感染症/その他の感染症

デング熱の原因・症状・治療

アジア、アフリカ、中南米に多く見られるデング熱ですが、2014年に日本でも69年ぶりに国内患者の発症が確認されました。これから日本でも時々流行が見られる可能性がありますので、デング熱について知っておきましょう。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

東南アジアや中南米で患者が増加しているデング熱は、こうした地域で感染し、帰国後に発症する患者が増えています。2013年~2014年にかけて日本で滞在のドイツ人旅行者の発症と、海外渡航歴の無い患者が見られ、2014年に大流行が起こりました。今後も見られる可能性がありますので、デング熱について知っておきましょう。

デング熱の原因

蚊

ウイルスを持った蚊に刺されると発病することがあります

「フラビウイルス科フラビウイルス属デングウイルス」によって起こる感染症です。このウイルスをもつ「ネッタイシマカ」と「ヒトスジシマカ」に刺されることで人に感染します。このウイルスが体内に入っても症状が出てくるのは10~50%と言われています。人から人への感染はありません。

ネッタイシマカは日本では常在していませんが、ヒトスジシマカは北海道を除く日本の至る所に生息しています。ただし、温暖化のためか、生息域が徐々に北上しています。ヒトスジシマカの日本での活動時期は5月中旬から10月下旬です。活動範囲は50~100mです。

蚊に刺されてから発症までの潜伏期間は2~15日と幅広いのですが、多くの場合は3~7日ですので、1週間以内と思ってもいいかもしれません。

デング熱の症状

上記の通り、発症率は10~50%です。発症すれば、発熱はほぼ必ず出てきます。
  • 38℃以上の発熱、時に一旦解熱して再び発熱することも
  • 頭痛
  • 骨や関節の痛み
  • 嘔気、嘔吐
  • 発疹…発病時に赤い湿疹、赤い点状の点状出血、麻疹のような発疹(麻疹様紅斑)、赤く盛り上がった小さい発疹(紅色丘疹)
などの症状が見られます。

重症にならない場合は、発病から2~7日で解熱して、治ります。

重症になる「重症型デング」は、解熱する時期に突然不安・興奮状態になり、汗をかき、四肢の冷感が見られます。鼻血や血便などの消化管出血など、出血が止まらない出血傾向や血圧が下がるショック状態が24~48時間続きます。この時に適切な治療をすることで死亡率を下げることができ、2~4日程度で回復して治ります。このような重症型デングはデング熱の1~5%の割合で見られます。

デング熱の検査

まずは血液検査を行います。血液中のウイルスを分離したり、ウイルスの遺伝子をPCRという方法で増やして検出する方法でウイルスの存在を証明します。1回目と1~2週間空けて、2回目の血液検査でデング熱に対する抗体IgGの上昇を確認します。血液中のウイルスの一部を検査する方法もありますが、ある程度のウイルス量が診断には必要になります。

血液検査では白血球の数が減少し、血小板の数も減少します。

デング熱の治療

輸血

出血が多い時には輸血が必要になります

デングウイルスに対する特効薬はありません。そのため、症状に対する治療である対症療法が中心になります。水分補給と発熱時に解熱薬を使用します。ショックに対しては、輸液や血液成分を輸血したり、大量に出血している時には輸血も必要で、血小板が減少している時には、血小板を輸血します。

重症型デングでは、致死率は20%以上ですが、輸血などの適切な治療をすることで致死率は1%未満になります。日本では現在、海外での流行地(東南アジア、南アジア、中南米など)で感染して帰国した患者は毎年200名程度ありますが、幸い2006年から2010年までに日本内で診断された患者での死亡例はありません。

デング熱の予防

有効なワクチンはありませんが、現在、開発中で、治験中ですので、まもなく使用できるかもしれません。

予防には蚊に刺されない対策をすることになります。ネッタイシマカとヒトスジシマカはヤブカの一種ですので、屋内、屋外、都会、山間部でも生息しています。これらの蚊は昼間に刺す傾向があります。特に東南アジア、中南米に旅行する時には注意しましょう。

蚊取り線香

室内の蚊を減らすために、蚊の駆除をしましょう

蚊に刺されないための対策としては下記が挙げられます。
  • 長袖、長ズボンを着用する
  • サンダルなどの素足を避ける
  • 虫よけスプレーを使用
  • 民家の庭、公園、墓地、木陰やヤブを避ける
  • 屋内では、蚊の駆除をする
  • ボウフラなどの発生を防ぐ意味で水を溜めておかない

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