雑貨/ハンドクラフト・工芸

青森の手仕事・りんごかご

青森の手仕事の道具、りんごを入れるかごをご紹介します。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

かつて、青森のりんご木箱をご紹介したことがありました。そのときにふと目に入ったのが“りんごかご”。りんごの収穫に使われるという竹のかごです。丁寧に編み込まれた様子が気になってしまい、「次はりんごのかごを取材したい」「いつかりんごがなっているときに青森へ行ってみたい」などと書いていました。そしたら、なんと早くも念願叶って実りの秋の青森へ。りんごかごの工房を訪ねてきました。(今後もこの「青森手仕事シリーズ」は続けて行きたい意向!)

訪ねた頃はちょうどりんごが赤く実っているとき!!りんご畑はカラフルな赤にあふれていました。青空の下に、赤いりんごと緑の木々。まるで絵本の中の世界のようです。これは本気でテンション上がる。これを見るためだけに青森へ来る価値あり。りんごって、ほんとうにかわいくて、小躍りしてしまう。しばらく「わー!りんごりんご!」と無心に叫ばずにはいられませんでした。

りんご畑です。

りんご畑です。


どう見てもかわいい。

どう見てもかわいい。


無駄にたくさん写真撮ってます。

無駄にたくさん写真撮ってます。



ひとつひとつ手作りの丁寧に編まれたかご

かご工房は、たくさんのりんご畑に囲まれた場所にありました。小さな作業小屋があり、中に入ると職人さんが1人、黙々とかごを編んでいます。その手際の良さはすこぶる気持ちが良く、一定のリズムをもって、さくさくと編まれていきます。ちょっと話をしているうちに、みるみる出来上がっていきました。

かご職人の三上幸男さんは、かご作りを始めて60年以上という大ベテラン。青森県の伝統工芸士としても認定されています。元々この地域には、かご編みをする職人の工房が100軒を超えるほどたくさんあり、三上さんは制作よりも、そういった職人の作ったものを集めて販売する仕事をしていたそうです。それだけ農家がたくさんあり、このかごの需要も高かったんですね。

しかしプラスチックなど安い工業製品が出回るようになったときに、作る人がどんどん減ってしまいました。後継者もいなくなり、三上さんは奥さんと二人でかご作りから販売まで全てを一括で行っています。最近は娘さんが手伝い始めているそうなので、そのままこの手仕事を受け継いでくれたらなあ、とちょっぴり期待もしてしまいました。

三上幸男さんです。

三上幸男さんです。


話をする間も手を休めず。

話をする間も手を休めず。


気付いたら出来上がっていました。

気付いたら出来上がっていました。


竹はこの地域で採れる「根曲がり竹」という種類を使います。普通の竹よりずっと細いですが、寒い地方でも育つ丈夫な竹です。春に採取する若い芽はえぐみがなく山菜としてもおいしく頂けます(私も大好物です)。かごに使うのは、もっと成長したもので、三上さんは毎年10月下旬になると、岩木山の山の中に入り、自分で採りに行くそうです。採った竹は4つに割って厚さを揃え、均一にします。かご作りは、編むことよりもこういった下準備が結構大変です。

竹は適度に若い、青い皮の部分を使います。そのほうが、しなりがあって柔らかく、編みやすいのだそうです。六角形に編むのが、この地域らしい特長ですが、この編み方、なんと宇宙ステーションのアンテナの構造と同じなんだとか。たまたま偶然らしいですが、りんごにも宇宙にも、必要なことは一緒なんですね。ものづくりの普遍性。なんだか説得力があります。

こちらは採取してきたかごの材料、根曲がり竹。

こちらは採取してきたかごの材料、根曲がり竹。


竹を細く割って編める状態に細工したもの。

竹を細く割って編める状態に細工したもの。


壁に並ぶ姿がとてもきれい。

壁に並ぶ姿がとてもきれい。


竹はクッション性があり、りんごをラフに放り込んでも表面に傷が付きにくい。さらに軽く、丈夫で水に強く、耐久性にも優れています。農家の作業用として理にかなっており、全て自然のものを使っていて、道具として最適といえるでしょう。ただ、今はもうほとんどりんご用には作っていないといいます。(農家で見かけるりんご用のかごは、竹製ですが、縁のところに青いプラスチックのテープが巻かれているものが多いみたいです)。

三上さんの作るりんごかごは、どちらかというとインテリアとしての人気が高まっているようです。雑貨屋などからの注文が多いそうで、隣りの部屋には注文で作った商品が、各店舗ごとに分かれて、たくさん積まれていました。農家への需要が減ったことで、作る人は少なくなってしまったため、三上さんはまたまた大忙し。作っても作っても追いつかないといいます。

さらに奥の部屋には、様々な種類のかごが並んでいました。工房を直接訪ねた人なら購入することもできます。定番のりんごかご以外に、もっと小さなかごや、洗った食器を入れる茶碗かご、大きな脱衣かご、お酒を入れて持ち運べるような取手の付いた楕円のかごなど色々なものがあり、これは何に使うのかな?と想像するのが楽しいです。かごを手で触ってみると、思った以上にしっかりきっちりと丈夫に編み込まれており、しかし竹が持つ自然なしなりもあり、これは長く使えそうだなあ、と道具としての頼もしさを感じました。

いろんな種類が並んでいて楽しいです。

いろんな種類が並んでいて楽しいです。


根曲がり竹は、最初は青々としていますが、使っていくうちにあめ色に変化していきます。三上さんのところには、サンプルとして年季の入ったかごがたくさん展示されていました。年を経るほど色が濃くなり、青々しさとはまた違った味わいが出てきます。変化した様子を目の当たりにしてしまうと、自分のかごも育ててみたくなります。「欲しいというお客さんがいる限り、作り続けたい。」という三上さん。作る現場を見て、三上さんの言葉を聞き、このかごが一層愛おしいものになりました。

見本用として作品がずらっと並んでいました。こちらの色合いもいい感じです。

見本用として作品がずらっと並んでいました。こちらの色合いもいい感じです。


ふと目をやると事務机の上に不思議な形の大きな石が飾ってありました。タグが付いており、読んでみると「日本一周ドライブ1人旅記念」と書いてあります。ん??一人旅?三上さん、昔は行商としてもあちこちへ出かけていましたが、旅が好きで、今でも全国各地を回っているそうです。車に布団を積んで1人で運転して、1ヶ月近くすいーっと行ってしまうそうです。各地で出会う旅仲間との交流が楽しみなんだとか。とっても元気なおじいちゃんです!

旅の記念の石だそうです。

旅の記念の石だそうです。


三上幸男竹製品販売センター
青森県弘前市大字愛宕字山下71-1
0172-82-28470172-82-2847
※訪問時は事前に連絡を。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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