定年・退職のお金/老後資金の貯め方

あなたにもできる!自力で作る老後資金3000万円

フィデリティ退職・投資教育研究所が発表した「サラリーマン1万人アンケート」では、退職後の生活資金の準備額が0円という世帯が4割以上という結果に。今回は、これからセカンドライフの資金作りを始めたい人のために、様々なシミュレーションをしてみました。

平田 浩章

執筆者:平田 浩章

ファミリーのためのお金入門ガイド

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セカンドライフのお金事情はやはり厳しかった

フィデリティ退職・投資教育研究所が「サラリーマン1万人アンケート」の調査結果を2020年11月に発表しました。

その中で、退職後の生活が悪くなるという回答が大多数(約8割)を占め、必要と考えている老後資金は平均2,697万円、現実には36.7%の人が老後の準備額0円で、準備している人の平均額は644.6万円と、厳しい現状が浮き彫りになっています。
 
老後資金の希望額は、約3,000万円という回答が多い

老後資金の希望額は、約3,000万円という回答が多い

 

老後資金が約2,000万円では足りない人も多い

2019年5月に金融庁が発信した「2,000万円問題」がありました。公的年金だけでは老後資金が2,000万円不足するので、自助努力で準備しましょうという内容のもので、世の中の耳目を集めたのは記憶に新しいところです。

一方、今回取り上げた1万人アンケートにおいて、老後資金の希望額は、2,000万円を上回って3,000万円に近いということになります。

筆者がFP(ファイナンシャル・プランナー)として、相談者のライフプラン作りや財産作りのサポートを行う中で実際に計算すると、やはり老後資金が2,000万円では不安だというケースは多々あります。自分のプランに沿った金額を準備できれば、なお安心です。

将来が不安にもかかわらず十分な準備ができない要因には、マイホーム資金、教育費、保険料負担、低金利の預貯金、税金や社会保険料の負担の増加など、様々なものが挙げられます。ただ、だからといって何もしないと、老後の生活は相当厳しくなるでしょう。
 

自分の将来を国や企業まかせにするのは禁物

特に現時点で老後資金の準備額が0円の家庭では、今からできることに取り組む必要があります。「今は0円でも退職金もあるし年金もあるから」と、国や企業に依存するのは危険ともいえます。

公的年金制度は今後変わる可能性もありますし、退職金や企業年金を受け取れるのは、退職時やその後も会社の業績が良く、存続していることが前提です。

大手企業でさえ、将来も間違いなく大丈夫と言い切れるところはありません。他力本願ではなく「自力本願」で、具体的な自らの計画に沿った準備が必要な時代です。
 

家計から老後資金を準備する3つの方法

家計から貯蓄をするため、家計にゆとりを作る方法は「収入を増やす」「支出を削減する」「お金に働いてもらう」の3つのいずれか、もしくはそれぞれの組み合わせが必要です。いずれも継続することが大切なので、なるべくムリをしない方法を選ぶ必要があります。

今回はこのうち、「お金に働いてもらう」にクローズアップします。実際にFPとして接した相談者の実例をふまえてお話しします。
 

老後資金作りに適した金融商品はどれ?

老後資金の準備方法の中でも、「お金に働いてもらう」ことを考えてみましょう。お金に働いてもらうための金融商品は、自分のライフプランや時間(準備できる期間)と目的に合わせて選びます。

30代、40代ファミリー世代から見ると、老後資金作りは長期間の資産形成です。財産作りにおいて大切な武器となる「時間」を味方につけやすいともいえます。

同じ時間をかけても、金融商品やその利回りによって結果は大きく異なります。老後資金を、利回りが異なる3つの金融商品(預金、外国債券等、国内外の株式等)を使って準備した場合の違いを見てみましょう。

■シミュレーションのモデル
  • 現在の年齢 35歳
  • 目的 退職を迎える60歳までに25年間で老後資金を蓄えていく
  • 毎月の積立額 3万円
    (25年間毎月積み立てる金額)
  • 手元資金 300万円
    (定期預金に預けられる金額、もしくは一時金で投資する金額)
  • 30年後の自己資金合計 1200万円
    (積立額900万円(月3万円×12カ月×25年間)+300万円)
  • 各金融商品の金利・利回りイメージ
    預金0.01%、外国債券等3%、国内外の株式等5%(※金利・利回りは概算数値です)

預金の場合

預金金利0.01%の場合、30年後の資産残高は、元金1,200万円に対して、利息を含めて約1,201万円となります(※複利計算、税率は20.315%で計算、以下同)。
  • 積立額 900万円+利息8,904円=900万8,904円
  • 手元資金 300万円+利息5,982円=300万5,982円
⇒資産合計 1,201万4,886円

「預金」は元本が保証され、お金の出し入れもしやすいというメリットはありますが、特に今は超低金利。お金を増やす金利の力は非常に弱く、老後資金作りの受け皿としては力不足の感が否めません。
 

外国債券等の場合

利回り3%の場合、30年後の資産残高は、元金1,200万円に対して約1,770万円となります(先進国の外国債券投信や新興国債券投信などがモデル。また、毎月分配型の投信をイメージしており、分配金は再投資されるものとして複利計算)。
  • 積立額 900万円+分配金等328万1,076円=1,228万1,076円
  • 手元資金 300万円+分配金等241万5,246円=541万5,246円
⇒資産合計 1,769万6,322円

運用商品の中でも比較的、安定性と収益性を兼ね備えたものをモデルにしていますが、外国の為替・金利・財政状況などにより、元本や収益分配金などが変動するなどのブレがあります。一方で、国内の預貯金の利息水準よりは高い利回りを得られることが多いです。

25年後の資産合計は、シミュレーションの運用結果になったと仮定してですが、預金の場合よりも約570万円多い1,770万円。これでも十分な老後資金の水準にはあと一歩及びません。
 

国内外の株式等の場合

利回り5%の場合、30年後の資産残高は、元金1,200万円に対して約2,163万円となります(国内株式投信、外国株式投信、国内外の不動産投信などがモデル。また、配当・分配金は再投資されるものとして複利計算)。

・積立額 900万円+値上がり益・配当等466万2,160円=1,366万2,160円
・手元資金 300万円+値上がり益・配当等496万7,285円=796万7,285円 ⇒資産合計 2,162万9,445円

これは、値上がり重視の戦略です。前述の金融商品に比べると元本の上下の変動が大きく、短期の財産作りには向きませんが、長期の資産形成を目的にする場合はマッチングもよく、長い時間の中で安定性も高めつつ、収益性を高めていくことも可能です。

これに、ボーナス毎に12万円(年2回で合計24万円)を足して積立をすると、同様の計算で年間24万円×25年間で元金600万円、加えて値上がり益・配当等が310万8048円で合計910万8048円となりますので、上記と合わせて3073万7493円に到達となります。
 

人生のステージに合わせて資産配分も変えていく

ライフプランやマネープランをもとに、自分に合った効率の良い財産作りをしている人は、次の3つにお金を仕分けして、それぞれに合った金融商品を活用しています。
 
  1. すぐに使うお金(短期資金)
  2. 数年から10年先のためのお金(中期資金)
  3. 将来のためのお金(長期資金)

さらに、資産の分散も行っています。異なる多くの国や企業、通貨、金融商品に分散することで、それぞれのブレ(リスク)を全体で見た場合に小さくするためです。
 

35歳から老後資金作りを始めるなら、どんな流れになる?

また、資産や積立の配分もずっと同じというわけではありません。人生のステージに合わせて変化をさせていくことを視野に入れています。その一例を示すと、下記のとおりです。

■35歳
株式等(投信含む)で値上がり(元本の増大)重視。若いうちは利回り重視の資産配分で、投資したお金を大きく育てることを優先する。

■50歳
株式等の比率を半分程度に下げて、残り半分は国内外の不動産投信や外国債券(投信)に振り分ける。35歳からの15年間で育てた財産のブレを小さくしつつ、一定の収益性も確保してスパートをかける。

■55歳
国内外の不動産投信や外国債券(投信)の比率を、80%程度を目指して徐々に高め、さらに安定性を高めるようにシフト。

■60歳
資産配分を国内外の不動産投信や外国債券(投信)に100%移行して、財産の安定性を高める。また退職後、65歳までの公的年金収入のない期間を、資産を取り崩さずに乗り切りたい時期。これまで蓄えた財産から発生する毎月の収益分配金を得ることで、やりくりできる。

■65歳以降
引き続き、受け取る収益分配金と公的年金でゆとりあるセカンドライフを。

これらはあくまで一例ですが、自分や家族の将来のため、このような取り組みをしている人も多くいます。

何もしない人と、自分で決めたことをやり続ける人とでは、将来に大きな違いが出てきます。他力本願よりも「自力本願」の気持ちで、できることから始めてみませんか?


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