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中家正博『Men Y Men』インタビュー!

新国立劇場バレエ団で日本初演を迎える『Men Y Men』。イングリッシュ・ナショナル・バレエで2009年に初演を果たし、話題を集めた男性ダンサーのみで描かれる異色作です。ここでは、キャストのひとりであり、2015/16シーズンよりソリストとして移籍入団した中家正博さんにインタビュー! 作品とバレエ団での展望についてお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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日本初演となる『Men Y Men』。リハーサルの様子はいかがですか?

中家>まず最初にオーディションを兼ねたリハーサルがありました。そこで選ばれたメンバーが、振付指導に来ているアントニー先生に動きからカウントまでひとつひとつ教わっていきました。ただ基本的に映像は見ていないので、なかなか伝わりにくい部分もあって……。ジョージ・バランシンもそうだったらしいのですが、ダンサーに映像を事前に見せないのが彼のやり方。映像を見てしまうと、そのダンサーの影響を受けてしまうかもしれない。たぶんそれを防ぐためなんだろうと思います。

最初の戸惑いは、やはり全体像が見えないことでした。古典や観たことのある作品なら、流れが何となくわかっているからある程度先が見えている。ただこの作品に限っては、“これどうなるんだろう?”“まだこれが続くのかな”と、戸惑う気持ちがすごく大きかったです。

加えてアクロバティックな動きも多いので、想像がつかない部分も沢山あって。“カンフー、カンフー”と先生がしきりに言っていて、何だろうと思っていたら、ひとりが逆さま、もうひとりが真っ直ぐ立った状態でペアを組んで側転する動きだった(笑)。ただ作品自体コンテンポラリーというよりはクラシック寄りなので、導いてもらえさえすれば自然と動ける部分は多かったですね。

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『Men Y Men』 リハーサル


キャストは全て男性で、男性同士でペアを組むシーンも多く登場します。やはり男性相手だと勝手が違うものですか?

中家>女性を持ち上げるのは慣れてますけど、男性を持ち上げるとなると勝手が違う。やっぱり男性って重いんですよね。僕は70kgくらいで、相手が65kgだと5kgしか変わらない。だけど不思議なもので、タイミングが合ってくるとあまり重く感じないんです。

乗せる方はもちろんバランスが大切ですけど、乗る方もただバンと乗ればいいという訳ではなくて。女性にいつも“怖くないから”とは言ってるけれど、いざ自分がジャンプで飛び込むとなるとやっぱり怖かったですね。僕は179cmで、精一杯手を伸ばした状態だと乗る方の視線は2mを超える。女性はすごく怖いんだろうなって改めて感じました。

やっぱり相手を信用するしかないのかなって思います。最初は“蹴っちゃったらどうしよう”なんて考えてたけど、思いきって行けば意外と大丈夫だったりする。日頃女性に“大丈夫だから飛びこんできて”と言ってるように自分も飛び込めばいいんだと考えたら成功して、それから怖さがなくなりました。

サポート側にまわるときも、女性相手のときと同じ感覚でいると重い分足が取られそうになるので、自分がいかに体重を逃がすかという部分でバランスを取るようにしています。“普段女性をサポートするときもこうやってみようかな?”と考えたり、いろいろ勉強になっています。

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『Men Y Men』 (C)Richard Haughton


作品にストーリーはあるのでしょうか?

中家>アントニー先生いわく、ストーリーというのはなくて、憂鬱なポーズであったり、それを払拭したりと、動きのなかに会話があるということです。全部で10分くらいですが、ずっと動きっぱなし。体力的な部分もそうですけど、何人かで“せーの!”とタイミングを合わせる場面も多く、一歩間違えるとアクシデントになりかねない。いかに冷静にいられるかが今の課題です。

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新国立劇場バレエ団公演『ラ・シルフィード』 (C)瀬戸秀美


リハーサル中の中家さんはムードメーカーのひとりですね。

中家>関西人だからではないでしょうか。もともと新国立劇場バレエ団には知り合いが沢山いたんです。特に仲が良いのは小口邦明くん。高橋一輝くんもそうですけど、ふたりとはワガノワ・バレエ学校で同期でした。留学生寮に住んでいて、高橋くんはルームメイトで、小口くんは隣の部屋。クラスは違ったけれど、日本人同士ということで自然と親しくなりました。バレエ団にはワガノワの先輩も沢山います。貝川鐵夫さんやマイレン・トレウバエフさん、西川貴子さん、最近入団された寺井七海さんもそう。

ワガノワには16歳から三年間留学してました。あの頃は将来について特に何も考えていなくて、とにかくロシアでやりたいことをやり尽くそうと思ってました。実際アカデミー・マリインスキー劇場公演『くるみ割り人形』の主演や卒業公演でもグラン・パ・ド・ドゥを3曲も踊らせてもらえたので、留学生にしてはフルコースの経験ができたと思います。

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新国立劇場バレエ団公演『くるみ割り人形』 (C)瀬戸秀美


ワガノワを卒業後はやはりプロを目指そうと?

中家>ワガノワを卒業して、まず地元の大阪に帰りました。でもそこで日本のバレエ事情を目の当たりにして、もうバレエは辞めちゃおうかな、と考えて……。出身スタジオである法村友井バレエ学校のレッスンを週1~2回受けさせてもらっていましたが、それほど真剣に取り組んではいなかったと思います。発表会のお仕事をたまにいただいて、あとはゲームばかりしてました。そんなときでした、ケガをしたのは。

ウォーミングアップでぴょんぴょん飛んでたらズキンときて、腰の椎間板ヘルニアになってしまいました。一ヶ月くらい寝たきりで、ごろごろしている間は“バレエ、辞めようかな”と考えてましたが、思いがけず回復しちゃった(笑)。そうしたらまた動きたくなってきて、結局稽古再開です。当時19歳でした。

あるとき小嶋直也さんと一緒にレッスンさせていただく機会があり、“どうせならもう少しちゃんとバレエをやらない?”と声をかけてくださったことがきっかけで、また改めてバレエに打ち込むようになりました。直也さんに半年ほどお世話になり、気がついたら牧阿佐美バレヱ団に入団していました(笑)。もし直也さんに声をかけていただいてなかったら、本当にバレエを辞めていたと思うので、とても感謝しています。


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