住む人全員が使う場所=玄関には
ユニバーサルデザインが必要だ
毎日何気なく行き来している玄関ですが……
私たちが毎日何気なく行き来している玄関は「靴を脱ぐ・履く」という日本の住宅ならではの動作を行う場所です。
浴室やトイレ同様、その家に住む全員が使う場所だけに、玄関はお子さんからお年寄りまで、誰もが使いやすくなるような“配慮”が必要ですね。
そこでこの記事では、ユニバーサルデザインの観点から、つまり誰もが使いやすい玄関にはどんな配慮が必要なのか考えていきたいと思います。
まずは、玄関とはどんな空間なのかを改めて見直すことから始めてみましょう。
脱いだ靴を置いておく土間「下足空間」と、靴を脱いだ後に上がる廊下「上足空間」、そして、その2つを分ける段差「上がり框(かまち)」。主にこの3つが玄関を構成する要素です。下足空間のドロ、ホコリ、ゴミなどが上足空間に入りにくいように段差が設けられているのは、室内では素足で過ごす日本家屋ならではの特性といえます。
しかし、段差があるということは、一方で危険も伴っているのです。
玄関の危険を小さくする手すりの適切な位置
玄関に段差があることで生まれる危険とは何でしょうか。そう、「つまずく」「踏み外す」といったアクシデントです。
そうした事故防止策の代表格は手すりでしょう。その手すり、どんな形状で、どこに設置するべきか、ご存じでしょうか?
玄関に縦手すり(左側の壁)を設置した例
適切な位置を当社で研究してみると、上がる動作と下がる動作では、最も使いやすい握り位置は微妙に異なることが分かりました。つまり、それぞれの動作に合わせて2本設置するのが理想的なのです。
しかし、現実的には、スペースがない、見た目が悪い、お金がもったいない、などの理由もあり、一本の手すりで済ませたいところです。
そこでさらに研究を続けてみたところ、上がり框の直上に縦手すりを取り付けると(上の写真)、上がる動作・下がる動作の両方で不自由なく使えることが確認できました。
ただし、若い世代なら「上がり框の上り下りぐらいなら手すりなんかまだ要らないよ」と思う方もいるかもしれません。しかし、そんな方も、身体を支えるために実は無意識のうちに壁に手を付けて、身体を支えていることも……その証拠に、玄関の壁が汚れている家は、案外多いのです。
かくいう我が家もそうです。私の家はマンションで、上がり框部分の段差がそれほどきつくないこともあって、現時点では手すりを付けていませんが、2人の娘が手を付く部分がほぼ決まっているため、そこだけかなり汚れています。白い壁なので目立つのですが、これが意外に頑固な汚れで取りにくいのです。
「元気だから手すりないらない」というのも理解できますが、無意識のうちに壁に手を付いている事実を考えると「若いうちからでも、手すりはあるのにこしたことはない」ともいえるのではないでしょうか。少なくとも壁の汚れ防止になりますよ。
靴の脱ぎ履きをサポートする
「ベンチ」と「式台」
玄関用ベンチの設置例
上がり框の危険性を小さくし、スムーズに上り下りするにはベンチも非常に有効です。土間部分から40~45cmが理想的な高さといえます(写真右)。通常の公園に置いてあるようなベンチは、長時間座ることを想定して35~40cmが適当とされていますが、玄関用のベンチは靴の脱ぎ履きという短時間の利用ですし、上半身を折って屈む姿勢になるため、40~45cmくらいの高さのほうが使い勝手が良いのです。お年寄りが靴を脱ぎ履きする時、女性がブーツを脱ぎ履きする時などは非常に重宝するはずです。
式台の試作。最も下の台が式台です
また、段差の危険を小さくする意味では、式台(上がり框段差の中間に設けるステップ)を設置するのも有効です(写真右)。
次ページでは、付ける位置次第で段差の危険を大きくしかねない!?玄関の照明について説明します!