不眠・睡眠障害

自分の不眠は自分で治す!8週間の睡眠行動療法-1

よく眠れないのだけど、薬は飲みたくない……。そんな方のために、不眠症治療の専門医である渡辺範雄医師が書いた『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』をご紹介します。不眠に対する認知行動療法は、睡眠薬よりも効果的である場合があります!

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

睡眠薬よりも効果的な不眠の治療法

認知行動療法

病院で受ける治療と同じことが、自宅でできます

病院やクリニックで行う不眠の治療は、睡眠薬をのむことだけではありません。薬を使わない不眠治療の一つに、「認知行動療法」があります。認知行動療法は、考え方を変える「認知療法」と、行動パターンを変える「行動療法」が一つになったものです。

不眠に悩む本人の自主性が大切ですが、認知行動療法は不眠に対して大きな効果があります。特に寝つきの悪さについては、睡眠薬を飲むよりも良くなることが分かっています。他にも、夜中に目覚める時間が減り、睡眠時間全体が長くなります。

不眠症に対する認知行動療法は、睡眠の役割や不眠のメカニズム、眠りやすい寝室環境や好ましい生活習慣、眠れないときの心がまえや対処法などを学び、少しずつ実行することで不眠を克服しようとするものです。

このように効果が大きい認知行動療法ですが、認知行動療法をきちんとやるためには、医師や臨床心理士などと毎週1回、1時間ほど会い、毎日の宿題をこなさなければなりません。不眠に悩みながらも通院の時間が取れないため、この治療を受けられない人がたくさんいます。

不眠に対する認知行動療法に詳しい渡辺範雄医師が、『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』という本を出しています。ここでは、この本の内容に従って、不眠症に対する認知行動療法のやり方についてご紹介します。

第1週:睡眠日記で自分の睡眠パターンを知る

睡眠日記

分かっているようで分かっていないのが、自分のことです

渡辺医師の短期睡眠行動療法は、1週間単位でいくつかのことを行い、8週間で一区切りです。まずはじめの4週間でやりながらやり方を覚え、次の4週間でそれを続けます。

毎日、やらなければいけない宿題もあります。それほど難しいことではありませんが、宿題をやらないと効果が出ないのでがんばりましょう。

はじめの週の1日目には、「睡眠日記」について学びます。睡眠日記には、次のことを毎日、書いていきます。

  • 寝床に入った時刻
  • 寝床から出た時刻
  • 寝つくのにかかった時間
  • 夜中に目覚めた回数
  • 寝ついてから寝床を出るまでに目覚めていた時間
  • 夜に飲んだアルコールの量
  • 今朝の気分
  • 昨夜の睡眠の質
  • 昼寝した時間

毎朝、目が覚めたらすぐに、前の夜のことを振り返って記録しましょう。時間がたつと、忘れてしまったり面倒になったりして、続けられなくなるからです。あまり詳しく書く必要もありません。寝つくのにかかった時間などは本人にはわからないので、およその時間を書きましょう

時刻を記録する必要がありますが、寝床に入ったら時計は見ないようにしてください。実は「夜中の○時に目が覚めた」とか「△□分間も眠れなかった」などという思いが、不眠をひどくしているからです。自分の感覚で記録しても、正確な時刻とさほど違いませんから、安心してください。

第1週:本当に眠っている時間を計算する

睡眠サマリ

睡眠日記を書くだけでは、効果が半減です

睡眠日記を記録したら、「睡眠サマリー(まとめ)」を計算します。睡眠サマリーでは、「総臥床(がしょう)時間」と「総睡眠時間」、「睡眠効率」を出します。

総臥床時間は、【寝床から出た時刻】から【寝床に入った時刻】を引いて、分単位で表します。総睡眠時間は総臥床時間から、【寝つくのにかかった時間】と【寝ついてから寝床を出るまでに目覚めていた時間】を引きます。

睡眠効率(%)は、総睡眠時間を総臥床時間で割って、100をかけた数字です。この睡眠効率は、寝床で横になっていた時間のうち、どのくらいの割合で実際に眠れていたかを表します。

第1週:寝室の環境や生活習慣を見直す

生活習慣

悩みごとは、寝床に持ち込まないでおきましょう

本書には、「健康な睡眠のための10か条」が掲げられています。できていないことがないか、チェックしてください。

  • 睡眠時間は人それぞれ。翌日の昼間に眠気で困らなければ、それで十分
  • 定期的に運動しよう
  • 寝室を快適にして、光や音が入らないようにしよう
  • 寝ているあいだ、寝室を快適な温度に保とう
  • 規則正しい食生活をして、空腹で眠らない・眠る前には水分をとりすぎない
  • カフェインの入ったものは、午後3時を過ぎたらとらない
  • 寝る前の2時間や夜中は、アルコールをとらない
  • 寝る前の2時間や夜中は、喫煙をさける
  • 昼間の悩みを、寝床にもっていかない
  • 眠ろうとして頑張らない・夜中に時計を見ない

10か条のチェックリストのうち、今はやっていないけれどできそうなことを、1~3個えらびましょう。それを実行することが、今週の宿題です。毎朝、睡眠日記を書くときに、その宿題ができたかどうか考えて、○・△・×で記録します。

第2週以降の睡眠行動療法はこちらのページでご紹介します。


【関連サイト】
『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』 渡辺範雄・著
「睡眠日誌」で良質な短時間睡眠を実現! :オールアバウト・睡眠サイト
今すぐできる! 熱帯夜に負けない快眠法 :季節を問わずできる快眠のアイデア満載
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