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なぜネコは生イカを食べると腰を抜かすのか

「ネコが生イカを食べたら腰ぬかす」という言い伝えを聞いたことがありますか?これを掘り下げていくと、人間に共通する大切な情報にたどり着くことができます。ネコは生イカを食べることで体のビタミンB1が急激に分解され、足が立たない状態になる……。すなわちブドウ糖の分解速度が遅くなり、細胞のエネルギー発生が遅くなるのです。

小林 ひとし

執筆者:小林 ひとし

環境・健康ニュースガイド

「ネコが生イカを食べたら腰ぬかす」という言い伝えを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実は、おおむね本当の話です。この真実を掘り下げていくと、人間に共通する大切な情報にたどり着くことができます。

なぜ、ネコは生イカで腰を抜かすのか?

調べてみるとびっくりするメカニズムがありました。

生イカにはビタミンB1を分解する酵素(チアミナーゼ)が含まれており、ネコが生イカを食べることで体のビタミンB1が急激に分解され、足を立たせることができない(ネコが腰ぬかす)状態になるとのことです。

ネコにとってもビタミンB1は大変重要で、無くなると細胞のエネルギーが生産できない状態になります。つまり力が出なくなってフラフラ状態になるという訳です。ビタミンB1が不足する大変さををネコの身をもって実感できますが、食べたネコはとてもかわいそうです。

ですから、実験などは絶対にしないようにしてください。

Vitamin-B1 & Cat

我輩にはビタミンB1が大変重要である


なぜビタミンB1不足になると力が出ないのか

人間や動物が食べ物を食べてエネルギーを作る工程に関係があります。食物は体内で分解されエネルギーの源となるブドウ糖が作られます。このブドウ糖からエネルギーが生産される訳ですが、その際にはブドウ糖自体が分解されなければなりません。まず、ブドウ糖はビタミンB1の協力でアセチル・コエンザイムAに変換され、そのときに全体の5%のエネルギーが出来ます。その後アセチル・コエンザイムAがミトコンドリアの中で分解されることで95%のエネルギーが生産されます。

すなわち、ビタミンB1が無いとブドウ糖の分解速度が遅くなり、エネルギーの発生が遅くなるのです。

ビタミンB1不足にならないために

ビタミンB1は水溶性のビタミンなので、水に溶けやすいうえ熱によって破壊されやく、調理でかなり損失されます。摂りすぎによる害はみられませんが、貯めておくこともできないのでいつも必要量の摂取が必要です。

ビタミンB1を多く含む食品は、豚肉、ハム、レバー、うなぎ、小麦胚芽や小麦粉などの穀類、大豆やグリンピースなどの豆類、種実類、などです。中でも豚肉は一度に食べられる量も多くビタミンB1自体の含有量も豊富なので、補うにはもってこいの食品です。

また、ニンニクに含まれるアリシンはビタミンB1と結合してアリチアミンという物質を作ります。

アリチアミンは熱に強く、長く体に留まってB1としての効果を発揮します。ネギ・玉葱・ニラにも同様の物質が含まれます。ニラレバがスタミナ不足に効くのもうなずけますね。

最後に……なぜ人間は生イカを食べても大丈夫なの?

生イカなどのチアミナーゼ陽性魚のチアミナーゼ含量は、筋肉などの通常の生食部分では相対的に少なく、人では心配するほどではないとのことです。内臓などを珍味として食用する時は、摂取が過量に過ぎないよう注意を払う事が望まれるとのこと。いずれにせよ食べすぎは要注意です。ネコの場合は体重も大変軽く、またビタミンB1欠乏に敏感であるがゆえ少量でも影響があるので、注意しましょう。


■参考文献
  • アノイリナーゼの研究 食品による栄養摂取障害の一例 : (5)魚類に含まれるチアミナーゼと関連疾患
  • ビタミンB1の作用 武田薬品

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