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ホテル業界の2015年大総括&2016年はどうなる?

インバウンド、民泊など話題に尽きなかった2015年のホテル業界。2016年もこの傾向は続き、「宿泊特化型」やラグジュアリーホテルが台頭していくと予想します。そして東京のど真ん中でオープンする日本旅館「星のや東京」がホテル業界に与えるインパクトは? 徹底分析します。

村上 実

執筆者:村上 実

ホテルガイド

話題に事欠かなかった2015年の観光業界

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ホテルオークラ東京の本館立替工事に伴う閉館も2015年の大きなトピックでした。

2014年に続き、インバウンド客に関する話題が多かった2015年の観光業界。メディアでも大々的にスポットが当たりました。また、国内でも北陸新幹線の開業や2016年伊勢志摩サミットの決定、明治産業革命遺産の世界登録など、話題には事欠かない状況でありました。

ホテル業界に目を向けると、日本初進出となる「翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都」の開業から始まり、「ホテルオークラ東京」の本館建替え工事による閉館、「帝国ホテル東京」の開業125周年などが注目を浴びました。ここでは、社会性も含めて2015年のホテル、観光業界全体を振り返ることにします。


社会現象となった2つの観光キーワード

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北陸新幹線の東京―金沢間開業により金沢などの観光地はにぎわった

2002年にビジット・ジャパン・キャンペーンで知られるようになった「インバウンド(訪日外国人旅行)」。観光業界ではなじみのある言葉ですが、一般的に知られるようになったのは今年からではないでしょうか。インバウンドとセットでメディアをにぎわせたのが、中国人観光客による「爆買い」。東京の繁華街などで、家電製品やブランド品を大量に買う姿に圧倒された日本人は多いと思います。

国内旅行者に限って言えば、3月に開業した「北陸新幹線(長野~金沢)」が注目を浴びました。東京と金沢が最短で2時間28分。首都圏からの日帰り圏内に入ったことで、開業直後から多くの国内旅行者が足を運びました。開業から半年経過したあとも、客足は衰えず。金沢市内の主要ホテルの10月の客室稼働率は対前年同月比で、11.9ポイント増、富山は8.1ポイント増、福井は2.2ポイント増となっています。「インバウンド」「北陸新幹線」の2つの観光関連キーワードは、2015年の流行語候補にノミネートされており、まさに2015年の社会だけでなく、ホテル業界の動向をも象徴するものでありました。


「民泊」解禁で激震が走った宿泊業界

JNTO(国際観光振興会)調べによると、インバウンド客が2015年1-10月期で過去最高の1600万人を達成。国が2020年までにインバウンド客2000万人達成を目指していましたが、早ければ2016年にも超える勢いがあります。

インバウンド需要の増加により、都心部を中心に、国内のホテルは予約が取れない状況が続いています。国はこの事態から、2014年4月から国家戦略的特区において、旅館業法に関する規制緩和を実施。いわゆる、個人宅を有料で貸し出す「民泊」を、安倍総理が力強く推進しているという状況。呼応するように、東京23区の一つ、大田区は民泊について新たな条例を制定することを発表。大田区が動くことで、いずれ東京23区でも民泊を条例に掲げるようになるでしょう。

しかし、この件に関しては、さまざまな有権者が旅館業法に照らし合わせると違法になるとの見方が多いわけです。

当のホテル・旅館業界も、民泊は大反対。消防法や建築基準法に照らし合わせても、個人宅が設備面でホテル・旅館の基準に達するケースは少ない。グレーゾーン をこのまま放置するのか、それとも新たな法整備をするのか、民泊は今後も注目を集めるテーマです。


2016年以降はホテル開業ラッシュが続く

さて、2016年はホテル業界にとってどのような年になるのかを予測してみましょう。

既に入手済の資料によると、今後、開業を予定しているホテル数は、287軒、4万4564室となります。インバウンドの攻勢と円安がダブル効果となって、恐らくは来年も引き続きインバウンドの攻勢は変わらないと思います。むしろ、東アジア域内では、日本の観光ポテンシャルはさらに高まるものと予想できます。なので、絶対的に不足している客室を増やす方向にあります。

まず、圧倒的にホテル計画が集中しているのが首都圏、インバウンドの王道である京都、そして沖縄(八重山諸島も含む)。首都圏では、まずは東京が2020年開催予定の東京オリンピックを時間軸にして、銀座、浅草、品川などで相次いでのホテル事業計画が目立っています。また、京都では高級外資系ホテルのラッシュに近い現象が。今後、アマン京都など、さらにインパクトのあるホテルブランドの開業も目途がついた模様。

一番に活況を呈しているのが沖縄。石垣リゾートグランヴィリオホテル・グランヴィラ(100室・11月)など注目のホテルも開業予定です。沖縄本島では普天間基地の辺野古移転が社会的な問題になっていますが、観光業界では一転、新ホテル開業のラッシュが続いていくと見られます。


ラグジュアリー市場と宿泊特化型が台頭

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2016年夏開業予定のザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町のロビー

次にホテル業態は「富裕層向けのラグジュアリー市場」と「ビジネスマン向けの宿泊特化型」が注目キーワードです。

ホテルはライフスタイルが反映されるビジネスで、景気が良い時期はホテル業界全体が底上げされ、特に海外と比べて伸び悩んでいたラグジュアリーホテルが台頭する傾向が強くあります。2016年は、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町(250室:夏)やフォーシーズンズホテル東山(179室・春)など、ハイエンドホテルが開業予定です。また、パークハイアット、フォーシーズンズ、ザ・リッツカールトン、アマンリゾートなどの開業計画も相次いでおり 、2020年の東京オリンピック開催まで、富裕層向けのラグジュアリー市場が活況し続けると見られます。

2015年のホテル業界は、円安とインバウンド効果で、ほぼ全国的に客室稼働率が高く、客単価もうなぎ登りの状況。国内のビジネス客からは、「政令指定都市」ではほとんど予約が取れず、客室料金も出張費の範囲を超えてしまう! そのため従来ビジネスホテルを利用していたが、これからはカプセルホテルなどにレベルダウンをせざるをえない、という嘆きの利用者の声が噴出しています。そうした傾向は2016年も続くと見られます。その中で、ますますアパホテルなどが代表する宿泊特化型のホテル業態は、より勢いを増していくでしょう。現に、来年の全国の新規ホテル開業の70%以上が、この宿泊特化型のホテル業態に集中しています。


旅館「星のや東京」がホテル業界に与える影響は

来年、注目を集めそうなのが「星のや東京」(84室)。その開業の地はホテルラッシュが続く東京・大手町。三菱地所が大手町の再開発の一環として、温泉を活用するとも噂される和風旅館の計画。運営は星野リゾートで、東京初進出になります。以前より星野社長は「旅館というビジネスモデルが、世界にも通用する高収益型の宿泊業態であることを証明したい」と意気込みを語っていましたが、東京のホテル激戦区における日本旅館がどのような結果をもたらすか、またホテル業界に与えるインパクトに注目していきたいです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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