妊娠・授乳期の薬と健康/妊娠・授乳期の薬と健康

妊娠中・授乳期の便秘薬の使い方

妊娠中や産後は便秘になりやすく、時にはひどい腹痛、痔など、予想もしない経験をすることがあります。便秘の兆候のある方は、早めの対策を心がけましょう。妊娠・授乳期の便秘薬の利用法について解説します。

赤岩 明

執筆者:赤岩 明

妊娠・出産ガイド

妊娠中、胎児発育のために子宮の筋肉の緊張を抑えるホルモンが増えます。大腸も子宮と似た性質の筋肉(平滑筋)でできており、大腸の緊張が抑えられ便秘になりやすくなります。また、大きくなった妊娠子宮の圧迫で便が通過しにくくなります。産後は、会陰の裂傷や、痔、肛門周囲の痛みで排便しにくくなります。

便秘対策には生活習慣の改善が最も大事ですが、薬が必要な方もいます。便秘薬は妊婦健診で処方される機会が一番多い薬で、妊娠前から便秘症の人、妊娠して便秘になった人を合わせると3割以上の方になります。妊娠・授乳期の便秘薬の利用法について解説します。


妊娠・授乳期の便秘薬

便秘薬は自分の症状に合った種類、自分に適切な量であれば、妊娠・授乳期にも使用できますが、症状の個人差が大きく、ある人には合う便秘薬が、他の人には効き過ぎて危険ということも起きます。その判断は難しく、薬の特性を考慮し無難な量から試みます。妊娠前から便秘症だった方は、使用経験のある薬が参考になります。妊娠中の便秘薬の使用については決まった基準がなく、医師により治療方針も異なります。

便秘薬には、便を軟らかく体積を増やして排便しやすくする機械的便秘薬と、腸管の運動(ぜん動)を高める刺激性便秘薬があります。

機械的便秘薬
・塩類下剤:酸化マグネシウム(カマグ)、マグミット、マグラックス
腸管の中に水分を保持して便を軟化増大させる。習慣性が少なく妊娠中に最も使用される便秘薬で、同時に水分摂取を心掛けると効果的です。

・膨張性下剤:バルコゾル、バルコーゼ
水分を含んで膨張して排便を促す。習慣性がなく、かつては妊婦によく使用されましたが、「流早産を起こす恐れがあるので妊婦には慎重投与」と判断されてからは使用が減りました。以前からこの薬を使用している方の継続使用は可能です。

刺激性便秘薬
・大腸刺激性下剤:センナ、ヨーデルS、アローゼン、プルセニド、ピコスルファートナトリウム、ラキソベロン、ビサコジル
大腸のぜん動運動を高め排便反射を起こします。薬剤の効き目に個人差があるので、その人に合った適量であれば使用可能ですが、薬の作用が強く、習慣性があるため使用を控える医師もいます。使用経験のある方は医師と相談の上、継続使用は可能です。

漢方薬
漢方の便秘薬は、妊娠前から使用しており自分に合った薬は妊娠中も使用可能です。ただし、ダイオウ(大黄)という生薬は、大腸の筋肉だけでなく子宮の筋肉も刺激する作用があるので、ダイオウを含んだ漢方薬は使わない方針の先生もいます。一般的には、ダイオウを含んだ漢方薬であっても適量であれば、使用可能と考えられていますので、担当医と相談しましょう。

漢方薬の使用法については、Allaboutガイド 杏仁美友さんの記事が参考になります。   
大建中湯桃核承気湯防風通聖散

外用薬
・新レシカルボン坐薬
・グリセリン浣腸
以上は、妊娠中の頑固な便秘、宿便で腹痛のある場合などに医師の指示の上で使用されます。自己判断で常習的に使うのは勧められません。
この処置でも排便がない場合には、看護師や医師が直腸に指を入れて掻き出す「摘便」という処置が必要な場合もあります。

市販薬
市販便秘薬も、成分としては処方便秘薬と同じ物が使われています。市販薬を使い慣れている方は、担当医と相談してみましょう。同成分薬を処方される場合もありますが、生活習慣の改善と、他の便秘薬への変更が指示されることもあります。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※妊娠中の症状には個人差があります。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。体の不調を感じた場合は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。

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