節税対策

交際費課税を最小限に抑えるための接待飲食費の取扱い

消費を拡大する観点から、接待飲食費の50%相当額が損金算入されるようになりましたが、接待飲食費については、1人当たり5,000円基準や中小法人の特例があります。

今村 仁

執筆者:今村 仁

中小企業・個人事業主の節税対策ガイド

法人税における接待飲食費の取扱い

平成26年度税制改正において、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において、支出する交際費等の額のうち、接待飲食費(社内飲食費を除く)の額の50%に相当する金額については、法人の規模に関わらず、損金の額に算入することができるようになりました。

また、中小法人(事業年度終了の日における資本金の額が1億円以下で、資本金の額が5億円以上の法人の100%子法人等を除く)については、定額控除限度額800万円以下の交際費等について全額損金算入できることとなっており、「接待飲食費50%損金算入」とのいずれか選択適用となっています。

さらに、従前からある「1人当たり5,000円以下の飲食費等(社内飲食費を除く)」については、法人の規模にかかわらず書類保存要件のもと全額損金算入することができます。

一概に接待飲食費の支出と言っても取扱いが異なりますので、注意が必要です。

中小法人が接待飲食費を支出した場合

中小法人が接待飲食費を支出した場合、どのような取扱いをすれば節税となるのでしょうか。

明らかに交際費支出額が年間800万円以下である中小法人については、定額控除限度額のほうが有利ですし、手間もかかりません。しかし、交際費のうち接待飲食費が800万円を超える場合は、接待飲食費の額800万円÷50%=1,600万円がボーダーとなり、1,600万円以下の場合は定額控除限度額が有利ですが、1,600万円超の場合は接待飲食費50%損金算入を選択した方が有利となります。ちなみにどちらを選択すべきなのかの判定時期ですが、支出時ではなく事業年度終了後における決算申告書作成時となりますので、交際費を「接待飲食費(社内飲食費を除く)」「その他の交際費」に区別して管理しておくといいでしょう。

交際費の多い中小法人の場合、社外の人との飲食費について、まず会議費等であるかどうかを検討し、次に交際費のうち「1人当たり5,000円以下の飲食費等」の対象となるかどうかを検討します。双方にも該当しない場合は接待飲食費となり、決算申告書作成時に「定額控除限度額」か「接待飲食費50%損金算入」のいずれかを選択することになります。

なお、「接待飲食費50%損金算入」については、法人税法上で整理・保存が義務付けられている帳簿書類に飲食費であることを明らかにするために、次の事項を記載する必要がありますので、ご注意ください。

1. その飲食費に係る飲食等のあった年月日
2. その飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
3. その飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地

次に「飲食費の範囲」を見ていきましょう。

飲食費の範囲

飲食費については、社内飲食費を除き次のような費用も該当します。

1. 自己の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」
2. 飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料等
3. 飲食等のために支払う会場費
4. 得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」(得意先等において差入れ後相当の時間内に飲食されるもの)
5. 飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」

一方、次に掲げる費用は飲食費に該当しません。

1. ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用(通常、ゴルフや観劇等の催事を実施することを主たる目的とした行為の一環として飲食等は実施されるものであり、その飲食等はその催事に吸収される行為と考えられるため)。ただし、例えば企画した旅行の行程の全てが終了して解散した後に、一部の取引先の者を誘って飲食等を行った場合などの飲食費は、催事とは別に単独で行われていると認められるため、飲食費に該当する
2. 接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費
3. 飲食物の詰め合わせを贈答するための費用

社内飲食費の判定

社内飲食費の支出の対象者については、「専らその法人の役員もしくは従業員又はこれらの親族に対するもの」と規定されていますので、次のような費用は社内飲食費に該当しません。

1. 親会社の役員等やグループ内の他社の役員等に対する接待等のために支出する費用
2. 同業者同士の懇親会に出席した場合や得意先等と共同で開催する懇親会に出席した場合に支出する自己負担分の飲食費相当額

また、出向者については、一般に出向先法人及び出向元法人の双方において雇用関係が存在しますので、出向者がどちらの立場で飲食等の場に出席したかにより判定します。例えば、出向者が自社の懇親会にあくまでも自社の役員等の立場で出席している場合に支払う飲食代は社内飲食費になります。

将来の税務調査に備えて、帳簿書類等への適切な記載を始め、適正な状態で帳簿書類を保存しておくことも重要です。
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