医療情報・ニュース

「1日5時間以上のテレビ」で、死亡リスクが2.5倍に!

テレビを毎日5時間以上見る人は、「肺塞栓になって死亡する率」が2.5倍にも高まるという研究報告がありました。テレビ自体が悪いのではなく、同じ姿勢、特に下肢を下げた状態を続けることで、自宅でも「エコノミークラス症候群」が起こりうるということです。こまめに動くことの重要性と、心がけるべき日常的な健康管理のコツをご紹介します。

米田 正始

執筆者:米田 正始

心臓血管外科専門医 / 心臓病ガイド

長時間のテレビ視聴で死亡リスクがあがる?

テレビ視聴

ついつい時間を忘れて見入ってしまうことがあるテレビ。長時間の視聴が健康リスクにつながるという研究結果が報告されました

ネット全盛の時代といえどもまだまだテレビは魅力のあるメディアです。テレビ好きで、することがないとついつい時間を区切らずに見続けてしまうという方も少なくないと思いますが、ちょっと心配な報告があります。

テレビを長時間見ると肺塞栓になって死亡するリスクが2.5倍にも増えるという研究発表があったのです。
エコノミー症候群
テレビ長時間視聴でリスク増…阪大研究
毎日新聞2016年7月27日 10時06分

テレビを長時間見る人は、肺の血管がつまる肺塞栓(そくせん)症で死亡するリスクが増加するとの研究成果を、大阪大の研究チームがまとめた。テレビを1日に5時間以上見る人の死亡リスクは、2時間半未満の人の2.5倍だった。(中略)
テレビを見る時は同じ姿勢を続けるため、チームはアンケートのテレビ視聴時間に着目。視聴時間に加え、年齢や飲酒・喫煙歴などから分析した結果、テレビを1日に2時間半~5時間未満見る人の死亡リスクは2時間半未満の人の1.7倍、5時間以上の人は2.5倍に上ると結論付けた。

この研究発表にあわせて、テレビ視聴中には1時間に1回は歩くようにすることと、ふくらはぎのマッサージをすることなどの対策を行うべきというコメントもされいます。

機内や車中泊以外でも起こりうるエコノミークラス症候群

「エコノミークラス症候群」と聞くと、飛行機での長時間フライトで起こる病気と思われている方が多いと思います。

確かにその名の通り、機内での発症が多く、長時間のフライトで特に注意喚起されます。飛行機のエコノミークラス、つまり座席があまり倒れない席に長時間同じ姿勢で座りっぱなしでいると、直立に近いような状態で下肢を下げたままになってしまいます。そのため下肢の静脈がうっ滞して血栓ができてしまうのです。多量の血栓が肺や心臓に流れ着いて詰まってしまうと、肺や心臓が作動せず、血圧が出せなくなり死に至ることがあります。

エコノミークラス症候群はその後ビジネスクラスなどでも起こることが判明し、さらに近年は地震の被災地でプライバシーを保とうと車中泊をした方たちの中で発生し、死亡者が出て大きな問題になりました。

つまりエコノミークラス症候群は、「飛行機のエコノミークラス」という限定的な場所だけでなく、下肢を長時間下げていた場合、どんな場所でも起こり得る病気なのです。

エコノミー症候群は下肢の静脈に血栓ができる状況なら何でも原因になり得ます。たとえば脱水で血液が濃くドロドロになることも大きな原因です。飛行機の場合は隣の座席の方に気兼ねして、何度もトイレに行かなくて済むように飲水を控えていると、長時間下肢を下げた状態に加わって血栓ができる危険性をさらに上げてしまいます。

根本的な問題は「長時間のテレビ視聴」ではなく「姿勢」

つまり、単に5時間連続でテレビを見る習慣があることが、そのまま死亡リスクにつながるのではなく、テレビ視聴でしがちな姿勢に問題があると考えた方がよさそうです。また、同じように下肢を下げている場合でも、適宜歩いたり力を入れたりしておけば、下肢の静脈血が押し出されるように流れますので血栓はできにくくなります。

ですのでテレビを長時間見るような場合も、意識的に視聴を休憩して室内で歩いたり、下肢に力が入る運動をしたりすることが予防につながります。

また飛行機の中だけでなく室内でも夏などには脱水になりやすいものです。一段と血栓ができやすい状況になってしまうため、脱水対策なども併せて必要です。例えば真夏の暑い日に、ソファに腰かけて高校野球を長時間テレビで楽しむような場合は、手元に飲み物などを準備しておくのがよいでしょう。

室内で上手に下肢を運動させるコツ

とはいえ、用事もないのに適宜室内を歩き回るというのは、習慣として何だか取り入れにくそうと考える人もいるでしょう。もちろん、歩き回ることだけが下肢の運動ではありません。要は下肢の筋肉をしっかりと収縮(硬くすること)させたり、弛緩(リラックスさせること)させることが大切なのです。この筋肉の動きを「筋肉ポンプ」と呼びます。下肢全体の筋肉ポンプを使えば良いわけです。

例えばですが、同じ位置で足踏みをするというのも役立ちます。室内運動用の自転車をこぎながらというのも一法ですが、ふくらはぎの収縮も大切なので自転車ならつま先をしっかりと使うのが良いでしょう。

たとえ座ったままでも足首を回転するなどして下肢の筋肉をつかえばある程度役に立ちます。

もっと知るべき「座りっぱなし」の健康リスク

以上のように、座りっぱなしでいることは健康にとってはよいこととは言えません。たとえばおじいさんやお父さんなどに「お茶取って」「新聞取って」と言われて、ご家族がそれらを運ぶような昔の習慣は、そのおじいさんやお父さんの健康を考えると悪いことかも知れません。歩行困難などの事情がある場合はともかく、普通に歩ける状態ならむしろご自分で取りに行くのがご本人の健康のためになるのです。

そしてお茶などをきちんと飲めば、トイレへ行く回数もほどよく増え、下肢の運動不足解消にも役立ちます。家の中でも飛行機でも同じです。

また、「座る時間」が1時間増えると、身体が不自由になるリスクが1.5倍になるというデータも発表されています。
「座る時間」が1時間増えるだけで身体が不自由になるリスクが1.5倍に
The Huffington Post | 投稿日: 2014年02月22日 09時57分 JST

「毎日、長時間座って過ごすことは、その後の身体障害につながる」という研究結果を、ノースウェスタン大学フェインバーグ医学大学院の研究者たちが発表した。

2286人にのぼる60歳以上の人たちの身体活動レベルを調査したこの研究では、「座っている時間が1日1時間増えるだけで、体が不自由になるリスクが大幅に増加する」ことがわかった。たとえば、1日13時間を座った状態で過ごす65歳の女性の場合、1日12時間座っている場合よりも、体が不自由になる可能性が1.5倍高いことになる。(中略)

体が不自由になった高齢者は、ベッドへの出入り、入浴、歩行といった単純な動作でさえ困難になる可能性がある。

ほかにも、「長時間座った状態が、心臓疾病や高血圧、糖尿病などの慢性的な健康障害につながる」という研究結果が複数発表されてきた。さらに最近では、毎日長い時間、仕事のデスクや家庭のソファーに座って過ごす女性は、早死にするリスクがかなり高くなるという研究結果も出ている。(後略)
上記で紹介されているダンロップ氏は、「日常的な動作にシンプルな変化を加えること」を提案されています。挙げられているのはいずれも難しいことではなく、「電話中は座らずに立って話す」ことや「エレベーターではなく、なるべく階段を利用する」などのちょっとしたことです。

心がけ次第で、日常的な運動量を増やすことができるのではないでしょうか。

こまめに動くことは健康管理の第一歩!

いかがでしょうか。人間はじっとしていては病気になる、あるいは寿命が縮まるようにできているのかも知れません。

意識的にこまめに動き、周囲の方々に喜ばれながら、健康に生きるというのが良さそうですね。そうすればテレビももっと健康的に、安心して楽しめるというものです。

▼参考サイト
肺塞栓症について―予防が第一、しかしもし発症したら、、、」(心臓外科手術情報WEB)…エコノミー症候群や肺塞栓症の治療情報なども得られます
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます