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2015年4月からの年金、増額でも実質目減り?

平成27年度の年金額の改定が発表され、初めてマクロ経済スライドが適用されることになりました。年金額は増えても実質的に目減りです。ところで、今、保険料を負担している私たちの貰える年金額はどうなるのでしょうか? このままマクロ経済スライドを適用すると、2050年には……。

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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年金増額でも、生活は苦しくなる!?

平成27年は年金アップで実質目減り?

平成27年は年金アップで実質目減り?

平成27年4月からの年金額の改定が厚生労働省より発表され、前年度と比較し、0.9%の引上げとなりました。

平成25年、26年と、特例水準の解消(本来水準の年金額よりも多く支給しているのを平成25年から3年間で解消)のために、年金額が毎年減額になっていたため、久しぶりの増加となり、年金を貰う者にとっては、大変喜ばしいことでしょう。けれども、喜んでばかりいられないのが実情です。

※平成27年度の年金額の改定

※平成27年度の年金額の改定


厚生労働省の年金額の改定は、総務省の消費者物価指数の公表と同日に行われました。これは、年金額が、物価上昇率や賃金上昇率を加味して決められるためです。「平成26年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合)によると、物価上昇率は2.7%でした。これに対し、年金の改定率が0.9%……。年金額が増えても、それ以上に物価が上がっているので、昨年と同じ生活水準を保てないのです。

今までの年金は、基本的には物価に連動して、年金額が増減する仕組みでした。つまり、物価変動に影響されないで、老後を安心して暮らすことができる制度だったのです。ところが、平成16年の年金制度の改正で「マクロ経済スライド」が導入されことで、今までの年金の支給水準とは異なり、支給調整が行われるようになったのです。そのマクロ経済スライドは、物価が本格的に上昇した平成26年の状況を踏まえ、平成27年の年金額の改定で、初めて適用されることになったのです。

初めて適用される、マクロ経済スライドとは?

マクロ経済スライドとは、現役人口の減少や平均余命の伸びなどの社会情勢に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。マクロ経済スライドを導入しなければ、少子高齢化が進む日本では、年金の給付と現役世代が負担する保険料の関係で、現役世代の保険料負担が上昇し続けることになります。そこで、現役世代の保険料負担の上限を定めた上で、将来の年金給付と保険料収入のバランスを取るような仕組みを導入したのです。


※厚生労働省HP「マクロ経済スライドって何?」より転載

※厚生労働省HP「マクロ経済スライドって何?」より転載



年金額は、賃金や物価が上昇すると増えていきますが、一定期間、年金額の伸びを調整する(賃金や物価が上昇するほどは増やさない)ことで、保険料収入などの財源の範囲内で給付を行いつつ、長期的に公的年金の財政を運営していきます。5年に一度行う財政検証のときに、おおむね100年後に年金給付費1年分の積立金を持つことができるように、年金額の伸びの調整を行う期間(調整期間)を見通しています。

■物価上昇や賃金上昇から差し引かれるスライド調整率は0.9%
マクロ経済スライドによる調整期間の間は、賃金や物価による年金額の伸びから、「スライド調整率」を差し引いて、年金額を改定します。「スライド調整率」は、現役世代が減少していくことと平均余命が伸びていくことを考えて、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で計算されます。今回の年金額の改定では、スライド調整率は0.9%に設定されています。

前年の物価上昇2.7%、賃金上昇率2.3%だったので、賃金上昇率の2.3%からスライド調整率0.9%を差し引きます。平成27年の場合、そこから更に特例水準の解消分0.5%(本年のみ)を差し引いて、年金額の改定は、0.9%のプラスということになります。現役世代の賃金や物価上昇ほどに年金は上がらないということになるので、年金を貰っている人の生活はますます厳しくなるばかりです。

これまで、年金額の改定の仕組みについて見てきましたが、保険料を負担している私たち現役世代の将来の年金額はどのようになるのでしょうか?

>>保険料を負担している現役世代がもらえる年金は?

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