住宅ローンの借入/住宅ローンの基礎を学ぼう

ボーナス併用の返済プランがローン破綻の第一歩!?

現在の住宅ローン金利は、かなり低い水準。さらに消費増税も控え、今のうちにマイホーム購入をと考える世帯も多いでしょう。低金利の恩恵を受ける半面、住宅ローンの資金計画が甘くなってしまうことも。特にボーナス併用の返済プランには要注意です。ボーナスに頼った資金計画はローン破綻のリスクを抱えることになります。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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ボーナス返済は「できるだけ少なく」が鉄則

ボーナスを住宅ローン返済に充てる際の注意点を見ていきましょう

ボーナスを住宅ローン返済に充てる際の注意点を見ていきましょう


住宅購入の資金計画を考える際、一番大事なのは、住宅ローンはいくら借りられるかではなく、毎月いくらなら返せるかということです。

現在支払っている家賃並みなら大丈夫なのか、住宅購入のために毎月積み立てていた貯蓄分も上乗せして考えればいいのか、いろいろな計算の仕方はあります。年収で考えるなら、年間の返済額は収入の何割までなら大丈夫なのか、という視点もあるでしょう。

でも、ローン破綻しないためには、住宅購入後の家計をシミュレーションした上で、毎月いくらなら返せるかを試算してみるべきです。

ボーナスが安定的に支給されるなら、住宅ローンの何割かはボーナス返済を併用してもいいと思います。ただし、ボーナスは企業業績に左右されるものなので、増額されたときをベースにするのではなく、たとえば、ここ数年での最低ラインで考え、そのボーナス金額から、いくら住宅ローンの返済に回せるかを計算してみるほうがリスクは少なくなるでしょう。
 

同じ金額を借りた場合、ボーナス返済の割合でどう変わる?

まず、毎月返済可能額から、いくら借りられるかを見てみましょう。
 
毎月返済額から借入可能額を試算する

毎月返済額から借入可能額を試算する



たとえば、毎月10万円ならムリなく返済できる、としたら、35年返済の場合で借入可能額は3266万円。これに頭金を加えた額が、購入できる物件価格の上限ということになります。仮に500万円を頭金として加算できるなら、約3750万円までの物件なら、ムリのない返済プランになるということです。

しかし、現実はどうでしょうか。気にいった物件は4500万円だった。頭金はこれ以上出せないから、住宅ローンでなんとか不足分を上乗せできないかと考えていませんか? 毎月返済額は、もう少し頑張れるんじゃないか、ボーナスからも返済すれば、もう少し借りられるんじゃないかと。

毎月13万円の返済なら、借入可能額は4245万円に増えます。頭金500万円を加えて4745万円。これなら希望の物件に手が届きます。でも、毎月3万円の増額は、家計破綻につながりかねません。現状と同じレベルの生活を維持すると思っていても、住宅購入後は、水道光熱費といった基本生活費は増える傾向にあります。いくら節約すると言っても限界があります。毎月返済がムリなくできる金額を多く見積もることは、非常に危険なのです。

それでは、ボーナス返済を併用すると、どうなるかを試算してみましょう。

上記と同じ条件で、金利1.5%、全期間固定金利、35年返済。毎月返済額は10万円とします。

ボーナス時返済10万円・・・・年収負担率28%、借入可能額3809万円
ボーナス時返済15万円・・・・年収負担率30%、借入可能額4080万円
ボーナス時返済20万円・・・・年収負担率32%、借入可能額4352万円
ボーナス時返済25万円・・・・年収負担率34%、借入可能額4623万円

毎月返済額10万円で、ボーナス時に15万円を加算して返済すれば、借入可能額は4080万円になり、これに頭金500万円を加えれば、4580万円。希望の4500万円の物件が購入できそうです。
 

ボーナス返済を併用する際のリスクを知っておこう

しかし、ボーナス時には毎月返済分の10万円と合わせて、計25万円を住宅ローン返済に回さないといけないのです。年収500万円の場合の年収負担率は30%になり、年収の3分の1が住宅ローンに消えるのです(住宅金融支援機構の年収基準では年収400万円以上の場合35%以下なので、基準はクリアしています)。

毎月の収支がトントンでボーナスは貯蓄に回す、という家庭も多いでしょう。また日頃、節約している分、ボーナスを旅行資金に充てたり、大型家電、家具の買い換えに使ったりと、ボーナスなりの使い方をしていた家庭も多いでしょう。それが、住宅を買ったとたん、ボーナスの使い道にローンの返済を加えなければなりません。何かを我慢しないといけないのです。ボーナスから住宅の頭金として貯蓄していた分をローン返済に回せばいいだけだから、プラスマイナスゼロでしょう? という家庭もあるかもしれません。

しかし、住宅は購入後にもお金がかかるものです。固定資産税をはじめ、マンションなら管理費、修繕積立金など、賃貸住まいではかからなかった費用が発生します。こうしたことも踏まえた、毎月返済額、ボーナス時の返済額を設定しなければ、あっという間に赤字家計へと転落してしまいます。特にボーナス返済は、予定していたボーナスの額より少なかったためにローン返済ができない、という事態も想定すべきです。

決して、ボーナス併用返済を利用すべきではない、ということではありません。負担の少ない金額を決めて、上手に活用するようにしてください。
 

金融機関のシミュレーションや販売会社の返済プランは考え方が逆!

ここまで、読んできて、違和感がある人は、何度か資金計画のシミュレーションをしたことがある人かもしれません。ボーナス返済は借入額の何割、という設定をデフォルトでシミュレーションしているからでしょう。金融機関や不動産販売会社でのシミュレーションの多くは、次のような流れで提案されることが多いのです。

1 希望購入価格―頭金=住宅ローン借入額
2 住宅ローン借入額のうち、ボーナス返済に回す借入額は何割?
3 毎月返済額はいくら、ボーナス時返済額はいくら

というプラン提示です。ここで出てきた額を返せるか、返せないかで判断してしまうのです。試しに、前述の例でシミュレーションしてみましょう。

1 希望購入価格4500万円-頭金500万円=借入額4000万円
2 借入額4000万円のうち、ボーナス返済分は1000万円
3 毎月返済額9万1855円、ボーナス時返済額18万4146円

という結果になります。この結果を見ると、なんとなく返せそうと思ってしまうかもしれません。

しかし、本来は、

1 毎月返済額はいくらなら返せるか? 
2 加えてボーナスから、いくらなら返せるか? 
3 合計して、借りられる住宅ローンはいくら?

そして、
4 借りられる額+頭金=購入可能額

と、考えなければならないのです。

1 毎月返済額は10万円
2 ボーナス時は10万円
3 借入可能額3809万円  
4 3809万円+頭金500万円=4309万円

これが、買える物件価格の上限になり、そういう物件選びをしたほうがいい、ということです。

シミュレーションはいろいろなパターンでできますが、ボーナス返済ありきで、「借入額の何割をボーナス時の返済にしますか?」というフレーズに惑わされないようにしたいものです。

「ボーナス返済は難しいから毎月返済のみにする」、「ボーナスから5万円なら、10万円なら返せる」と、これまでの自分のボーナスの実績を冷静に見つめてローン返済に組み込むかどうかをジャッジするべきでしょう。

もしも、返済途中にボーナスが増えた、余裕資金ができた、となれば、その分を繰り上げ返済に回せばいいのです。身の丈以上の買い物をしてしまうと、返済に苦しむ生活を長く続けることになりかねません。ボーナスに頼った資金計画はローン破綻の第一歩と心得てください。

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