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中1ギャップとは?中学校生活でつまずくその原因と対策

勉強についていけるか、いじめにあったり不登校になったりしないか……など、子どもが中学生になっても心配は尽きないもの。「中1ギャップ」とは何らかのことが原因で中学校生活に馴染めないことを言います。「中一ギャップ」につながる3つの原因と克服対策ついて考えてみました。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

小学校に通っていたときは、成績もまずまずで性格も明るく元気な子だったのに、中学校に進学した途端、成績もふるわず元気もなくなってしまった。

このように何らかの原因で、中学校生活に馴染めない状態のことを「中1ギャップ」と呼んでいます。「中1ギャップ」に陥る原因、その傾向と対策について考えてみました。
中1ギャップとは、中一ギャップ

中1ギャップとは?原因と対策


<目次:中1ギャップの原因と対策>  

中1ギャップの原因1:同級生や教師との人間関係

中学校の多くは他の小学校からも新入生が入学してくるので、小学校時代と比べて同級生が増えることになるでしょう。この点に関しては、自分と気の合う同級生がいる可能性が高くなるので、メリットと言えるかもしれません。

中学校での人間関係でポイントになるのが、先輩・後輩関係です。思春期を迎えるにあたって、子どもの好みや感性も多様化します。ですから中学生になって、上下関係を意識し始める人が増えても不思議ではありません。いわゆる「目を付けられたり、いじめのターゲットになったり」ということにもならないように、わが子が日頃から節度ある言動ができるように気を配ってあげましょう。

教師との関係については、小学校教師は受容的な立場の指導が中心だったのに対して、中学校では評価的な立場の指導が中心になります。一言で言ってしまえば、中学校では厳しく指導されるケースが増えると言えます。

しかし、そうした経験が少ない子にとっては、なかなか馴染めない可能性があります。中には、ごくわずかではありますが、そういう中学校の雰囲気に馴染めないという理由で不登校になる子もいます。

ただ、最近になってようやく、このような小中学校間での指導のギャップを埋めようという動きもあるので、今後に期待しましょう。
 

中1ギャップの原因2:部活動や塾通いなどの生活リズム

小学校生活と中学校生活で大きく異なる点の一つに、生活リズムの違いが挙げられます。その背景に部活動があるわけですが、季節によっては、家に帰ってくるのが夕方7時頃なんてこともあります。その後で、学校の課題をやったり塾へ通ったりと、なかなか大変なスケジュールをこなす中学生も少なくありません。

とはいえ、中学生くらいになってくると、だんだん夜型の生活ができるようになるようです。ですから、小学生の時は9時頃に寝ていた子も、中学生になったら11時頃まで起きているという生活をしても問題はないようです。

ただし、どんなに遅くとも、夜12時前には寝させるようにしましょう。
 

中1ギャップの原因3:中学に入ったとたん成績が下がる?

「中1ギャップ」に関して、最も関心が高いのが勉強についてと思われます。確かに、中学校に入学して学習面でのつまずきは見過ごせません。

しかし、その前に知っておきたいある事情があります。それは小学校と中学校で成績のつけ方に大きな違いがあることです。

ほとんどの小学校では、通知表は「◎」「○」「無印」などの3段階で評価されます。しかし、中学校では「5」~「1」の5段階で評価されるのが一般的です。しかも、中学校の場合は、順位を出すところもあります。

現在、小学校では教育的な配慮から、通知表の評定欄を「無印」とするケースはほとんどありません。今、親の世代の方たちには考えられない傾向ですが、実はゆとり教育が本格的に始まった2002年以降、この傾向は特に顕著になりました。

そういうわけで、現在の小学校の通知表は「◎」か「○」の事実上の2段階評定と言っても過言ではありません。こうした事情から、小学校で「◎」の評価をもらっている子は中学校では「5」~「3」の評定を、小学校で「○」の評価をもらっている子は中学校では「3」~「1」の評定をもらう、というケースが最も一般的となるのです。

親御さんの中には中学校に入学したとたん、わが子の成績が悪くなったと思われる方がいらっしゃいます。しかし、それは多くの場合、勘違いの可能性があります。

理由はここまで紹介してきたように、小学生の間は「無印」のような良くない評価を子どもに付けるのはかわいそうという教育的配慮から、「◎」や「○」という無難な評価で済まされてきた可能性があるからです。これでは、つまずきがあったとしても見逃してしまいます。

一方、中学校では、5段階で「1」の評定がつくケースこそ希ですが、それでも容赦なく「2」や「3」の評定が付けられます。また、学校よっては点数順に順位が出るところもあります。これは小学校時代にはなかった違いで、わが子の成績が真ん中より上か下かが、一目でわかってしまいます。

つまり、小学校ではつまずきに対してオブラートに包むような無難な評価がなされることが多いのに対して、中学校では容赦なく「がんばりましょう」という評価が下されることが多いのです。

これこそが、勉強面での「中1ギャップ」の隠れた原因と言えるかもしれません。
 

中学校で勉強のやり方がわからないのは切実な問題

中1ギャップにならないための問題集の解き方から直しの仕方まで勉強のやり方がトピックス形式で具体的にわかる『中学生の「間違い直し勉強法」』

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小学校で教科化が始まった英語も、中学校では最初のうちは「Hello.」や「I’m from ~.」など簡単なものばかり。テストも難なくこなすことができたことでしょう。

しかし、6月ぐらいからは「play」や「have」など一般動詞も学び始めるため、早くもつまずきの兆しが。

英語でつまずかないポイントは、まずは英単語の読み書きができることです。アルファベット→ローマ字→フォニックスの順に習得していけば、少なくとも単語の読み書きで苦労することはありません。

算数から数学へと呼び方も変わる数学は、途中の計算式をていねいに書いていけば、それほど大きなつまずきにはならないはず。詳しくは、ガイド記事「中1の数学…正負の数や方程式の勉強法秘策で「中1ギャップ」克服!」で取り上げているので参考にしましょう。

中学校での勉強の仕方のポイントは、徹底して復習するだけです。それも、学校で配布される教科書対応の問題集を解くだけで十分です。ただし、その問題集の解き方も、ただやりっ放しではなく、解いたら丸つけ、丸つけをしたら間違い直しと、ていねいに間違い直しをすることが大切です。

本音を言うと、小学生の時から対策できていると良かったのですが、「中1ギャップ」は、中学入学後でも適切に対応すれば、難なく克服できる問題でもあります。

最後に、克服するときのポイントとして、「中1ギャップ」克服のためのチェックリスト32を作っておきましたので、早速試してみましょう。
 

中1ギャップ克服のためのチェックリスト32

<人と接したり、学んだりする姿勢に関すること>
□1.他人の話を聞く姿勢をとることができる
□2.敬語など、状況に応じて適切な言葉遣いで話すことができる
□3.正しい姿勢でいすに座ることができる
□4.勉強しやすいように、机の上のものを置くことができる ※1
□5.筆箱の中身をそろえることができる ※2

<生活リズムや習慣に関すること>
□6.毎日1時間以上、家庭学習(宿題)をやる習慣がある
□7.夜11時までには寝ることができる

<勉強に関すること(全般)>
□8.正しい姿勢で(利き腕でない手を添えながら)書くことができる
□9.箸、鉛筆や定規などを正しい持ち方で持ち、使うことができる
□10.他人に読める字で書くことができる
□11.持ち物や注意点など、必要なことをメモすることができる
□12.適切な速さと正確さで、板書をノートに写すことができる
□13.自分が書いた文字の誤字脱字の半分以上を、自分で見つけ、訂正できる

<勉強に関すること(国語)>
□14.国語辞典でわからない言葉を調べることができる
□15.主語と述語がわかり、助詞(てにをは)の使い分けができる
□16.ローマ字表記の9割以上が読め、身の回りのものを8割以上ローマ字で書ける ※3
□17.小学常用漢字の9割以上が読めて、8割以上が書ける
□18.教科書の文章を、ほぼスムーズに読むことができる ※4
□19.へん、かんむりなど、部首名とその意味がそれぞれ3つ以上言える
□20.有名な短歌や俳句などをそれぞれ3つ以上暗唱できる
□21.名文、四字熟語、ことわざ、慣用句などの暗唱経験がある

<勉強に関すること(算数・数学)>
□22.加減乗除(繰り上がり/下がりのある加減、九九など)ができる
□23.乗除と除法の意味がわかる ※5
□24.キロメートル→メートルなど基本的な単位の換算ができる
□25.基本的な図形や立体の図(見取り図)がかける
□26.四則の混じった計算ができる
□27.基本的な小数や分数の加減乗除ができる
□28.比や比例の概念がわかる

<勉強に関すること(社会)>
□29.日本列島や世界地図の簡単な地図が書ける※6
□30.47都道府県の位置と名前が8割以上わかる
□31.世界の主な国々の位置と名前が30ヶ国以上わかる
□32.縄文時代~平成まで、歴史の時代区分がわかる

チェックの数が半分以下の場合は要注意。8割(25個)以上を目標にしましょう。

※1.教科書類を左側、ノート類を右側、筆箱を右上に置く(右利きの場合)
※2.鉛筆を数本(あるいは、シャープペンと替え芯)、消しゴム、名前ペン(中太、黒色)、ボールペン(2色以上)、定規、蛍光ペンなど
※3.地名や人名が書けること。kippuのような撥音や濁音・半濁音、拗音などに注意
※4.極端に、読み間違いや読み飛ばし、詰まることがある場合は注意
※5.乗法は○個分や○倍、除法は○等分か・○個分か
※6.三角形など大陸や海岸線が直線的なものは不可


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