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バーボンの熟成ピークは何故早いのか/入門編

バーボンのラベルをご覧いただければおわかりになると思うが、ジャパニーズやスコッチに比べて熟成年数が短い。これはケンタッキーの気候風土、そして内側を焼いたバレルと呼ばれる小樽を使用している点にある。

協力:サントリー
達磨 信

執筆者:達磨 信

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気候と小さなオークの新樽が影響

ノブクリーク

ノブクリーク

バーボンウイスキーの樽貯蔵熟成年数がジャパニーズやスコッチに比べて短いのは何故か、と疑問に思われる方もいらっしゃるだろう。
前回記事「バーボンとはどんなウイスキーなんだろう/入門篇」で新樽を使用し、しかも樽の内側をカリカリに焦がすのがポイントとお伝えしたがそれだけではない。
まずケンタッキーの気候がある。四季があるのだが年間の寒暖差は激しく、さらには湿潤とされながらもジャパニーズやスコッチなどと比べると湿度が低い。比較でいえばケンタッキーのほうが乾燥しているといえる。寒暖差だが夏の1日の平均気温は31度以上にもなり、冬の最低気温は0度以下となる。
たとえば山崎やザ・マッカランなどのシェリー樽熟成。湿潤な環境のなか、約500リットルの大きなシェリー樽でじっくりゆっくりと熟成していく。そのまったく反対といえるのが小さな約180リットルのバレル(バーボン樽)で、ケンタッキーの気温差が激しく、ジャパニーズやスコッチに比べて乾燥したなか熟成させる。
もしケンタッキーで大きな樽を使用して熟成させたら、まず原酒の蒸散(天使の分け前)が激しく、欠減の問題でアタマを悩ますことになる。無駄に原酒を失うのだ。そして寒暖差が激しいなか熟成のピークも早まるということである。
こうした環境条件から見ると、バレルという小さな樽での貯蔵熟成はとても理にかなっている。オーク材のパワーがみなぎっている新樽のみを使い、メーカーの多くが樽の内面をアリゲーターといわれるワニ皮を連想させるほどに焼く。バーボン樽内面は実は焦がすというよりもカリカリに焼くのである。これによってオーク材成分の原酒への溶出も早くなり、独特のバニラ様の甘さを強く感じさせる。
だからジャパニーズやスコッチのように10年以上の歳月をかけてじっくりと貯蔵しなくても、バーボンは小さな樽を使い短い年数で深く熟成することになる。
これまの記事で何度も述べたが、「ノブクリーク」「ブッカーズ」「ベイカーズ」といったスーパープレミアムバーボンはとても長熟といえ、嫌味のないそれらの香味の深遠さは驚異的といえるだろう。クラフトマンシップが豊かな熟成感をもたらしているとしか表現しようがない。

ボンデッドによるクラフトマンシップの高まり

最後に「ノブクリーク/世界が認めるプレミアムバーボン」で述べたボトルド・イン・ボンド法について再度触れておこう。
これは1897年に制定された法律でいまはないが、当時は水で薄めた粗悪品や混ぜ物をしたイミテーションが市場を混乱させ、酒税という財政への影響も懸念されるほどになった。そこで1蒸溜所で1年のうちの1シーズンだけ蒸溜したものだけを樽詰めし、政府税官吏のもとで4年以上熟成、アルコール度数50%以上で瓶詰めをしたバーボンにかぎりボトルド・イン・ボンド、あるいはボンデッドと名乗ることができるという法律を定めた。この4年以上熟成によって、クラフトマンシップが発揮され、とても力強いバーボンが生まれていったのである。
スコッチウイスキーが3年以上の貯蔵熟成を法的に義務づけたのは1916年のことである。その理由のひとつとして第一次世界大戦の長期化による生産制限があった。ウイスキーが市場に出回るのを少しでも遅くしようとしたわけである。
品質面を考えての法制化はアメリカのほうが進んでいたのだ。
わたしが言いたかったのは、エイジングが短いバーボンをけなす人がいるが、熟成年数でジャパニーズやスコッチと比べないで欲しいということ。
しつこいようだが、バーボンウイスキーはアメリカが生んだ素晴らしいスピリッツである。

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