設計・デザイン」なのです。収納について学ぶということで、そうしたことも確認していただきたいものです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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