国際結婚/国際結婚アーカイブ

シアトル出身の若旦那さん。旅館の仕事は彼の“天職”

長野県の戸倉上山田温泉にある旅館「亀清」。シアトル出身の若旦那、タイラー・リンチさんと、奥様であり若女将の磨利さん家族が切り盛りしている素敵な温泉旅館です。今回はタイラーさんが、旅館を継いだきっかけ、そして実際のお仕事についてのお話です。

執筆者:シャウウェッカー 光代

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温泉旅館を継いだ若旦那。その仕事ぶりは?

長野県・戸倉上山田温泉にある温泉旅館「亀清」を切り盛りする、シアトル出身の若旦那、タイラー・リンチさんと、若女将・磨利さん。
前回の記事に引き続き、素敵な国際結婚カップルの暮らしぶりを、奥様である磨利さんへのインタビューから、ご紹介します。今回は、結婚しシアトルで暮らしていた夫婦が、長野の旅館を継ぐきっかけからのお話です。

<若女将・磨利さんへのインタビュー>

「旅館を継ぐ」と言い出したのは彼!

亀清旅館

亀清旅館の前に立つ、観光地への方向と距離を示す案内サイン。右上に「シアトル」も


――シアトルに住んで、結婚して……、向こうで11年間?

はい。でも、しょっちゅう日本に里帰りしていました。知り合ったのが日本だったので、アメリカはただタイラーがいたから行っただけで、あまり思い入れはなかったんです。向こうを離れる時も、それほど未練はなくて……。
だいたい国際結婚って、夫婦が知り合った場所で住むことが多いって言いますよね。

――タイラーさんが亀清旅館を引き継いでやりたいというお話は、どういう感じで出てきたんですか?

その後、父が亡くなって、旅館は母と伯母でやっていました。板前さんだけは雇って、忙しい時はパートさんに来てもらって、何とか切り盛りしていたんです。旅館の建物はいっさい手つかずで直さなかったのですが、今考えると、それがよかったのかも。変な時に直していたら、すごい借金を背負っていたかもしれませんから。

直さないまま現状維持でやっていたのですが、父が亡くなって、母は「どうしようか、やっぱりそろそろ廃業にしちゃおうか」と思っていたらしいですね。売って駐車場にするという話も出ていたのですが、それを主人が「もったいない」と言い始めて……。

その頃、私は“日本に帰りたい派”でした。彼は、私が帰りたいなら日本に帰ってもいいけど、それなら自分は旅館をやる、という条件を出してきたんです。逆交渉みたいな感じで。私は、旅館を継ぐのはヤダヤダってず~っと言ってたんですけど、でも日本には帰りたい。彼は「帰るなら旅館をやるしかない、じゃないと帰らない」と。

「あなた1人でやればいいじゃない」と言うと、彼は「自分にはその資格はない」と言うんです。私と一緒だからできるのだ、と。旅館ではなく他の日本企業に勤めたら?とも聞いてみましたけど、彼はアメリカで日本と取引のある企業で働いていたので、日本のサラリーマンがいかに過酷で大変かをよく知っていて、その中でやる気はいっさいない、と言いまして……。

――じゃあ磨利さんとしては、「しょうがない」と言ったら言い過ぎかもしれないですけど、そんな感じで?

そう、しょうがないか、と(笑)。
あとはもう彼のパワーですね。ひとりでどんどん準備を進めていました。

実はアメリカでもう家も買っていたんですよ。でも、売ってきました。シアトルがちょうどいい時期で、リーマンショックの前だったので、タイミングがよかったんです。やっぱりこういうことにはタイミングもありますよね。買った時は、これからシアトルが上がるという時期だったので、これもタイミング的によかった。

――お子さんたちはいかがでしたか?

3人のうち、上の2人の息子はアメリカで生まれて、下の娘はまだ生まれてなかったんです。日本に来る時は、いちばん上が5歳で保育園、真ん中がまだ2歳で「覚えてない」って。

――そのくらいでちょうどよかったかもしれませんね。小学校に入ってお友達ができて、向こうの学校スタイルに慣れてからだと、逆にきびしかったかも……。

そうなんですよね。

――シアトルには時々帰っているんですか?

年1回は帰っています。向こうの両親も来てくれますよ。今年は旅館の仕事が忙しかったため、いちばん上の息子が13歳になってやっと1人で行ける年になったので、彼だけ行かせました。

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