防災/防災関連情報

震災5年目に想う、変わったこと変わらないこと

今年もまた3月11日が近づき、東日本大震災から5年目という節目の年になりました。被災地以外の多くの人達にとっては、すでに遠い昔のことになっていることと思いますが、震災直後から気仙沼に住む親類の家に寝泊まりし、被災地を巡った自分にとっては、まるで昨日のことのようにも思えます。日本の災害史上最大級の広範囲の被害、被災者、そして今だに続く大量の長期避難者をもたらしたこの災害を、もう一度見直してみましょう。

和田 隆昌

執筆者:和田 隆昌

防災ガイド

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津波で打ち上げられた船ももう解体されてその姿は無い。

東北の復興は果たして進んでいるのか?

2011年3月被災直後に訪れた東北の沿岸は、津波によって破壊された建物と、圧倒的な大量のがれきの山が続く、全く人のいない、虚しい荒野にすぎませんでした。それが2年目、3年目ともなると、がれきの山は消え、壊れた建物や陸に上がった大型船はきれいに撤去され、その分だけ、雑草の生い茂る空き地が目立つ場所になっていました。そして4年目、5年目となった今は、道のほとんどが整備され、昨年、流された石巻線が開通し、被災した女川駅などが新しく再開業するなど明るい話題が続きました。

一方で、東北の本当の復興は、始まってもいないという意見もあります。県外への避難民は福島県を中心に、未だに昨年度末で18万人を超えています。仮説住宅に住む人もまだまだ数多く、県外への避難・転居者数も福島・宮城だけで5万人以上になっています。元々、減少傾向にあった東北地域の人口は、震災後、仙台などの一部の都市を除き、広範囲に人口減少が加速していて、新装した女川駅のある女川町では、震災後、全人口の3割におよぶ3000人もが減少する事態となっています。

日本列島全体に広がる「震災リスク」

東北の沿岸地域を、今、車で眺めて回っていると、地域によって差はあるものの、どこもかしこも山を削り、かさ上げをして高い土地を作り、津波を防ぐべく、膨大な予算を投じて、高い壁をまた張り巡らせる工事を行っています。もちろんそれには一定の効果は期待できるのですが、防災に「絶対」がない以上、以前のように人や企業が戻って来るという保証はありません。もう二度とあのような震災が発生しないわけではなく、いずれまたあの津波がやって来るということを皆がまだ知っているということでもあります。本当の復興には程遠い現実がそこにはあります。

さて、関東周辺では最近、震度3から4の比較的大きな地震が続いています。その地震といわゆる「首都直下型地震」発生の関連性は無いとされていますが、歴史上、関東周辺での大型地震の発生は一定期間の間に必ず起きているもので、時限爆弾のように、今は「その日」に向かってカウントダウンしているにすぎません。さらに研究者の間では、西日本を中心とした海溝型の巨大地震発生のリスクも日に日に高まっているのも現実であり、日本列島は巨大な「災害リスク」にさらされているのだ、ということを忘れてはいけないのです。

首都直下型地震と東海地震のリスクと対策


海岸沿いで進む対策と住民の対応

震災後この5年で、東北地区では海への視界をも遮るほどの巨大な津波防波堤の建設計画が進む一方、「防波堤では津波を防げない」と判断して「避難計画の改善」を選択して進めている自治体も増えています。

昨年、関東近県の複数の自治体の津波避難計画を聞き取り調査したところ、震災以降、防災計画を全面的に見直し、津波浸水地域を周知徹底させ、新たに設定した「避難場所」への避難時間の短縮を進めています。津波防災は基本「高地移転」「高地避難」しかリスクを下げることができません。それでも津波の二波、三波が多くの命を奪った現実から、短時間での避難行動が命を救うのは確実です。

太平洋沿岸の各県では避難が遅れがちになる高齢者などの高地移転を進める一方、比較的安価な津波避難タワーや、海岸沿いの地下シェルターなども建設が予定されています。住み慣れた土地を離れがたい住民の高地移転は進まない所が多く、住民意識の改革が必要と思われます。

スマートフォンの普及と災害対策

5年間で震災の予知技術が格段に進歩した、ということはありません。いまだに地下数キロ~数十キロの場所で発生する地震のメカニズムはあまり分かっていないというのが現実です。しかしあの震災によって防災に対する多くの知見が与えられたということもまぎれもない事実です。多機能化が進むスマートフォンの普及とともに、各人が様々な防災情報を入手し、使いこなすことができるようになれば、いざという時に、被災者になるリスクを軽減することが可能になります。

東日本大震災ではTwitterなどのSNSの有効性がクローズアップされましたが、今のスマートフォンはラジオや懐中電灯の代わりにもなり、たとえインターネットにつながらなかったとしても、必要な地図をダウンロードしておけば利用できるなど、非常時の最大のサバイバルツールとして使用できます。地震発生や津波情報など、各種の警報を入手できるようにしておいた上で、地元以外でも避難場所を確認することもでき、速やかな避難行動をするには欠かせないツールと言えるでしょう。またバッテリー切れに備えて、常日頃から予備のバッテリーチャージャーなどを用意しておくことも大切です。
非常用ラジオで災害時に正しい情報を入手しよう

忘れてはいけない災害対策

地球上で、過去発生しているM6以上の大型地震の、およそ2割が周辺で発生しているという特殊な環境にある日本列島。この小さな島国に住む以上は、どの場所にいても、この後「大地震」に遭遇する可能性が多大にあると考えて間違いありません。そして巨大地震は歴史上、「静穏期」と呼ばれるあまり起きない時期と、「頻発する時期」が交互に現れるとされています。そして日本はその後者の時期に入っていると多くの研究者が考えています。5年前にあったからしばらくはないだろう、と思うのは大きな勘違いなのです。まず自分が出来るのが耐震性の高い、安全な家に住むこと。家族のためにも、水と食料、十分な備蓄を用意しておくこと。自分の住む場所がどんな自然のリスクにさらされているのか、自治体などのハザードマップで確認し、何が出来るかを考えること。この震災の発生時期だけでも、ぜひ家族で話合っておくようにしてください。

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