不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

隣家との距離

隣家との距離はなるべく広くして、通風や採光、眺望にも配慮したいところですが、なかなかそうはいかないのが都市部の住宅です。家同士の距離について基本的な考え方や規定を知っておきましょう。

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.050】

狭い間隔で窓が向き合った住宅

隣家との距離がたいへん狭い住宅も少なからず存在する


一般の住宅地において隣家との距離、間隔がトラブルの原因となることがあります。民法で定められた相隣関係によれば、敷地境界線から50センチメートル以上離して建てなければならないこととされていますが、そのようになっていない住宅も多いでしょう。

民法では例外として、お互いに合意があるとき、あるいはその地域に異なった慣習があるときには、敷地境界線から50センチメートル以内の範囲への建築も認められています。

さらに、建築基準法では防火地域または準防火地域内で外壁を耐火構造としたときには、外壁を敷地境界線に接して建築することが認められており、民法よりも建築基準法の規定が優先するという最高裁の判断(1989年)も出されています。

また、住宅などを建てる際の建築確認では、50センチメートル以上離れていないときに隣人の承諾を求められる場合があるものの、隣家との距離そのものは審査対象ではないのです。複数棟が建築される建売住宅同士では建築主が同じであり、合意や承諾自体が意味をなしません。

その結果として、隣家との距離が極めて狭い住宅や、ときには密着して建てられた住宅も少なからず存在します。双方の窓が向き合ってお互いに視界をふさいでいる例もあるでしょう。

問題が起きやすいのは、お互いの合意によって隣家との距離が狭くなった場合です。合意をした当事者同士が住んでいるうちはあまり問題ないのですが、中古住宅として売買され、所有者が代わるうちに感情的なトラブルへ発展することがあるのです。

隣人の承諾は書面化することまで求められておらず、口頭の承諾、あるいはクレームを申し立てないことによる「黙示の承諾」もあるため、その証拠がないケースも少なくありません。

そして隣人関係がこじれてくると、民法を持ち出して「お宅の家は違反だ」「外壁を取り壊せ」「屋根を切り取れ」と一方的な主張をする人が現れることもあるようです。民法で50センチ以上離すように求められているのは外壁であり、屋根ではありませんけどね。

このような事態を完全に避けようと思えば、第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域内で「外壁後退距離」が定められた場所、風致地区に指定された場所、建築協定で外壁後退距離が定められた場所などを選ぶしかないでしょう。

それ以外の場所でも周辺の家の状況をよく観察し、距離を開けて建てられた家が多ければたいていは大丈夫ですが……。


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