ニューリッチへの道/ニューリッチへの道

金持ち体質はコンプレックスを商品にする

消費者のニーズを最優先し、商品・サービスを企画・開発するマーケットインという考え方は、ビジネスにおいて必須だとされています。しかし、ヒット商品の中には、プロダクトアウトから生まれるものも少なくありません。

午堂 登紀雄

執筆者:午堂 登紀雄

ニューリッチへの道ガイド

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金持ちになるためのビジネスの考え方

消費者のニーズを最優先し、商品・サービスを企画・開発するマーケットインという考え方は、ビジネスにおいて必須だとされています。

しかし、ヒット商品の多くが、反対に商品開発・生産・販売活動を行う上で、企業側の論理や思想、感性・思い入れ、技術などを優先するプロダクトアウトから生まれることが多いという事実の意味を考えてみる必要があります。

かつては、「こういうモノが欲しい」という、人々のニーズは明確でしたが、モノが行き渡り、日常生活で困ることがなくなった現代では、細分化されたニーズを確実にとらえることが難しくなりました。

リサーチでわかるなら市場調査会社は大儲けしているはず

マーケットインの反面教師としてよく取り上げられるのが、1985年、コカ・コーラ社が綿密な市場調査をもとに味を一新した「ニューコーク」の事例です。

テストマーケティングの結果はヒットするはずだったのに、実際に出してみると、消費者の猛反発により撤回した、という話です。調査結果と市場の反応が食い違うことは少なくないのです。

私がコンビニに勤めていたとき、新商品開発のモニター調査に立ち会い、「この値段だったら買う」とモニターが大絶賛した商品がありました。しかし結果的に全く売れず、すぐに棚から撤去されました。

モニター調査という特殊な環境で単一商品だけを評価するときの印象と、実際の売り場でほかの商品との比較の中で、さらに自分のお金で選ぼうとする印象とでは乖離があるのだと感じたものです。

しかし、これは考えてみれば当然です。調査やヒアリングで何が売れるのかがわかるなら、市場調査を請け負う会社は大儲けしているはず。

マーケットリサーチで売れる商品を作ることはたいへんに難しい。つまり、市場調査はよくよくその調査方法を考えないと、無駄になる可能性もある、と注意する必要があるでしょう。

かといって、とにかく機能をてんこ盛りにする日本の家電メーカーに見られるガラパゴス的な商品開発や、「これが儲かるんじゃないか」という独りよがりの感覚で判断したプロダクトアウトも通用しませんから、ここにジレンマがあります。

ハートイン・プロダクトアウトの商品作り

そこで私は、商品開発のひとつのありかたとして、「ハートイン・プロダクトアウト」を提唱しています。これは、「開発者が猛烈に欲しいというものを商品化する」、というものです。

多くのヒット商品は、開発者の熱い想いが込められています。その猛烈な情熱が、顧客に「そうそう、そういうものが欲しかったんだ」と言わしめる「需要の創造」につながる可能性があるのです。

有名な「地下鉄乗り換えマップ」を作った、株式会社ナビットの社長である福井泰代氏もその一人です。考案のきっかけになったのは、夏の暑い日のこと。子どもをベビーカーに乗せて出かけていた福井氏は、乗り換えで地下鉄の中を歩いているうちに疲れ果て、乗り換えに近い車両が前もってわかれば便利だと考えた。

そして、週末ごとに夫に子供を預け、都内の地下鉄駅を自力で調査し、200以上の駅にあるエスカレーターやエレベーター、トイレなどの位置、別路線への乗り換えに便利な車両はどこかをメモしまくる日々。

そうしてできた莫大な記録を企画書として、50社以上をまわり、ついに出版物への採用へとこぎ着けたのです。

自分がほしい商品・サービスの後ろには、同じ思いの人が大勢いる

市場をひっくり返すのは、10人中10人がという商品よりも、10人中9人が「いらない」と言っても、1人が涙を流して欲しがるような商品です。ハートイン、つまり自分のココロに突き刺さる商品を作り、反応を見てから修正を加えていく。そもそもモノづくりのスタートは、作り手の情熱であり、夢です。

自分ではいいアイデアだと思ったのに、周りの反応が散々だった場合、たいていの人が商品化することをあきらめてしまうでしょう。しかし、たった一人でも夢中にさせられるなら、売れる可能性があり、市場に出してみる価値があるのです。

あなたが書いた企画書でも、全員から「いいんじゃない」と言われた時は要注意です。それは誰もが理解できる、現在の常識の範囲内での企画だと言えるからです。それに、全員がいいと思うということは、他の誰かがが思いついて動き出している可能性が高いでしょう。

ニーズとは、探すのではなく創造するもの。それは、自分が強烈に欲しいと感じるものを探すこと、つまり自分の内面を探るという方法もある。新たなムーブメントをおこすために、マーケットインでもプロダクトアウトでもなく、「ハートイン・プロダクトアウト」で企画を考えることが、本当に顧客の心を動かすためには不可欠な要素になると私は考えています。

だからこそ私は、「自分のコンプレックスをビジネスにする」を心がけています。なぜなら、自分が欲しい商品サービスだから顧客の気持ちがわかるし、仮にそれが売れなくても、自分がうれしいからです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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