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聖地巡礼!『この世界の片隅に』の舞台・広島をめぐる

2016年に公開され、日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞を受賞した劇場用長編アニメ『この世界の片隅に』は、広島市江波(えば)地区で生まれ育ち、軍港の街・呉(くれ)に嫁いだ、ごく平凡な女性の視点で、戦前・戦中の世相を描いた作品。この映画のスクリーンに描かれた風景を手がかりに、戦後70年を経て戦争の記憶が今なお残る広島で、『この世界の片隅に』の聖地(ロケ地)をめぐりたいと思います。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

『この世界の片隅に』の広島市内の聖地(ロケ地)めぐり

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

2016年に公開され、日本アカデミー賞 最優秀アニメーション作品賞を受賞した劇場用長編アニメ『この世界の片隅に』(片渕須直監督 こうの史代原作)は、広島市江波(えば)地区で生まれ育ち、軍港の街・呉(くれ)に嫁いだ、ごく平凡な女性の視点で、戦前・戦中の世相を描いた作品。

2018年夏にはテレビドラマも放送されました!

この映画のスクリーンに描かれた風景を手がかりに、戦後70年を経て戦争の記憶が今なお残る広島で、『この世界の片隅に』の聖地(ロケ地)をめぐりたいと思います。

今回のコース
<江波地区>


<広島市中心部>


 

すずの故郷、広島市江波地区へ

映画の主人公、浦野すずの故郷・江波地区は、天満川と本川(太田川)に囲まれた三角州の南東部にあります。改めて、地図で見てみると、広島市の市街地というのは、幾筋もの川が流れる中洲を中心に発展していることが分かります。
広島市内を走る路面電車(広島電鉄)

広島市内を走る路面電車(広島電鉄)


広島は全国でも希に見るほど、路面電車(広島電鉄)がしっかりと残っている街。かなりレトロな車両から最新型まで様々な電車が走っているので、鉄道ファンにとってはたまらないでしょう。

江波方面への路面電車は、広島駅の新幹線口とは反対側の在来線側の出口を出て、すぐの所に発着していますが、色々な路線があるので、間違えないように! 江波までは、江波行きの電車で40分ほどです。
すずの故郷、江波。2014年に全線開通したばかりの広島高速3号線が頭上を走る

すずの故郷、江波。2014年に全線開通したばかりの広島高速3号線が頭上を走る

江波の電停(路面電車の停留所)を下り、200mほど南に歩いて行くと、2014年に全線開通したばかりの広島高速3号線が頭上を走っています。じつは、この高速道路の工事で、この周辺の古い街並みがだいぶ取り壊されてしまったというのが残念。

高速に沿って東に向かうと、太田川の川べりに出て、丘の上に丸子山不動院という寺院があり、境内からは周囲の街並みを一望できます。すずの実家・浦野家は、この江波の漁師町で海苔(ノリ)などを作っていたという設定です。
映画にも登場する「松下商店」の建物。小学校に通うすずが、店の前を走っていた

映画にも登場する「松下商店」の建物。小学校に通うすずが、店の前を走っていた


丸子山不動院のすぐ北側には、映画にも登場する「松下商店」の建物がありますが、もうだいぶ前に営業をやめているようです。
 

江波山に登ってみましょう

江波を訪れたなら、もう一ヶ所、ぜひ訪れたいのが江波山。絵を描くのが得意なすずが、初恋の人(と思われる)水原哲に学校の課題の絵を描いてあげ、その絵の中の「波のうさぎ」がとても印象的だった場所。

江波山へは、衣羽神社(えばじんじゃ)の境内から登るのが近道で、山の上は公園として整備されており、北東の隅には、元気象台の建物を利用した「江波山気象館」という博物館があります。
すずが「波のうさぎ」を描いた場所。現在は、海は見えづらい

すずが「波のうさぎ」を描いた場所。現在は、海は見えづらい


すずが「波のうさぎ」の絵を描いた場所を探し求めてみたところ、どうやら、公衆トイレの先の、ベンチが置かれている辺りのようです。

「安芸小富士」と呼ばれる広島湾に浮かぶ似島(にのしま)の山も見えますし、場所は、ほぼ間違いなさそうですが、残念ながら手前に木が茂っているのと、海までの間にマンションが建っているので、景色はそれほどよくありません。
「江波山気象館」の屋上からは、江波の街並みも一望できる

「江波山気象館」の屋上からは、江波の街並みも一望できる


むしろ、オススメなのは「江波山気象館」の屋上からの眺望。先ほど歩いた、すずの実家付近の江波の街並みなどを一望することができます。

<DATA>
■江波山気象館
住所:広島市中区江波南1-40-1
休館日:毎週月曜日(祝日・休日の場合を除く)、祝日の翌日、年末年始など
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:大人100円
ホームページ → 江波山気象館ホームページ
 

広島市街地の中心部へ戻ります

江波の散歩を終えたら、先ほどの路面電車に乗り、「十日市町」駅まで戻ります。ここから相生(あいおい)通りを100mほど東に歩くと、映画の冒頭で、すずと、後にすずの夫になる周作をさらった"ばけもん"が歩いていた「相生橋」が見えてきます。
相生橋上を走る路面電車と原爆ドーム。相生橋は、とても珍しいT字型の橋で目立つことから、原爆投下の目標とされた

相生橋上を走る路面電車と原爆ドーム。相生橋は、とても珍しいT字型の橋で目立つことから、原爆投下の目標とされた


映画では、相生橋から「広島県産業奨励館」が見えていましたが、これが、原爆投下の爆風でドーム部分の骨組みだけが残り、現在は「原爆ドーム」として保存されている建物。また、映画と同様に、現在も橋の上を広島電鉄の路面電車が通過して行きます。

米軍による原爆投下の目標となったのが、この相生橋。原爆は、実際には、相生橋から原爆ドームを挟んで反対側の路地の中にある、「島外科内科」(当時の名称は「島病院」)の上空600mで炸裂(さくれつ)しました。
島外科内科の傍らに立つ、「爆心地」であることを示す案内板

島外科内科の傍らに立つ、「爆心地」であることを示す案内板


現在、島外科内科の傍らには、「爆心地」であることを示す案内板が立っています。
 

平和記念公園へ

さて、「爆心地」の案内板の場所から元安川に架かる元安橋を渡ると、元安川と本川(太田川)に挟まれた中洲が「平和記念公園」として整備されていますが、ここは、かつては中島本町と呼ばれる市内でも有数の繁華街・歓楽街だったエリアで、子供の頃のすずが、ここへお使いに出かけてきました。
旧「大正屋呉服店」の建物。現在はレストハウスに使用されている

旧「大正屋呉服店」の建物。現在はレストハウスに使用されている


当時の街の面影をわずかに残しているのが、旧「大正屋呉服店」の建物で、現在はレストハウスに使用され、観光案内所や休憩所、売店などが入っています。
「平和の灯」と「広島平和記念資料館」

「平和の灯」と「広島平和記念資料館」

ここから平和公園内を南に行けば、記念式典などでテレビにもよく映る「平和の灯」や「広島平和記念資料館」などがあります。

広島平和記念資料館は、内装・展示変更のために現在、本館を閉鎖しており、リニューアルオープンは2019年春になる見込みとのことです。
福屋百貨店八丁堀本店

福屋百貨店八丁堀本店


このほか、広島市内の『この世界の片隅に』関連の聖地としては、すずが嫁ぎ先の呉から里帰りした際に、スケッチに出かけたときに登場する「福屋百貨店」の建物が現存しています。
  なお、主人公のすずの声優を担当したのんが、物語の舞台となった広島県呉市を巡る姿を追った写真集「のん、呉へ。 2泊3日の旅~『この世界の片隅に』すずがいた場所~」が12月16日に発売になっています。

引き続き、「聖地巡礼!『この世界の片隅に』の舞台・呉をめぐる」もお楽しみください。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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