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相次ぐマンション転落…置き去りにされた幼児の気持ち(2ページ目)

頻発するマンション高層階からの子どもの転落事故。置き去りにされた子どもたちは、なぜ手すりを乗り越えてしまったのでしょうか。心理的・身体的理由を両面から解説します。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド


パパやママが見えなくなったとき、子どもの心にはどんな感情が起こる?

置き去りの子ども

置き去りにされた子どもは、どんな心理状態になるの?

ほとんどの事故が、親が子どもをおいて外出中だったという、ほんのわずかな時間で発生しています。親がほんの5分や10分程度、マンションの下の階へゴミ出しに行って近所の人と話をしていた、あるいはちょっと近くのスーパーへ買い忘れの品物を買いにいった、家族の忘れ物を届けに走り出たというような一瞬の隙の出来事です。

親が出かける際に、上の子に下の子を見てくれるよう一声かけたような場合でも、上の子が目を離している間に下の子が自分から窓を開けてベランダの手すりを乗り越えてしまった例もあります。たとえ「上の子」であっても、子どもは子ども。下の子どもを監督してと任せても絶え間なく注意を払えるわけではなく、荷が重い場合も多いでしょう。

親の姿が見えなくなったとき、子どもにはどのような心理が起こるのでしょうか。まず、親が「ちょっとだけだから待っていてね」と一声かけたことが抑止になると思ってはいけません。そのときは「はーい」と返事をしたり、一声かけられたことを記憶しているにせよ、ドアが閉まった瞬間に改めて不安に駆られたり、または何か予期せぬことが起きて親が必要になったり、あるいはふと単純な好奇心からだったりで、親を探そうとします。


子どもであるとは、脳も体もアンバランスであるということ

子どもの発達のアンバランス

知恵と器用さがある一方で、空間や因果関係は認識していないのが子ども

3~5歳ごろの、それなりに手足の力や指の器用さも発達した幼児ならば、そういった「親を探さなきゃ」という考えに突き動かされるようにして、それまで大人がしているのを観察していたとおりにクレセント錠を開け、ベランダの近くに置かれた物を足がかりにして手すりによじ登り、「親の姿があるはず」と「下界」を覗き込もうとします。

ですが、そこにたどり着くまではたまたま可能なほどに成長はしていても、重力というものがいかに残酷なものであるか、高さというものがどれほど恐ろしいものであるかは理解しておらず、また身長に比して頭が重いために重心の高い自分を支えるような腕力ももちろんないのです。

つまり、幼い子どもとは、このように発達の度合いが非常にデコボコでアンバランスな状態だということを大人は強く意識している必要があります。「親の言うことに素直に返事できる」一方で「ドアが閉まった途端、大きな不安に駆られ」たり、「クレセント錠を開け、わざわざリビングから自分用の幼児椅子を手すりの下に運び、手すりによじ登る、びっくりするような器用さと知恵を見せる」一方で「その高さから下を覗き込んだらどういうことになるかという空間や現実の認識はできていない」のです。

>>>「高所平気症」という現代ならではの心理
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