食と健康

4人に1人が脂肪肝…食事時間でできる脂肪肝予防

自覚症状がなくても健康診断などで見つかる「脂肪肝」。日本人の4人に1人が該当するともいわれる脂肪肝ですが、肝硬変や肝臓がんなどに進行する恐れがあり、生活習慣病のリスクも高まってしまいます。仕事がら、肝臓への負担は仕方がない、と諦めてはいけません。脂肪肝は食事の「タイミング」を整えることで予防・解消できる可能性があるのです。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

日本人の4人に1人は脂肪肝

医師の説明を受ける男性

健康診断で脂肪肝を指摘された人はいませんか? でも心配はいりません。脂肪肝だけなら生活習慣で十分改善が可能です!

健康診断で「脂肪肝」の診断を受けたことはありませんか? 脂肪肝は肝臓に中性脂肪が蓄積してしまった状態です。医師から「肝臓がフォアグラのようになっている状態」と説明を受けて、何がいけなかったのかと頭を抱えている人も少なくないかもしれません。

中性脂肪が蓄積していると聞いてもピンとこないかもしれませんが、脂肪肝を放置すると肝硬変や肝臓がんなどの怖い病気に進行する恐れがあり、生活習慣病のリスクも高まります。

脂肪肝の原因…アルコール・運動不足・無理なダイエット等

脂肪肝を含む肝臓の病気は、お酒が原因で引き起こされるといわれています。アルコールの分解過程で中性脂肪が合成されやすくなるので、たしかにお酒の飲みすぎで、肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなるといえます。

しかし、飲酒の習慣がない人でも脂肪肝などになってしまうことは少なくありません。摂取エネルギーが運動などで使いきれればよいのですが、食べすぎや運動不足で消費エネルギーが少ないと、結局余ったエネルギーが中性脂肪となって肝臓に蓄積されます。太っている人の場合、肝臓での中性脂肪の利用がしにくくなりますし、無理なダイエットをした人たちも肝臓の中性脂肪がエネルギーとして利用しにくくなります。さらに怖いことに、お酒を飲まない人の脂肪肝のほうがお酒を飲む人よりも深刻で肝硬変、肝臓がんに進行しやすいといわれています。

しかし、過剰に不安になることはありません。脂肪肝は早期の段階であれば生活習慣を見直すことで、治療・再発予防は十分可能なのです。

脂肪肝を生活習慣で予防・治療する方法

脂肪は筋肉で燃やすことができます。まずは運動で筋肉をつけることが大切です。軽い筋トレが適しています。スクワットなら無理のない範囲で5~10回程度、腕立て伏せも膝をついて5~10回といった程度で十分です。

食事で脂肪肝や血液中の中性脂肪を食事で改善する方法は「食事で改善! 高いのは中性脂肪? コレステロール?」で詳しく解説しましたが、脂肪肝の原因で最も多いのは「糖質の摂りすぎ」です。糖質といっても、原因となるのは、菓子の摂りすぎばかりではありません。糖質にはでんぷんも含まれますので、ご飯、麺類、パンの食べすぎの場合もあります。また、果物に多く含まれる果糖で糖質を多く摂っている場合や、牛乳・乳製品に多い乳糖で糖質が多くなっている人も見られます。

さらに食べる内容だけでなく食べる時間も重要で、「遅い時間の食事」が脂肪肝のリスクを上げると言われています。

体内時計が嫌いな食事のリズムは「朝食べないで夜食べる」

「遅い時間の食事」が脂肪肝のリスクを上げると聞くと、「体内時計」を思い出す人も多いと思います。「夜に飲むべき!? 「時間栄養学」で考える牛乳の飲み方」でもお話しましたが、体内時計には大きく分けて5つあります。中性脂肪は日の出から8時間後に最大になると言われているため「日内リズム(サーカディアンリズム)」が最も密接に関連していると考えられます。

日内リズムを整えるためには、太陽の動きと密接な関係がありますので、朝日が昇ったら活動を始めるためのエネルギーを摂ること。夜は胃腸も休憩をとる必要があるため、就寝の直前に食事を摂ることは避けることが大切であることは、よく知られた話です。ところが、この「体内時計」を覆す研究結果が最近になって発表されたのです。

食事の時間で脂肪肝が予防できる?

イスラエルのワイツマン科学研究所が行った研究です。

「自然の体内時計に従わせたマウス」と「体内時計を狂わせたマウス」に夜のみエサを与えると、どちらも中性脂肪が最大になるのは食後、約20時間後だった、というのです。このことから、中性脂肪の変化は、体内時計よりも食事時間に影響を受けているのではないかと推察されます。

もちろん、この研究はマウスでの研究ですので、この結果をそのまま人間に当てはめることはできません。しかし、この結果は仮に夜勤や交代勤務などで体内時計が太陽の動きに合わせられなかったとしても、食事時間を整えれば、脂肪肝やメタボリックシンドロームのリスクを下げられるのではないかと期待されます。

「仕事柄、不健康になってしまうのは仕方がない」とあきらめてしまうのはもったいないことです。どんなささいなことであっても、健康維持につながります。自分の生活に合わせてできる範囲で生活習慣を整えることが、大切なのです。生活スタイルの改善ポイントは24時間の過ごし方のクセにあります。「遅い時間にしか食事できない人が健康を保つ秘訣」にも、そのヒントを書きました。まずは、自分の24時間の過ごし方を見直して、身体のためにできることを探してみること、そして小さなことでもいいので、実行してみることをオススメします。

■参考文献
Y. Adamovich, L. Rousso-Noori1, Z. Zwighaft1 et al:Circadian Clocks and Feeding Time Regulate the Oscillations and Levels of Hepatic Triglycerides,Cell Metabolism19(2),319-330,2014
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