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夏ドラマ『若者たち2014』&『HERO』を演劇視点で考察

2014年・夏のドラマとしてフジテレビが総力を挙げて製作する『HERO』と『若者たち2014』。”フジテレビ開局55周年記念ドラマ”の冠がついた2本のドラマの視聴率は今のところ『HERO』が圧勝しています。共通点も多い2つのドラマに何故これほど数字で差がついてしまったのか……その「謎」を演劇視点を絡めつつ、徹底分析しちゃいます!

上村 由紀子

執筆者:上村 由紀子

演劇ガイド

”開局55周年記念ドラマ”の冠を掲げ、同時期にスタートしたフジテレビの月9『HERO』と水曜10時の『若者たち 2014』。約3分の1のオンエアが終わった時点で視聴率をチェックすると『HERO』の圧勝。実力派のキャスト、こだわりの脚本、ベテラン演出家と3本の柱を揃えた2本のドラマに何故ここまで数字の”差”がついてしまったのでしょうか。  注目の夏ドラマ2作品について、演劇視点を絡めつつチェックしていきましょう。

舞台出身&舞台出演の多い実力派キャスト

まずは両作品のキャストから

◆『HERO』◆
主演 久利生公平役の木村拓哉さんは1994年以来舞台には出ておらず、相棒事務官・麻木を演じる北川景子さんも舞台の出演歴はなし。が、周囲を固める城西支部の面々……松重豊さん、八嶋智人さん、小日向文世さん、正名僕蔵さん、角野卓造さんは舞台or劇団出身(濱田岳さんのみ舞台のキャリアはなし)。また今回”抜擢枠”と言われる馬場検事役の吉田羊さんは「東京スウィカ」という小劇場の旗揚げメンバー。2014年の春に再演された三谷幸喜 作・演出の舞台『国民の映画』では、小日向文世さんと夫婦役を演じています。(→ 関連記事)

◆『若者たち 2014』◆
主役 佐藤旭を演じる妻夫木聡さんをはじめ、次男・瑛太さん、長女・満島ひかりさん、三男・柄本佑さん、四男・野村周平さんらの佐藤家兄弟は全員舞台出演のキャリアが有り、いずれも高い評価を得ています。更に兄弟を取り巻く蒼井優さん、長澤まさみさんも積極的に舞台に出演し、三男が主催する大学の劇団で上演するのは劇作家・つかこうへい氏の戯曲『飛龍伝』。4話では11年前に青山劇場で同作の神林美智子を演じた広末涼子さんのゲスト出演もありました。

HERO

HEROはスピンオフドラマのオンエアも決定!


『HERO』と『若者たち 2014』の共通点

次に2作品の共通点を見てみましょう。

1 大ヒットコンテンツを手がけたディレクターが演出を担当

『若者たち 2014』のチーフディレクターは『北の国から』シリーズで国民的大ヒットを飛ばした杉田成道氏。そして『HERO』の演出は『王様のレストラン』、『29歳のクリスマス』、『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』等のチーフを務めた鈴木雅之氏が前作に続き担当。

2 続編、もしくはリメイク作品&映画化も
『HERO』は今から13年前に前作がオンエアされ、『若者たち』オリジナル版の放映は1966年。いずれも超人気ドラマとなりましたが、『若者たち』オリジナル版は同年に起きた国際的な事件の余波で途中打ち切りとなりました。また、両ドラマともヒットを受けて映画が製作されています。

3 登場人物が”全員集合”する場所がある
『HERO』では城西支部のミーティングルーム。『若者たち』では佐藤家の茶の間。前者では基本、軽妙な台詞が飛び交っているのに比べ、後者は「ど、どこの小劇場の舞台ですか(汗)」的な濃い目の台詞の応酬が続きます。2作品とも主役は確定しているものの、必ず登場人物が集合する場所が用意されている=「群像劇」である事を示唆しています。全員集合のシーンに関しては両ドラマとも全体的に演出が舞台っぽい作りに。

……と、いくつかの共通点もあり、舞台に深く関わる実力派&演技派と呼ばれる俳優達が多数参加している『HERO』と『若者たち 2014』。オンエア前の話題性ではむしろ『若者たち 2014』の方が一歩リードしていた感さえあるのに、何故視聴率では差がついてしまったのでしょうか。

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