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ご褒美を習慣にすると子どもに何が起こる?

お子さんにおもちゃを買ってあげるのはどんな機会ですか? クリスマスや誕生日などのイベントでしょうか? それとも、何か大きな目標を達成したときのご褒美でしょうか?物にあふれる現代社会の中での育児の注意すべき点について、アメリカの研究とともにお伝えしていきます。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

やる気アップのためにご褒美制を使うと、子どもの心に何が起こる?

ご褒美を習慣にすると子どもに何が起こる?

「~~したら、○○を買ってあげるね」のようなやる気アップのためのご褒美は、子どもの心にどう響く

次から次へと新商品が展開する今の日本。おもちゃ売り場で、目移りするのは子供だけではありませんよね。大人も思わず買ってあげたくなるようなグッズもたくさんあります。でもその一方で、「あれもこれも買ってあげるのはよくないわ」と自制する自分もいたりします。

では、このようなおもちゃをご褒美として活用するとしたらどうでしょう? 「これでやる気がアップするのなら親子ともにハッピー。だから買ってOK」と自分にゴーサインを出しやすくなるかもしれません。

実際、「~~したら、○○を買ってあげるね」のようなやる気アップのためのご褒美は、子供の心にはどのように響くのでしょうか?
   

アメリカの研究で分かった3つのパターンとは?

アメリカの大学の研究で分かったのは、親が物に依存した子育てをすると、その子が大きくなってからも物に依存した生き方をしやすいということ。親から頑張ったご褒美に「物」をもらって育った人は、大人になって物質依存症になりやすいのだそうです。

今回の研究で悪影響と分かったのは次の3つのパターンでした。
  • 「100点を取ったら、あのゲームを買ってあげる」のように、なんらかの達成と関連づけたご褒美の場合
  • 親の愛情表現として物を買ってあげる場合
  • 罰則として、子供の好きなおもちゃを取り上げる場合
どれも意外となじみがあるパターンではないでしょうか?

「物」をこのような形で用いると、その子たちは大きくなって、人生の成功は何をどれだけ持っているかで決まる。さらには、欲しい物を物を手に入れることで自分の魅力がアップすると考える傾向が出てくるそうです。

これまでの研究でも、物で人の価値を測る傾向がある人は、結婚生活で問題を抱えたり、ギャンブルや借金をしたりするリスクが高まることが分かっています。物質依存するということは、それだけ消費も多くなるというのも一因でしょう。
 

物が豊かな時代だからこそ上手な付き合い方を

物質依存は物の豊かな現代ならではの悩み、親としてどう向き合うべき?

物質依存は物の豊かな現代ならではの悩み、親としてどう向き合うべき?

今の世の中を見渡せば、物で人の価値を測る場面はたくさん存在します。例えば、プロの世界。最も良い成績だった人が高額の賞金(報酬)をもらえるという仕組みがありますよね。それが当たり前の現代社会にいると、
  • 100点を取ったら⇒すごく大きな見返りが、
  • 90点だったら⇒まあまあ大きな見返りが、
  • でも70点だったら、もう見返りはないよ
こんな”現金な世界”に知らず知らずのうちに慣らされてしまっているのです。

この研究が示唆しているのは、親は子供に何も買ってあげるべきではないということではありません。今は魅力的な商品があふれていますし、親だったら、やっぱり買ってあげたくなるのが本音です。でも、物が豊かな時代ゆえのリスクが存在することも忘れてはいけないと思うのです。要は、目の前に沢山の商品が展開されている中で、親としてどう向き合っていくかがカギになります。

これまでの心理学の研究で分かっているのは、

物質的なご褒美は:
  • どんどんエスカレートすること
  • 効果や満足感に持続性がないこと
つまり、より高いもの、より目新しいもの、より貴重なものへと発展していかないと、満足できなくなってしまう。しかも、持続性がないので、もらったらそこで終了、そして次へ興味は移ってしまうというわけです。

親として大切なのは、やはり節度です。クリスマスや誕生日のようにイベントに力を入れるのも1つのメリハリになると思います。子供にとっても、節目にビッグなプレゼントの方が喜びが大きいはず。いずれにしても、子供が「もらって当たり前」となってしまうと、物でしか動かない子になってしまいかねないので、その一線に気をつけることがポイントです。
 

子供の心育に一番おすすめは物を介さない「ほめ」

親がご褒美を用いるケースは、「100点を取ったら、あのゲームを買ってあげる」のように、未来の達成へのモチベーションアップに使われることが多いのが現実。つまり、もっと頑張って欲しい、やる気を出して欲しいというときの秘策です。実際に「子供がやる気を出す」などの効果が得られやすいので、つい親もご褒美作戦を使いたくなりますが、子育て心理学的に見ておすすめの「やる気アップ」は、ご褒美ではなく、物を介さない「ほめ」。

私はこれまでにも多くの記事で、子供の「頑張り」や「やる気」に対する「ご褒美」や「ほめ方」の存在について述べてきました。そこでは、物を介さない「ほめ」やほめ方のコツについて詳しく触れています。この記事をお読みになって、そのカラクリや理由をもっと追及したくなったら、ぜひ下記の過去記事をご参照ください。


【関連記事】
*出典:Journal of Consumer Research(2015)「Material Parenting: How the Use of Goods in Parenting Fosters Materialism in the Next Generation」 より
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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