夫婦関係/夫婦円満のコツ

夫婦関係は痛みを伴って進化する

理想の夫婦とは、いつまでも新婚生活気分を維持している夫婦ではなく、ファミリー・ライフサイクルの変遷に伴う違和感や痛みを受け入れ、力を合わせてそれを乗り越え、常に関係性をアップデートできる夫婦なのです。

執筆者:おおた としまさ

心理学の教科書にも書かれている「産後クライシス」

理想の夫婦は変化していく

理想の夫婦は変化していくもの

心理カウンセリングで使用される家族療法の中に、「ファミリー・ライフサイクル」という考え方があります。ライフステージによって夫婦関係や家族関係が変化するのが当然であり、変化の際には関係性が不安定になったり、場合によっては痛みを伴うことも多いという考え方です。

まずは結婚していない若い成人が出会う段階。出身家族から自分を十分に分化させており、経済的にも自立した成人であることが前提です。次に、結婚によって家族を形成する段階。新婚生活は甘いだけではありません。些細な違和感、すれ違いの連続でもあります。それを乗り切るために、家族を形成していくことへのコミットメントが必要であり、自分と相手、それぞれの要望と期待のバランスを取ることが肝心です。以上の段階を「結合」の段階と呼んだりします。

次は子供が誕生し、成長し、家族として「拡大」する局面です。子供が誕生したら、当然のことながら新しい家族を受容し、愛情のこもった世話をし、親として責任を果たさなければなりません。しかしそのことに一生懸命になるあまり、大事なことを忘れてしまうことがあります。それがこの段階における落とし穴です。すなわち意識して夫婦関係を維持することです。

慣れない子育てに翻弄されると、親としての役割を果たすことばかりに気を取られてしまい、夫婦関係をおろそかにしてしまいがち。すると夫婦の間にすれ違いや違和感が大きくなり、結婚生活への不満が高まってしまいます。いわゆる「産後クライシス」です。この段階では意識して夫婦関係を維持する努力をしなければならないということが家族療法の教科書にも書かれています。

家族は「結合」「拡大」「収縮」の局面を経る

子供の成長に伴って、家族のライフスタイルはめまぐるしく変化します。状況に応じて柔軟に家族の形や夫婦の役割を変化させなければなりません。ときには仕事のスタイルを変化させる必要も生じるでしょう。そこで柔軟性が不足すると、夫婦の衝突にもつながる可能性もあります。

特に子供が青年期に達すると、親子の関係を保ちながら、徐々に手を離していくことが必要です。親子の葛藤も増えます。ときに親子で傷つけ合うこともあるでしょう。お互いの未熟な部分が露呈するのです。しかしそれも親子がお互いに成長するために必要な試練です。

子供が十分に成長し、自立をすると、家族は「収縮」の局面を迎えます。「空の巣」症候群などと呼ばれる状態になる親もいます。子供に振り回され続けた約20年が終わり、自分が何をしていいのかわからなくなってしまうのです。再び主体的に自分の行動を選択するように意識することも大切ですし、何より、夫婦を最重要とする関係を再確立する必要もあります。

さらに年を経ると、退職したり、体が不自由になったりという変化が待っています。夫婦だけでは支え合えなくなることもあるでしょう。子供たちに支援してもらう必要も生じます。しかしここまで夫婦が仲良く暮らせているなら、夫婦生活は大成功ではないでしょうか。


変化を受け入れる柔軟性と楽観主義が大事

以上のように、夫婦関係あるいは家族関係は、「結合」「拡大」「収縮」のライフ・サイクルを経て、「進化」します。各局面・各段階の変遷期には、夫婦関係も不安定になります。当然です。夫婦として初めての状況に際しているわけですから、夫婦の機能がうまく機能しないこともあるのです。

その結果お互いに対する不信感が生じたり、摩擦が増えたりもします。しかしそれらは新しい局面や段階に適応するために必要な「調整」です。たくさんの調整を経て、「この世に一つだけの夫婦の形」が形成されます。痛みを感じることもあるでしょうが、それは必要な痛みなのです。

その痛みから逃れるために、小手先でごまかそうとしてしまうと、夫婦関係が進化しません。それは問題の先送りでしかありません。いつかまた夫婦関係や家族関係がトランスフォームするときに、問題が露呈して、ごまかしきれなくなります。それがたとえば熟年離婚だったりするわけです。

ある研究によると、25年以上の結婚歴をもつ人々を対象とした調査の結果、彼らに共通する要素は、夫婦の間に問題がないことではなく、むしろさまざまな葛藤、あるいは不一致に遭遇しながらも、夫婦がジレンマを乗り越える希望を失わず、ある種の楽観主義を持ち続けていたことでした。

つまり理想の夫婦とは、いつまでも新婚生活気分を維持している夫婦ではなく、ファミリー・ライフサイクルの変遷に伴う違和感や痛みを受け入れ、力を合わせてそれを乗り越え、常に関係性をアップデートできる夫婦なのです。

子供の反抗期に似ていると思います。思春期の子供に反抗期があることを事前に知っているからこそ、私たちは反抗期ならではの荒っぽい言動にも冷静に対処できますよね。

それと同様に、ファミリー・ライフサイクルを理解しておくことで、違和感や痛みに襲われても、「あ、来たな」と、慌てることなく冷静に対処することができるようになります。不必要にお互いを傷つけ合わなくてすみます。知ることが大事です。

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