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同じCDなのに音質が違う!? その理由とは

デジタル方式のCDは、高音質、均質、劣化が無いと考えられていますが、実は、同じタイトルのCDでも音質が異なるケースが!? 今回は、そんな一般人が知らなくて良いマニアックなマニアックな世界をご紹介します。さらに、密かに注目されている、“高音質”CDにも触れます。

鴻池 賢三

執筆者:鴻池 賢三

オーディオ・ビジュアルガイド

マニアは、同じタイトルのCDを複数所有することも

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同じCDでも音質は違う?

ふだん皆さんが音楽を聞くCD。日本レコード協会の統計によると、最盛期は1998年で年間4.7億枚を生産。その後、音楽配信などの影響も受けて生産量は減少傾向が続くものの、2015年も約1.7億枚を生産しています。

また、各家庭には平均100枚程度のCDがあるという調査結果もあり、音楽配信への移行が進みつつも、今後もしばらくは、CDに触れる機会は多いことでしょう。

 

そんなCDは、レコードやカセットテープに比べると、デジタル方式で音質が良く、また品質ムラや劣化が少ないなど、「安定」したイメージを持つ方が多いことでしょう。

しかし、厳密には同じタイトルのCDでも、それぞれ僅かながら音質が異なり、オーディオマニアやコアな音楽ファンは、同じタイトルのCDを複数所有しているケースが少なくありません。

都市伝説か! ウソのような本当の話か!?

今回は、そんな不思議な「音の違い」の理由をご紹介しつつ、最新の高音質CD事情にも触れたいと思います。

興味を持った方なら、オーディオマニアの素質があるかもしれません!


同じタイトルのCDでも音が違う理由

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デジタルは「0」と「1」の世界・・・

まずはCDの基本原理をおさらいしておきましょう。デジタル方式のオーディオは、原理上、最終的に「0」と「1」の2値で表現されるデータを受け渡しできれば「正確」と言え、音質も同等、あるいは劣化なし、とみなすことができます。連続する波形を扱うアナログオーディオに比べ、均質で劣化が少なくできる理由です。

市販されている音楽CDは、目には見えませんが、音楽データが渦巻き状に記録されていて、平らな土台とも言えるランド部と、ピットと呼ばれる凸部があります。CDプレーヤーがディスクに照射したレーザー光のうち、ランドに当たっている間は反射、ピットに当たっている間は乱反射する仕組み、つまり、反射光の有無で「0」と「1」を判別しています(正確には変調と呼ばれる変換が施され、ランドとピットの境目を「1」、それ以外の部分を「0」と判定します)。

CDを再生した際、音が途切れなく再生できていれば、このレーザー光の反射と読み取りは、概ね問題無く行われていると言えます。

CDの構造(イメージ)

CDの構造(イメージ)

さて、ここからがマニアの領域。デジタル方式では音楽が途切れなく再生できていれば、音質は同等と考えられがちですが、CDの場合はレーザー光がデータを読み出す際、アナログ的な劣化要素を含んでいます

具体的には、ピットが連なるトラックの間隔は僅か1.6μmと、ヒトの髪の毛の幅に4~5列も収まってしまうほど微細なもので、ほんの僅かな位置のズレや、ピット形状の崩れが、ジッターと呼ばれる時間的な揺らぎ(歪み)の元になり、音質に悪影響を及ぼすと考えられています。

CDの内部では、補正機能が働いているので、音途切れが生じるケースは希ですし、一般には大きな音質差として認められませんが、マニアは余韻の透明度、音の消え際、開放感などに違いを見い出し、こだわるのです。

では、同じタイトルのCDでも、音質が異なる理由とは? それは、製造過程において、軽微ながら精度にバラツキが生じるためです。

音楽CDはスタンパーと呼ばれる金型を使用し、プレス方式で生産します。つまり、元となる金型の精度で、ピットの位置や形に差異が生じます。例えば、金型はプレスする毎に摩耗するので、新品のスタンパーに対し、数万枚プレスした後のスタンパーでプレスしたCDは、ピットの形が不鮮明になりがちです(以下、イラスト参照)。
スタンパー消耗時のイメージ

スタンパー消耗時のイメージ

また、人気タイトルの場合、生産量が多いので、金型であるスタンパーも複数存在し、スタンパーの製造工場や設備、機器のコンディションによって、スタンパー自体の精度も異なります。

ほかにも、ガラスマスターと呼ばれる原盤やスタンパーの製造技術(精度)、プレス時の精度(生産量を優先すると、ピットの転写が不鮮明になる)など、様々な変動要素があります。

この「精度」問題は、CDを中心とするオーディオの趣味性を奥深くしているとも言えるかもしれません。


高音質CDが存在する!?

精度と音の関係に疑問を持たれる方も多いと思いますが、オーディオマニアの間では常識。事実、CDの規格に沿いつつ「高精度で高音質」に着目した「高音質CD」も登場し、話題になっています。

実例をご紹介しましょう。

1. UHQCD (メモリーテック株式会社)
CDで一般的に用いられるポリカーボネートではなく、流動性の高いフォトポリマー素材を使用し、スタンパーのピットを高精度に転写。UHQCDで入手できるタイトルは、J-POPSの名盤、ジャズ、クラシックなど。詳しくはコチラでご確認を。 

作品例:

 

2. プラチナSHM (ユニバーサル ミュージック ジャパン)
反射膜に一般的なCDに用いられるアルミ材ではなく、純プラチナ(Pt1000)を使用。ほか、レーザー光の不要な反射(迷光)を吸収する効果のあるターコイズ色のコーディング、マスターやカッティングに拘って制作。

作品例:

 

3. Blue-spec CD2 (株式会社ソニーミュージックエンターテイメント)
CDよりも高密度で高い精度が要求されるブルーレイの製造技術を用い、原盤となるマスターの高精度化、製造工程における転写回数を減らすことで、高精度な仕上がりを実現。タイトルはコチラで確認を。

作品例:

 

さいごに

特殊なものではガラス製CDもあり、当サイトでも「究極?! 噂のガラス製CD(98,700円)」という記事で紹介しました。ガラス製CDを手に入れるのはかなり特殊ですし、今回ご紹介した高音質CDもタイトルが限られ、オーディオマニア向けと言えますが、一般的なCDなら1,000円~3,000円前後。お気に入りのアーティストの作品なら、何枚か購入して、聞き比べるのも面白いでしょう。

音質の違いは、海外盤と国内盤、リリース当時の古い盤と最近プレスした新しい盤など、いろいろなパターンがあります。今ならネットオークションで古いCDも手に入り易いですので、是非お試しを!

【出典】
JASジャーナル 通巻393号(2009年1月発行)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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