マンション物件選びのポイント/マンションの間取り

ペットと暮らすマンションの間取りの基本

「ペット可」「ペット共生」のマンションが増えています。ただ単に管理規約でペット飼育を認めたものから足洗い場やドッグランなど専用設備を備えたものまで様々です。今回はワンちゃんネコちゃんと楽しく暮らすための間取りのチェックポイントを見ていきます。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

ペットと暮らせるマンション

ペットと暮らせるマンションは増えているが、内容はさまざま

ペットと暮らせるマンションは増えているが、内容はさまざま

「ペット可」「ペット共生」などと呼ばれる、ペットと暮らせるマンションが増えています。一般的なマンションを「ペットの飼育を許可」としただけのものから、ペットのグルーミングルームやペット乗車中サイン付きエレベーターなど、専用設備を備えたマンションまでさまざまです。

今回は、特にマンションの間取りに注目して、ワンちゃんネコちゃんと楽しく暮らすためにどんな点に注意すべきかまとめます。

一般的なマンションの間取りで検証

今回例として取り上げる間取り【図1】は、標準的な3LDK、約90m2のファミリータイプの間取りです。これから間取りの検証を行いますが、図中の番号と下記の解説の番号を照らし合わせながらご覧ください。
【図1】マンション間取り例。3LDK,90m2のファミリータイプ

【図1】マンション間取り例。3LDK,90m2のファミリータイプ(クリックで拡大)


 

1.玄関が広く、近くにトイレと浴室があるか

お散歩あとの作業がしやすいように玄関は広めがいい

お散歩あとの作業がしやすいように玄関は広めがいい

ワンちゃんを飼う場合、お散歩しに外へ連れていく機会が多いと思います。散歩から帰宅したら、まずは排泄物の処理と足をキレイにするという作業があります。

マンションの共用部に足洗い場や汚物処理施設のような専用設備があればよいのですが、ない場合は作業がしやすいように玄関が広めであること、玄関の近くにトイレと浴室がある間取りが使いやすいでしょう【図1-1】。

 

2.ペットゾーンと玄関

ペットの飛び出しを防ぐ意味で玄関との間に扉があるとよい

ペットの飛び出しを防ぐ意味で玄関との間に扉があるとよい

お客様が来た時にペットが飛び出して驚かさないように、また、ペットが逃げ出さないように、ペットゾーンと玄関の間には、扉など何かワンクッションがあるほうがよいでしょう。

この間取りでは、着色してあるゾーンがペットとすごす空間になると想定されます。着色してあるゾーンと玄関につながる廊下の境目に戸がついているため、このような間取りなら玄関への飛び出しを防止することができます【図1-2】。

 

3.ペットゾーンと寝室

ペットにもよりますが、寝室とペットゾーンを明確に分けておくとよいケースもあります。【図1】の間取りはもともとPP分離の間取りになっており、寝室(この間取りの場合は洋室(1)と(2))とペットゾーンが明確に分けやすくなっています。PP分離とは、リビング・ダイニングなど家族の集まるパブリックゾーンと、寝室などのプライベートゾーンが廊下などをはさんで明確に分かれている間取りのことです。

しかしペットが高齢化して一緒に休む必要がある時がくるかもしれません。寝室もある程度の広さがあると良いですね。この間取りでは洋室1が7.5畳の広さがあるので対応できそうです【図1-3】。

 

4.リビング奥の個室をペットの部屋に

家族の目が行き届き居心地の良い場所にスペースを作りましょう

家族の目が行き届き居心地の良い場所にスペースを作りましょう

ペット専用の部屋を作りたいと考えた時、家族の目が行き届きやすい、リビング・ダイニングに隣接する洋室(3)がベストです【図1-4】。

南側のバルコニーからは少し奥まった位置にあるため、直射日光による室温の変化を受けにくく、ペットたちにとって居心地のよいお部屋になります。隣に住戸がなく、窓がついているので、音の心配も少なく、空気の入れ替えもしやすいでしょう。

 

5.キッチンに入れない間取り

侵入防止ゲートの例(出典:株式会社 日本育児)

侵入防止ゲートの例(出典:株式会社 日本育児)

熱湯、炎、食器やグラスなど危険なものがたくさんあるキッチン。基本的にペットが入れないようにするためには、キッチンが独立したクローズドキッチンの間取りが理想的です。

しかし現在最も人気のあるキッチンは、今回取り上げた間取りのような対面式セミオープンキッチンです。こういう形のキッチンの場合、注意したいのはキッチンの入り口に壁があるかどうかです。もし入口の両脇に壁があれば、小さなお子さん用の市販品の侵入防止ゲートを取り付けることができます【図1-5】。但し、子ども用の侵入防止ゲートの高さではネコはジャンプして飛び越えてしまうでしょう。

 

6.浴室は入りにくい扉かどうか

ペットが浴室に入り込んで事故が起きないように、浴室の出入り口にどんな扉がついているかチェックしましょう。折れ戸の場合はペットが開けやすいかもしれません。ノブをしっかりと回さないと開けられない開き戸や、外からロックがかけられるタイプの扉も理想的です【図1-6】。

 

7.何かと便利なスロップシンク

バルコニーにスロップシンクがあると便利

バルコニーにスロップシンクがあると便利

スロップシンクとは「底の深い流し」のことで、マンションによっては各住戸のバルコニーに設置されていることがあります。

実はこのスロップシンクは役に立つ設備で、靴や泥つき野菜、雑巾などを洗ったり、バルコニーで植物を育てるときに重宝します。毛布などのペット用品を手洗いするときにも活躍してくれるでしょう【図1-7】。

 

8.物入れ、収納の多さ

散歩が必要なワンちゃんを飼う時には、玄関に物入れがあり、そこにリードやお散歩バッグなどを収納できるとパッと持ち出すことができて便利です。その他にもかさばるペット用品をしまうために、物入れや収納が充実した間取りを選びたいところです。

今回の間取りで注目したいのはバルコニーに物入れがついていることです【図1-8】。マンションは戸建てに比べ収納スペースが小さいことが悩みのタネですが、このように外部倉庫として使える物入れがあると、外で使うペット関連用品や大きなものをしまっておくのに便利です。

 

9.置き家具の選び方

例えばテレビ台など重くて移動しにくい家具は、下部に隙間ができないものを選ぶ

例えばテレビ台など重くて移動しにくい家具は、下部に隙間ができないものを選ぶ

ペットゾーンの家具の選び方ですが、足つきの家具を選ぶと家具の下に隙間ができます。そのような隙間にはペットの毛がたまりやすく、また掃除もしにくいものです。もし小動物を飼う場合に逃げ込まれたら手に負えません。

足つきの家具を置くなら、ある程度の高さをキープし掃除できる空間を確保する、それができないなら床に置いてしまい、隙間を作らないようにしましょう【図1-9】。

以上、ペットと楽しく暮らすための間取りの注意点を取り上げました。小さなお子さんがいるときの注意点と共通する項目も多く、これからペットを飼う予定の方は「小さな子どもがいたらどうだろう?」と考えながらチェックするとよいかもしれません。

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