食と健康

とても危険な「痩せすぎ」自慢? シンデレラ体重とは

シンデレラ体重を知っていますか? 最近、女子中高生の間でじわじわと浸透している「理想体重」のことです。シンプルな計算方法で、めざすべきシンデレラ体重がわかるようですが、幸せを手にした「シンデレラ」とは程遠く、幸せな未来を壊しかねない危険性をはらんでいます。管理栄養士の立場から解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

痩せすぎの体型が美しい? シンデレラ体重とは

女性

ダイエットにいそしむ女子高生の間で流行り始めている「シンデレラ体重」。この指標は本当に女性を美しくしてくれるのでしょうか?

シンデレラ体重とは、ダイエット中の女子高生の間で、流行はじめた「理想体重」です。身長(m)×身長(m)×20×0.9という計算方法で、算出されます。
これをBMIで考えると、その数値は「18」。病気のリスクが低いBMI数値は22~23。これに対して理想的なシンデレラ体重は「BMI=18」ということです。

果たしてこの体重、本当に理想的といえるのでしょうか。

標準体重・美容体重・シンデレラ体重の計算方法・求め方

一口に「理想体重」と言ってもいくつかの計算方法があります。

最も有名で昔から使われているのは、厚生労働省が出す「標準体重」でしょう。これは成人を対象として、身長と体重の比率であるBMIを基準とした考え方でBMI22~23の時に心不全・脳梗塞等のリスクが最も低いことから、健康的な体重であるとされています。小児の場合は、成長過程でもあるのでBMIの概念から外れやすいので「発育曲線」を使って標準体重を推測します。

次によく聞かれるのが「美容体重」です。美容体重もBMIを使った指標です。美容体重ではBMI=20のときの体重を理想とする考え方です。街を歩いている10代・20代の若い女性たちはこのくらいの人が多いのではないでしょうか。以下に、理想体重の一覧を示します。一言で理想体重といっても、大分違いがあることが分かると思います。
理想体重

3つの理想体重

それぞれの計算式も以下に載せますので、詳しくはご自身の身長で計算してみてください。
  • 標準体重(厚生労働省発表)(kg)=身長(m)×身長(m)×22
  • 美容体重(kg)=身長(m)×身長(m)×20
  • シンデレラ体重(kg)=身長(m)×身長(m)×18

太りすぎの罪、やせすぎの罠?

女性たちを中心に、強い「やせ願望」を持つ人は増えています。彼女たちは「やせる」ことで、以下のようなメリットがあると考えているようです。

  • 体が軽くなることで活動的になり、運動しやすくなる
  • 運動することで健康的になり、肌荒れや便秘が減る
  • メタボなどの病気のリスクが減る
  • 新しい洋服を買う時に選択の幅が広がる
  • おやつや甘いものを買わなくなるので金銭的にもよい
  • 他人から「デブ」と言われるなどの嫌がらせを受けなくなる
  • 精神的に明るくなる
もちろん太りすぎはよくありません。これは健康を害するためです。ダイエットは本来、そういった「太りすぎ」で起こる病気に対して予防することが目的のひとつです。そのように考えれば、これらの動機は決して間違っておらず、いずれも動機としては十分だと思います。

動機はよいのに、「目標」の設定を間違えてしまっている人が多くいるのではないでしょうか。

「活動的な身体を手に入れる」ことが目的であるならば、「活動をするためのエネルギー」は身体に蓄えている必要があります。ところが、ダイエットにいそしむ若い女性たちの目標体重は明らかにやせすぎです。活動のためのエネルギーが蓄えられていないため、運動しようという気持ちになれないほどの低体重であることも珍しくありません。

平成25年「国民健康・栄養調査」では20歳代女性の5人に1人が「やせ型」であると指摘されています。

今の「見た目」で、未来の「私」を犠牲にしないために

このような「やせ型」の女性がそのままの栄養状態を保ったまま将来妊娠したとき、どのようなことが起こるか…産婦人科の医師らも懸念しています。

2500グラム未満で産まれてくる子どもを低出産体重児と言いますが、今、低出産体重児は10人に1人の割合です。10%……多いですよね。産まれてくる子どもが102万人くらいなので、1年で10万人です。こういった子どもたちが健康に過ごせるかと言われると、非常に厳しい側面があるのが現実です。発達障害の子どもを見ると、精神面だけの問題ではなく、糖尿病・高血圧・心筋梗塞のリスクが高くなり、寿命も短くなりやすいといったハンデを負っていることがわかります。

生まれてくる子どもたちの健康や病気の元が決まる時期は3つです。
  1. 精子と卵子が受精した時
  2. 妊娠中
  3. 乳児期・子育ての時期

特にお母さんが妊娠に気づく前の受精後2週間くらいの間に、インプリント現象といって遺伝子がその子ども特有の遺伝子に変化していきます。この間に母体の栄養状態が子どもに大きな影響を与えることは言うまでもありません。

繰り返しになりますが、今、若い女性たちの健康状態は必ずしもよいとはいえません。栄養状態が望ましくない母親の状態は、子どもにも影響してしまうのです。極端なやせは本人のみならず、将来もつ家族への影響も大きいといえます。体重が軽いことが自慢になるというのは見た目以外のことをあまりにも疎かにした勘違いにすぎないことを、改めて警告したいと思います。
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