部屋探し・家賃/賃貸物件の情報収集術

絶対失敗したくない人の東京賃貸探し本音の鉄則5カ条

たいていの人にとって不動産会社とのやりとりは日常的なものではない。当然分からないことも多いはずだが、それを乗り越え、安全、快適な部屋にたどり着くまでに最低限知っておきたいことをまとめてみた。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

路線図+地図で最初に予算と場所を決める

住まいを借りる場合、最初に決めなくてはいけないのは予算と場所。予算は収入、仕送りなどから逆算すれば決まるが、難しいのが場所。土地勘のある場所で探すならいざ知らず、初めて東京で探すとなると範囲が広いだけにどこが良いのか、見当が付けにくい。一般的には通勤地、通学地を起点にできるだけ通いやすい場所を探すというやり方を取り、路線図を参考にするケースが多いが、もうひとつ、参考にして欲しいのが地図。路線図だけで見ていると探しているエリアが首都圏のどこにあるのかが分からず、そこで相場を見誤るケースがあるからだ。
スカイツリー

首都圏の家賃は冬型の気圧配置同様、西高東低と言われる。東側エリアにあたる下町エリアでは家賃は安め(クリックで拡大)

賃料は当然だが場所によって違う。特に首都圏はその差が大きく、同じ大手町から30分の場所でも路線によって相場が違う。路線図だけ見ているとその位置関係が分かりにくいのだ。非常に簡単に言うと、都心部では山手線内が高く、そのうちでも中央線の南側、六本木や表参道、霞ケ関などがあるエリアが最高値。山手線外側では首都圏西側の神奈川、都下へ向かう沿線の賃料が高く、そこから時計回りに安くなっていく。だから、もし、新宿勤務の人が都下に向かう西側エリア、中央線沿線で探していて予算が合わないとしたら、北側、埼玉方面に向かう埼京線で探したら見つかるなどということがあり得るわけだ。
多摩川から望む二子玉川

多摩川を挟んで二子玉川と二子新地では家賃は大きく異なる(クリックで拡大)

同じ沿線ではもちろん、都心に近いほど高く、遠くなれば遠くなるが、途中で自治体が変わるとそこにも賃料の差が生じる。たとえば東急田園都市線の二子玉川駅は世田谷区で都内にあるが、多摩川を越えたところにある二子新地駅は川崎市にあり、賃料はワンルームマンションで1万円以上違う。地図を眺めればどこから安くなりそうかも分かるわけだ。山手線内、外も賃料差があり、「下町と言われるので谷根千は安いと思っている人も多いが、山手線内で大手町から10分以内。根津、千駄木ともそれなりに高いんですよ」(コムガーデン尚建・徳山明さん)。イメージで考えるのではなく、地図で考えようということである。
隅田川

川の近くには散歩が楽しい、視界が開けていて気持ちが良いなどいろいろなメリットもあるが、地盤が弱いなどデメリットもある(クリックで拡大)

防災を気にする人もやはり地図を見て探して欲しい。首都圏では台地、丘陵が比較的安全な土地と言われるが、首都圏の場合、武蔵野台地は多摩川から荒川までの間となっているように台地の境は川であるケースが多い。また、地図を見ていれば、川、海との距離も分かる。

→賃料相場のざっくりした解説はこちらから。
図と歴史で読み解く首都圏の住宅価格
→台地、丘陵の位置はこちらで確認。
安全な街選びの第一歩、首都圏の地形を知る

相場は7万円でも7万円の物件がない場所もある

おおよそのエリア、沿線を決めたら、その地域の相場を調べたり、物件情報を見るなどの作業をすると思うが、そこで注意したいのは相場は目安にはなるが、絶対ではないということ。相場とは平均値である。その額で絶対借りられますという数字ではない。

たとえば相場が7万円の地域だとしても、1万円から15万円まで幅広い物件が大量にあって相場が7万円の地域と、6万5000円から8万円の物件がいくつかあるだけで相場が7万円になっている地域では7万円で探しても違う物件が出てくるのは当然である。安くて古い物件が多い地域に新しくて、すごく高い物件ができ、その中間が相場となっていた場合、平均価格である相場の物件はないということすら考えられるのである。
デザイナーズ物件

いわゆるデザイナーズ物件は相場よりやや高めなことが多い(クリックで拡大)

また、同じ7万円の物件でもA駅では18平米で築30年のワンルームアパート、B駅では25平米、新築マンションが借りられるなど、同じ予算で同じワンルームといっても幅があり、かつワンルームと言っても13平米から数十平米までの部屋がある。7万円という条件は満たしていたとしても、希望する広さではない、設備がないということも多々あるわけだ。部屋探しでは時として予算以上の物件を勧められることがあるが、悪意の場合を別とすると、予算以外の条件を満たそうとした結果、予算が上がってしまうというケースも少なくないのだ。
古いアパートの和室

古い木造アパート、しかも和室だと安くなることが多い。畳のサイズが大きかったり、天井までの収納があるなど住み心地的にはプラスの要素もあるのだが(クリックで拡大)

特に初めての部屋探しではワンルームと言った時に、古い木造、和式トイレの部屋をイメージする人は少ないが、現実にはそうした部屋もありうる。予算通り、住みたい街で物件はある、でも物件が考えていたものと全く違うというのは、実際の部屋探しでよくあるケースである。その場合、どうするか。

「場所を取るのか、スペックを取るのか。それによって選択は違ってきます」とは前述の徳山さん。住まい探しの三大条件は予算、場所、物件のスペックだが、そのうちで予算は大きくは変えられないはずだから、それ以外のどちらを譲歩するか。部屋探しではその優先順位をつけておくこと。どちらも手に入れたいは現実的にはあり得ないことが多いのである。

情報源はどこの会社も同じだが、不動産会社はどこも同じではない

1990年にレインズ(Real Estate Information Network System 不動産流通標準情報システム)が登場、不動産会社が扱っている物件の大半は業界内のシステム内で公開されている。一部、その会社だけしか扱っていない物件もないではないものの、全体としては、どの不動産会社でもおおよそ同じ情報を基に商売をしていると言っても良い。●●駅、家賃7万円、24平米のワンルームという入力をすれば、どこの不動産会社でも「基本的には」同じ物件情報が出てくるというわけだ。

だが、「基本的には」というには理由がある。言われた通り、キーパンチャーとして聞いた条件だけを入力する不動産会社であれば、何社訪問しても同じ結果しか出てこないだろうが、部屋を探している人とのやりとりからその人の優先順位を考え、その人が見落としていた条件をアドバイスしてくれるような不動産会社だったらどうだろう。「不動産会社は本来はフィルターのようなもの。やりとりの中で相手が考えていなかった、本当に探している部屋の条件を引き出し、アドバイスし、それに合わせて探すのが仕事です。数字のようなハード情報以外も考慮して探します」。

もちろん、●●駅、家賃7万円、24平米の条件だけが合致していれば、それ以外はどうでも良いと言う人であれば、不動産会社はキーパンチャーでも問題はない。だが、そうでないとしたら、もう少し不動産会社を選んで、プロならではのアドバイスをしてくれる人をパートナーに部屋探しをしたいところである。

難しいのはその見極め方。ひとつ、分かりやすいのはその会社が賃貸の仲介だけをやっているのか(客付け)、それとも大家さんから直接依頼され、管理その他の業務もやっているのか(元付け)という点を調べることである。不動産会社の仕事と聞くと、消費者からは店頭で接客して下見に行く、契約するという部分だけしか想像できないが、実際にはその前にも、後にも仕事がある。

たとえば、周囲の物件の賃料を調べて妥当と思われる賃料を算出したり、不動産の写真を撮影、ネットに掲載したりも仲介手数料の対象となる仕事である。だが、店頭以降の仕事しか見ていないと、なんで、自分が探した物件を案内しただけなのに仲介手数料を取られるのかと思うが、ネットに出る以前から仕事をしていたと考えると、意味合いは違ってくるだろう。
商店街

元付けの会社のほうが地域に密着、地元情報に詳しいことが多く、商店街の様子など住んでからの生活に役立つ話を聞けるはずだ(クリックで拡大)


契約後の仕事もある。建物の維持管理や清掃といったハード面から、入居者の家賃滞納に対処したり、苦情を聞いたり……。会社や契約によってやる内容は異なるが、仲介以外に管理をやっている会社は入居者を決めるだけでなく、その人が入居している間中、大家さんに対して責任を持たなくてはいけない。それに対して、仲介だけをやっている会社は入居者を決めるだけが仕事である。だから、極端に言えば周囲に迷惑をかけそうな人であろうが、家賃を滞納しそうな人であろうが、どんな人でも早く決めてくれれば良い。時間をかけて相手の話を聞いたり、アドバイスをしたりはしないわけだ。それにそもそも仲介だけをやっている会社は物件について深い知識がないことも多い。これに対し、大家さんから直接依頼されている会社は地元密着型の会社が多く、地域情報も期待できる。

もし、入居後の満足度を考えるのであれば、私は仲介以外の仕事もやっている不動産会社を勧めたい。なぜなら、物件探しは契約時がゴールではなく、スタート。本当に良い部屋だと思うのは、入居後だし、退去時だろう。そこまで快適、安全に暮らすためには管理は重要。「分譲ではよく管理を買えと言いますが、賃貸も実は同じ。変な隣人に悩まされたり、故障した設備がいつまでも修理されない生活をしたくないなら、管理に着目していただきたいですね」。

元付けの会社の探し方だが、ウェブで気になる物件があった場合は掲載している会社のホームページを見てみよう。そこで管理の話は一切書かれていない、物件情報しか掲載されていなければ客付けの会社である可能性が高い。また、東京宅建協会の会員不動産会社が作っているハトさん(ハトマーク東京不動産)のサイトは元付けの会社の情報のみが掲載されている。同ホームページには元付けの意味が詳しく説明されてもいるので参考にしてほしい。

また、数は多くはないが、ホームページを見ると紹介、リピーターが多いことを謳っている会社もある。仲介中心でも、こうした会社であれば納得できる仕事をしてくれる可能性は高いと思われる。

担当者が「その部屋」を勧める、3つの理由を見抜く

希望していた物件がすでに決まっていた場合などで、不動産会社から他の物件を勧められることがある。そこでその物件が希望していた物件よりも良いなら問題はないが、なんでこれなの?という場合もあるだろう。そんな時には3つの理由が考えられる。

ひとつはそれを決めると不動産会社が儲かる場合。ご存じのように不動産仲介は契約が成立した場合に賃料に応じて仲介手数料を受け取ることになっている。だから、賃料の高い物件を勧めることがあるが、それともうひとつ、広告費、ADなどと呼ばれる、借りる人とは関係ないところで動くお金がある。それが付いている物件だと、その分不動産会社にお金が入ることになるので、営業マンによってはADの付いている物件をより強力にプッシュすることがある。特に前述の仲介のみをやっている会社の場合にはその可能性が高い。

この仕組みについて簡単に説明しておこう。前述したレインズは物件情報を公開し、どこの不動産でも入居者を決めることができるようにしたものだが、それをやるとひとつの物件で入居者が決まるまでに大家さんから頼まれた不動産会社、お客さんだけを紹介した会社の2社(場合によってはもっと!)が関わるケースが出てくる。だが、不動産会社は仲介手数料として賃料の1カ月分しかもらうことはできない。1社が全部やっていた時代には1社で1カ月分だったものが、2社関わるようになっても1カ月。これでは仲介会社は立ちいかない。
不動産会社店頭

以前は家賃の2カ月ずつが相場だった礼金、敷金も減り、礼金はゼロ、敷金でも2カ月はブランド力のある地域や新築など強みのある物件に限られるようになっている(クリックで拡大)


同時に市場が変化し、貸し手市場から借り手市場になり、借りてもらうためには応分の広告が必要になってきてもおり、そうした諸々の事情から大家さんが広告費を出すようになり、それを関係した会社が按分するという仕組みになってきているのである。最近ではなかなか決まりにくい物件に対し、大家さんなどが余分に広告費を出すこともあり、その有無、つまり自社に入るお金の多寡でお勧め物件を決める会社、担当者もいる。つまり、自分の都合で勧めているわけだ。

二つ目の理由はそれが自分で管理している物件だからというもの。不動産会社は大家さん、入居者の間にいる存在で、どちらをお客さんと考えるかは会社によって考えが違う。管理を任されている場合、不動産会社には大家さんから定期的に管理費を払われており、それをして大家さんを自分にとってのお客さんと考える不動産会社は少なくない。その場合、不動産会社は他の物件に先んじて自分のお客さんの物件を進める。入居者にとっての良し悪しよりも、自分のお客さんの損得が優先されるのである。

もうひとつの理由は本当にそれがその人にとって良いと思ってのことだが、お勧めの利用がどれなのかを知るためには素直に「どうしてこの物件を勧めるんですか?」と質問をしてみることだろう。そこで、他の物件との違い、その物件の良い点などが具体的に説明されるのであれば、本当にお勧めなのだろうし、曖昧な答えだった場合には前2つの理由という可能性がある。
徳山さん

地域で働く不動産会社のための勉強会などを開き、不動産業界の底上げに取り組む徳山さん(クリックで拡大)


こうした場合に限らず、物件を紹介されたら、それに対してメリット、デメリットを聞いてみるのは良い物件にたどり着くための常道。「最近はこの物件のデメリットはどんな点ですか?と質問する方が出てきています。さらに、『徳山さんが思うデメリットはなんですか?』と聞かれたら、この人は本気で探しているなとうれしくなりますね」。不動産会社も人である、その人をプロとして尊敬する姿勢で臨めば、より良い物件を探してもらえるというものである。

仲介手数料ゼロと更新料無し、本当にお得なのはどっち?

仲介手数料の安さを売りにする不動産会社が増えているが、それがお得かどうかは自分が望むもの次第。仲介手数料は物件紹介料というだけではない。情報提供その他きちんとしたサービス及び入居後の安心、快適さ、責任などを求めているのか、金銭的な安さを求めているのかである。特に注意すべきは契約書の中身と徳山さん。入居後に何かあった場合にそれが是か非かをジャッジするのは契約書だが、それがきちんとしているかどうかということである。ただ、その点で判断をしようとすると契約時に至るまで分からないことになるため、率直なところ、判断できないというのが現実だろう。その不動産会社、担当者の説明などが信頼できるかどうか、そうした点で判断するしかないのかもしれない。

もうひとつ、注意したいのは本当に安くなるのかという点。仲介手数料は半額あるいはゼロだとしても、他社では不要な鍵の交換代などの出費がある、実は家賃自体が相場より高めなどということもあるからで、契約期間2年間及び契約を更新して住み続ける場合の総額を出してみる、近隣の類似物件と比較してみるなどして本当にお得になっているかを考えてみる必要はある。

ところで安さという点で一般の人が疑問に思うのは、空室が続いている部屋ならなぜもっと安くして貸さないのかということだ。地域の同等の物件の賃料が6万円だとして、それでは借り手がいないとしたら、5万円なら借りる人もいるだろうに、どうして安くしないのか。これは安くすることで安いんだから、部屋を汚くしてもいいやと思う人や滞納する可能性がある人が入居するのを防ぐためである。

入居者が決まらないと賃料は入らないが、その人が部屋を汚くして退去したとすると大家さんはそれをキレイにして次の人に入ってもらうために多額の費用を投じなければならなくなる。月5万円で2年間(24カ月)住んで120万円の家賃を受け取ったとして、その部屋を改修するために150万円かかるとしたら貸すだろうか。あるいは入居後すぐから滞納が始まり、その人に退去してもらうために法的手段に訴え、精神的、金銭的に面倒なことに巻き込まれるなら貸すだろうか。そうした懸念があるため、大家さんは極端な値下げを避けたがるのである。

では、最近少しずつ見かけるようになった更新料無しという物件はどうだろう。これは更新時に更新料を払うなら住み替えようと思う人がいるため、更新時の退去を防ぐための方途。仲介手数料ゼロがとにかく入居してもらいたいという発想であるのに対し、更新料無しは長く住んでもらいための発想であり、個人的には長く住むつもりがあるならこちらのほうがお得だろうと思う。ただし、この場合にも更新料以外の名目での支払いがないか、総額としてお得になっているのかなどは検証してみる必要はある。

ちなみに退去時には原状回復の問題があるが、これを抑えるためには6年住むのが一番お得。というのはきちんと国交省のガイドラインに従って床、壁などの償却をした場合、6年経つとそうした部分の価値はほぼゼロになる。そのため、減少した価値を原状回復の名目で補填する必要がなくなるため、その他に故意・過失などで毀損した部分がなく、清掃費用を負担するなどの特約がない場合には敷金のかなりの部分が返却されることになるからである。

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