ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Star Talk Vol.22 松島勇気、一途な夢のその先へ

ダンスにおける「型」の美しさ、安定感はミュージカル界随一、の声も高い松島勇気さん。これまでも『キャッツ』等で目の覚めるようなダンスを見せてきた彼が現在、取り組んでいるのが『クレイジー・フォー・ユー』です。歌も芝居もふんだんなミュージカル・コメディの傑作、松島さんにとってはどんな作品でしょうか?これまでの軌跡も伺います。*観劇レポートを追記しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

松島勇気undefined神奈川県出身。5歳で『キャッツ』を観劇、劇団四季を志す。中学生からバレエを始め、全国舞踊コンクールundefinedパ・ド・ドゥ部門1位を受賞。2002年に劇団四季オーディション合格、2003年初舞台。『キャッツ』ミストフェリーズ『コーラスライン』リチー『ウエストサイド物語』ベルナルド、リフ役などで活躍している。(C)Marino Matsushima

松島勇気 神奈川県出身。5歳で『キャッツ』を観劇、劇団四季を志す。中学生からバレエを始め、全国舞踊コンクール パ・ド・ドゥ部門1位を受賞。2002年に劇団四季オーディション合格、2003年初舞台。『キャッツ』ミストフェリーズ『コーラスライン』リチー『ウエストサイド物語』ベルナルド、リフ役などで活躍している。(C)Marino Matsushima

“きっと恋がしたくなる”ミュージカルNo.1の異名を持つ『クレイジー・フォー・ユー』。1930年代のアメリカを舞台に、小粋に練りあげられた“ボーイ・ミーツ・ガール”ストーリー、誰の耳にも心地よいガーシュインの名曲の数々、スーザン・ストローマンによる斬新な振付と3拍子揃った、ゴージャスな「王道ミュージカル」です。

2月22日から始まる東京公演で、主役のボビー・チャイルド役に予定されているキャストの一人が、今回登場の松島勇気さん。劇団四季きってのダンスの名手である彼にはぴったりのお役に見えますが、4年前の初挑戦時には「なんて大変な役なんだ」と圧倒されたのだそう。どういった部分が大変なのか、ボビー役大解剖とともに、なんと5歳にして劇団四季を志したという彼の来し方、今の夢まで、たっぷりお話しいただきました!

自分の「夢」を定めるきっかけになった大切な作品
『クレイジー・フォー・ユー』

――『クレイジー・フォー・ユー(以下CFY)』は松島さんにとってどういう演目でしょうか?

「僕は小さいころから劇団四季の舞台を観ることが好きで、いつか入団することが夢だったのですが、それはまだ漠然とした夢でしかありませんでした。けれど高校生の時に『CFY』が日生劇場で初演されるということで、プレビューを観に行って、その場で“やっぱり四季に入りたい”と決心したんです。

作品ももちろん素晴らしかったですし、小道具を使ったダンスも斬新で面白かったのですが、なにより、俳優やスタッフのステージにかける思い、命がけというくらいの熱が伝わってきたんです。“なんて素晴らしい世界なんだろう。僕もこういうところで舞台に立ちたい”と思いました。そんなこともあって、とても思い入れの深い作品です」
『クレイジー・フォー・ユー』撮影:荒井健

『クレイジー・フォー・ユー』撮影:荒井健

――松島さんが演じるボビーは、NYの銀行の跡取り息子。不良債権の回収に派遣された砂漠の町で、ポリーという男勝りの娘に出会い、ひと目ぼれするも正体がばれて撃沈。窮余の策で劇場プロデューサーのザングラーに変身すると、ポリーは彼に恋してしまう。そこに本物のザングラーがやってきて更なるピンチが! ドタバタコメディの中に作り手たちの“劇場愛”が垣間見える素敵な作品ですが、松島さんは11年にこのボビー役を初めて演じたのですね。手ごたえはいかがでしたか?

「本当に大変でした。歌あり台詞ありダンスありコメディありのこの作品の中でも、ボビーは出ずっぱりでやることがとにかく多いんですよ。特に、コメディですので芝居にリアルな面白さがないと笑っていただけないのですが、このコメディというものがとても難しい。“間”とか言葉の発し方とか、いろいろな条件が重なって初めて面白さが出るということが初めて体感できた作品で、本当に難しかったですね」

――もともと英語のコメディを日本語で上演するにあたって、英語と日本語の言語的な違いもあるでしょうし、お笑いそのものの在り方も異なりますものね。その中で、どのようにお芝居を作って行かれたのですか?

「自分なりに作っていきたかったんですけど、なかなかそこまでたどり着かなくて、(以前この役を演じた加藤)敬二さんや荒川(務)さんのボビー像を追いかけるのに精いっぱいでした。今回はそのリベンジを、と思っていたんですが、今はまだ苦しんでいます(笑)。絶妙の間合いってどういうものなのか、とテレビでお笑いの番組を観たりして研究しましたが、例えば”1,2,3“と決まったカウント通りにやればいいものでもなく、その場の空気の間合いもある。やっぱりプロの方はうまいな、と思いながら、どういう間でこの台詞を言ったら面白いかなと毎日悩んでいます。“ここだ”というタイミングでしゃべった時の面白さだけでなく、『CFY』には結構ダジャレもあるんですよね。その面白さをどうお客様に伝えるかというのもあります」

――稽古のまとめ役である、加藤敬二さんに尋ねたりはなさらないのですか?

「もちろん尋ねればやって見せていただけますが、そのあとで“これは一つのやり方であって、お前はお前のやり方でいいんだよ”と仰います。『CFY』は初演が1993年なので今年で22年を数える訳ですが、これまでボビーを演じた俳優は4人しかいないんですよ。敬二さん、荒川さん、田邊真也さん、それに僕。参考にするのはいいとしても、ほかのボビーを追いかけるのではなく、自分で探して、松島勇気のボビーを作りたい。そこが進化していけたらというのが、今回の一つの課題ですね」

*次頁では松島さんが『クレイジー・フォー・ユー』の音楽や振付をどうとらえていらっしゃるか、また今回の公演の抱負を伺いました。
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