パン/パン屋さん取材レポート(東日本)

「ティエリー・マルクス」銀座プレイスに2016秋OPEN!

2016年秋、GINZA PLACE(銀座プレイス)にパリの2つ星シェフ、ティエリー・マルクスによるフレンチレストラン「THIERRY MARX」とビストロ&カフェ「BISTRO MARX(ビストロ ・マルクス)」がオープンします。ビストロ マルクスではティエリー・マルクスの料理とパンの組み合わせがカジュアルに楽しめ、ベーカリーショップも併設される予定です。オープンに先駆けてシェフに単独インタビューを行いました。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

銀座の中心地にパリのティエリー・マルクスによる料理とパンを楽しめるビストロ&カフェが2016年秋OPEN

ティエリー・マルクス

ティエリー・マルクス

2016年9月24日、銀座の中心ともいえる交差点の、和光の時計塔を正面に臨む複合商業施設「GINZA PLACE(銀座プレイス)」にパリの2つ星レストラン「シュール ムジュール パール ティエリー・マルクス」(マンダリン オリエンタル ホテル パリ)の総料理長、ティエリー・マルクスによるフレンチレストラン「Thierry Marx」ビストロ&スカイバー・ブーランジュリー「BISTRO MARX(ビストロ・マルクス)」がオープンします。この記事ではビストロ・マルクスについてご紹介します。
銀座四丁目交差点を臨む

銀座四丁目交差点を臨む

注目したいのはティエリー・マルクス氏のなみなみならぬパンへの想い。彼は料理人ですが、同時にパン職人でもあり、パリでも2013年、20区に製パン学校を創設、2016年には「THIERRY MARX LA BOULANGERIE」をオープンしたばかりです。9月にオープンが予定されているビストロ・マルクスでは素材と製法にこだわった料理とパンのマリアージュがカジュアルに楽しめるメニューが登場するそうです。ここにはベーカリーショップの併設も予定されています。

ティエリー・マルクス独占インタビュー

東京にはクオリティの高いパンを楽しめる店がたくさんありますが、ビストロ・マルクスは、どんなお店になるのでしょうか? ティエリー・マルクスならではのパンの特徴は? オープンに先駆けて、ティエリー・マルクス氏に単独インタビューをさせていただきました。
店内の様子

店内の様子


ーービストロ・マルクスではどのようなメニューをお考えですか?

「パンと料理の組み合わせメニューを楽しんでもらおうと思っています。パンと料理はコントナン(器)とコントニュー(中身すなわち料理)。2つの世界の出合いです。中世のフランスではスライスしたパンをトランショワール(取り皿)として用いました。上に料理をのせて食べていたという記録があります。当時は素材のクオリティもよくないパンだったでしょう。でも今はそれをおいしくつくることができます。具体的なメニューはまだ公表できませんが、たとえばパン・ド・セーグル(ライ麦パン)に煮込んだ肉をのせるとか、そういうメニューを考えています」
仔羊の煮込み、白いんげん豆。下に敷いてあるのはカンパーニュ。

仔羊の煮込み、白いんげん豆。下に敷いてあるのはカンパーニュ。



ティエリー・マルクスの提案するハンバーガー

ーーハンバーガーをメニューのひとつにお考えだそうですね。日本では、伝統的なフランス流のパンづくりをしていた職人たちが、その技術でアメリカンアイテムに臨む傾向があります。また、アメリカの都市部ではファストフードをオーガニックな素材を用いて手作りで再構築するクラフトフードの流行があります。アメリカンなアイテムのハンバーガーがティエリー・マルクスさんの手にかかるとどんなふうになるのか興味あります。

「フランス料理の世界には19世紀から20世紀初めにかけてジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエという人がいて、1903年の本に既にハンバーガーが出てきます。だから基本的に、ハンバーガーはフランス料理なんです。牛肉を刻む仕事はアルチザン(職人)の仕事で、バンズを焼くのもアルチザンの仕事。
日本にはいい牛肉があるし、パリで既にバンズを開発しています。だからグランビストロのシグニチャーメニューとしてハンバーガーを一品つくろうと考えていますよ。ハンバーガーだけではなくて、さまざまなパンと料理の出合いが考えられます」
肉汁たっぷりの黒毛和牛を使ったマルクスバーガー。トマトピュレとベアルネーズソース(エストラゴンとエシャロットのマヨネーズ)添え。

肉汁たっぷりの黒毛和牛を使ったマルクスバーガー。トマトピュレとベアルネーズソース(エストラゴンとエシャロットのマヨネーズ)添え。

ーー最初に、ガストロノミーレストランのフレンチの料理人とハンバーガーがあまり結びつかないような気がしていたんです。でも、マルクスさんはパリの路上の料理のクオリティを上げ、きちんと組織し、発展させることを目的にした「ストリートフード協会」を設立されて、職人の育成にも力を入れておられるんですね。

「はい。ハンバーガー? ストリートフード? と言われてもおそれることはありません。自分にとってはストリートフードも同じ、職人の仕事ですから」

ティエリー・マルクスの「ブリオッシュ・フイユテ」

ブリオッシュ・フイユテとは、折込み生地の層が楽しめるブリオッシュ

ブリオッシュ・フイユテとは、折込み生地の層が楽しめるブリオッシュ


ーーさて、パンのほうですが、ブリオッシュとそこから派生したメニューが中心となるそうですね。それはなぜですか?

「パリのイメージ。そしてグルマン(食いしん坊)のイメージだからです」

ーーマルクスさんのブリオッシュは「Brioche feuilletée(ブリオッシュ・フイユテ)」。一般的なブリオッシュとは異なり、パイのような美しい層がみられる折込み生地でつくられているのですね。こういうタイプはパリでポピュラーなのですか?
ブリオッシュフイユテ内相

ブリオッシュフイユテ内相

「テクニック的に難しいので、パリでもあまり見かけません。日本のパン屋さんのことはよくわからないけれど、初めてじゃないかな。現在、moule lisse(ムールリース。”型に入れたなめらかな”の意で今回想定しているブリオッシュの形状のひとつなのだそう)でベーシックな”ヴァニーユ”と、”ヘーゼルナッツプラリネ”、”ピスターシュ”、”カプチーノ”などのバリエーションを試作しています。甘いものだけでなくて塩味のラインも、またかたちもいろいろ展開できると考えています。風味づけに香料などは用いず、すべて質の良い本物の素材でつくります。食はプレジール(喜び)をもたらすものでなくてはならないと思っているので、身体のことも考えます。身体に負担をかけないことが大事です。このブリオッシュはたっぷり空気を含んでいて軽いんですよ。そしてしっとりとして、二日ゆっくり賞味できます」
ブリオッシュフイユテは層のあるブリオッシュ

ブリオッシュフイユテは層のあるブリオッシュ

ーーブリオッシュ・フイユテの素材や製法の特徴を教えてください。

「小麦粉は北海道産の有機小麦、”はるきらり”です。誠実なつくりかたをしているものに出合いました。素材選びは環境問題にも目をやらなくてはと思っています。これはどういう素材か、どういうところで作られているのか、地面からよく理解したいですね。卵はコクと甘味が強い”那須御用卵”です。日本にもよい生産者がいました。酵母は、生イーストとルヴァンを併用しています。ゆっくりと長時間発酵をとる製法です。バターは低水分のもの、ポワトー・シャラントの”レスキュール”、ノルマンディーの”エシレ”などを何種類か予定しています」
料理人でありパン職人でもある

料理人でありパン職人でもある


伝統と革新は両立するもの

パリのTHIERRY MARX LA BOULANGERIEのパン

パリのTHIERRY MARX LA BOULANGERIEのパン

ーーブリオッシュ以外のパンもつくりますか。

「もちろん、クラシックなバゲット、ルヴァンカンパーニュなどもつくります。あと、ブーランジェのガトー(パン職人ならではのお菓子)もやりたいね。基本的に粉と酵母と水と塩というシンプルな素材からさまざまなパンが生まれ、料理と組み合わせることで新しいものが生まれます。我々の仕事でそこに新たな価値をつくりだすことができると思っています。伝統的なものというと、過去のものと考えられがちですが、それだけではないんです。伝統を受け継いでいくにはそこに新しいものを提案していくことが大事なんです。伝統と革新は両立するもの。だからたぶん、我々のパンは新しいのではと思います」
フレンチトースト

フレンチトースト


ーー不易流行ですね。マルクスさんは柔道や剣道もされているそうですが、その精神は料理やパンに影響を与えていますか?

「そうですね。正確な動作ということにおいて、影響しています。まず正確に切る。火をきちんと入れる。時間を調整する。この3つの悟りがベースになっています。このベースを押さえられれば、応用できます。正確に切ることは、味も正確ということなんです。それを確実にやります。手作業でしかできないことがあります。そしてクオリティを守るためには、やるべき作業工程のほかに生産のリズムもある。大量生産は無理です。それをきちんとすることが、伝えたい味を伝えることになるんです」
ティエリー・マルクスさんと統括シェフを務める小泉敦子さん

ティエリー・マルクスさんと統括シェフを務める小泉敦子さん

BISTRO MARX(ビストロ・マルクス)により、銀座のベーカリーシーンがまたひとつアップデートされそうです。レストランとビストロの統括シェフを務めるのは日本人女性シェフの小泉敦子さん。またここは、ビストロは夜23時以降はプレミアムテラスバーとして夜景とともに季節のフルーツカクテルやシャンパーニュを愉しめる空間となるそうです。オープンは2016年9月24日です。


テストキッチンにて

テストキッチンにて

BISTRO MARX(ビストロ・マルクス)
住所:中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE 7F
電話:03-6280-6234
営業時間:
11時~23時(ビストロ・ブーランジュリー)
23時~2時(プレミアムテラスバー)
不定休(プレミアムテラスバーは日祝定休)
Yahoo!地図情報
東京メトロ銀座線銀座駅0分



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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