和菓子/和菓子関連情報

「今」を映す和菓子の集い。「山滴る、甘党市2015」

注目の新しい和菓子の作り手が京都に集合したイベント「山滴る、甘党市2015」。出会ったのは「今」という時代を映す、たくさんの和菓子でした。

原 亜樹子

執筆者:原 亜樹子

和菓子ガイド

和菓子の新しい潮流

ここ10数年、和菓子の世界に新しい動きが起きています。たとえば「とらや」による「トラヤカフェ」にはじまる、老舗発の和洋の垣根を越えた新ブランドの誕生。あるいは、百貨店のイベントから誕生した「本和菓衆(ほんわかしゅう)」(三越)や「ワカタク(若き匠たちの挑戦)」(高島屋)など、次世代を担う老舗和菓子店 店主たちの一致団結。

なかでも気になる潮流は、様々な切り口から和菓子の魅力や可能性を伝える新しい作り手たちの活躍。バックグラウンドも活動の場も異なる作り手が集ったイベントを訪ねてきました。

「山滴る(やましたたる)、甘党市2015」(京都・恵文社一乗寺店COTTAGE)

甘党市

「山滴る、甘党市2015」(於:京都・恵文社一乗寺店COTTAGE)。アートワーク・会場装飾は、長岡デザインの長岡綾子さん

2015年6月21日。人気の和菓子を集めたマーケット「山滴る、甘党市2015」が、文化の発信地として知られる京都・恵文社一乗寺店のイベントスペースCOTTAGEで開かれました。

実行委員は、大久保加津美さん(Black bird White bird)、松永大地さん(編集者・ライター)、詳しくは後述しますが発案者である西川葵さん(うめぞの)、そして内田美奈子さん(日菓)の4名です。

恵文社

恵文社一乗寺店


「今までにない新しいデザインや異業種とのコラボ企画などが話題となり、和菓子は若い人たちにも再注目されています。そんな今だからこそ人気の和菓子を集めた、気軽に足を運んでもらえるマーケットを開催したいと思いました。」として、「和菓子屋さんが食べたい和菓子」をコンセプトに16のお店と作家が一堂に会しました。

開店前からの長蛇の列には、一般の方に加えて和菓子店の方や関係者の姿もあちこちに見えました。ワークショップやトークショーも満席で大盛況の中、注目の出店者にお話をうかがいました。

「wagashi asobi(わがしあそび)」(東京・長原)

東京から出店した「wagashi asobi」は、6年間のNY勤務を含む20年の老舗和菓子店での職人歴をもつ稲葉基大さんと浅野理生さんによる創作和菓子ユニット。長原に店舗をもつほか、国内外のイベントや異業種コラボなど幅広く活躍しています。イベント等で生菓子を披露することはあるけれど、通常店に並ぶ商品は「ドライフルーツの羊羹」と「ハーブのらくがん」のみ。伝統的な製法にモダンなテイストを加えたものです。
ドライフルーツの羊羹

wagashi asobi「ドライフルーツの羊羹」1本2,160円(税込)


「パンに合う羊羹を」とのオーダーから生まれた「ドライフルーツの羊羹」は、北海道産小豆100%のきめの細かいこし餡に沖縄・西表島の黒糖とラム酒を加えて煉り上げたもの。ドライの苺と無花果、胡桃がゴロリと入り、切り口には幾何学模様が鮮やかに現れます。
ドライフルーツの羊羹

1cmほどに切った「ドライフルーツの羊羹」を、バターを塗ったバゲットにのせて。

丹念に煉られた餡の艶やかで滑らかなこと。そのまま楽しんでもよいけれど、バターを塗ったバゲットなどにのせると、作り手の意図するところが伝わります。和洋の香りの競演がパンを舞台にふわっと花開くよう。果実も木の実もお酒も、そして餡も、そもそもパンとは好相性。よく考えられているのです。

ハーブのらくがん

「ハーブのらくがん」1種類4粒入り360円(税込)

ローズマリーやカモミールといったハーブや果物、抹茶などを練り込んだ「ハーブのらくがん」は、色も香りも素材本来のもの。キメの細かい砂糖と、餅米から作る寒梅粉を使うため、雑味がなく滑らかな口どけです。小さなリーフ型で優しい表情ながら、香り使いの妙。「らくがん」の概念を覆すほどのインパクトがあります。

ベースに確かな技術と知識があるからこその美しい崩しと遊び。これからもその活動から目が離せません。

wagashi asobiの詳細記事→「wagashi asobi」待望の実店舗オープン!


<店舗情報>
■ 「wagashi asobi」 
所在地:東京都大田区上池台1-31-1-101
東急池上線「長原」駅 徒歩1分
Tel&Fax:03-3748-3539
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
地図:「wagashi asobi

「鍵善良房(かぎぜんよしふさ)」(京都・祇園)

300年近く前に創業した京都・祇園の「鍵善良房」。注文を受けてから作る「くずきり」は同店の代名詞。私も学生時代、初めてこちらの喫茶でくずきりをいただき、のど越しの良さや適度な弾力に衝撃を受けた覚えがあります。
あじさい

錦玉「あじさい」380円(税込)


甘党市で接客していたのは、現ご当主の今西善也さん。驚いた方もいたようですが、これが今回の甘党市の楽しいところ。「今の人が共感できる和菓子」を表現するのは、何も新しい作り手に限りません。
うつろひ

落雁「うつろひ」680円(税込)


2012年11月には、祇園町南側に「ZEN CAFE + Kagizen Gift Shop」をオープン。洗練された雰囲気の中、ZEN CAFEでは若手作家の器でお菓子が供され、はす向かいのギャラリー「空・鍵屋」では、展示やイベント等を開催。伝統を踏襲しつつも、若手作家たちと共に今の時代ならではの和菓子と和文化を発信しています。
飴雲

落雁「飴雲」780円(税込)。イメージは、お砂糖の水玉でできた甘い雲

甘党市には「若鮎」や「あじさい」など、意匠(デザイン)や菓銘(菓子の名)が分かり易い生菓子と、ZEN CAFE+Kagizen Gift Shop限定のモダンなデザインの落雁を並べた今西さん。

「鍵善の長い歴史の中で、それぞれの時代の当主が、昔のものも残しながら時代に合ったお菓子を作ってきたのだと思う。」と今西さん。「菓子は長いこと人の傍にあり欠かせないものでした。世の中のライフスタイルの変化に対し、和菓子も少し合わせてみても良いのでは。」

製法や材料など和菓子の伝統はそのままに、意匠や菓銘に今の時代を映すことで、若い人も気負いなく楽しめる和菓子になり得るのだと、ポップな意匠の落雁が教えてくれました。

<店舗情報>
■ 「鍵善良房」 
四条本店所在地:京都市東山区祇園町北側264番地
Tel:075-561-1818
Fax:075-525-1818
営業時間:9:00~18:00(菓子販売)/9:30~18:00(喫茶)※L.O.は混雑状況により変動
定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日)
地図:「鍵善良房

■ 「ZEN CAFE + Kagizen Gift Shop」 
四条本店所在地:京都市東山区祇園町南側570-210
Tel:075-533-8686
Fax:075-533-8228
営業時間:11:00~18:00(ZEN CAFE)/10:00~18:00(Kagizen Gift Shop)
定休日:月曜日(祝祭日の場合は翌日)
地図:「鍵善良房

次のページでは、「おやつ職人まっちん」と「粉匙」をご紹介します。

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