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石から作る『せかいいちおいしいスープ』はどんな味?

お腹を空かせた3人の兵隊が、とある村で食料を分けてほしいと頼みます。けれど貧しい村人たちは、あれこれ嘘をついて兵隊たちの願いを断りました。困った兵隊たちは一計を案じ、石のスープを作ることにしましたが……

執筆者:大橋 悦子

賢い人しか作れない?! 『せかいいちおいしいスープ』

お腹を空かせた3人の兵隊が、とある村で一宿一飯を願い出ます。けれど、貧しい村人たちはあれこれと嘘をついて兵隊たちの願いを断りました。困った兵隊たちは一計を案じ、石のスープを作ると言い出しました。村人たちは興味津々。さて、賢い(?)兵隊たちが石から作るスープとは、いったいどんな味がするのでしょう?

石のスープは世界一! 王様やお金持ちのスープです

『せかいいちおいしいスープ』の表紙画像

こんなに賢い人たちは、この村辺りにゃいやしない?!

『せかいいちおいしいスープ』は、『三びきのやぎのがらがらどん』で有名なマーシャ・ブラウンがフランスの昔話をもとに作った絵本です。いかにも昔話らしいお話は、年齢に関わらず読む者を惹きつける魅力があります。だって、兵隊たちは石で美味しいスープを作るというのですから、読者だって気になりますよね?

石で作るスープは、どうやらお金持ちや王さまに大好評のスープらしい……。こう思い込んだ村人たちは、兵隊たちが「どんなスープだって、塩と胡椒だけは欠かせない」というのを聞いて、そのくらいなら協力できるとばかりに塩と胡椒を差し出します。

すると兵隊たちは、「人参さえあれば!」「キャベツが入ればもっと良い」などと要求を少しずつエスカレートさせ、村人たちをだまして、ついには牛肉までスープに入れることに成功しました。これはもう絶対にまずいはずのない特上スープの完成です。

このスープ作りの際の、兵隊と村人たちの掛け合いがとにかく面白い! 宮沢賢治の『注文の多い料理店』の山猫のように、兵隊たちは少しずつ言葉巧みに相手を丸め込んでいくのです。だまされている方はそのことに全く気付かないばかりか、魔法のような素晴らしいスープを教えてもらったと兵隊たちを英雄扱いしています。

持ち寄るという知恵が、美味しいスープのエッセンス?!

「おやまあ、詐欺師まがいの兵隊たちがまんまと食べ物をせしめるお話?」と思ったら、やはりマーシャ・ブラウンの絵本はそれだけではないようです。出来上がったスープを分け合う村人たちを見てください。彼らの幸せそうな、顔、顔、顔……。貧乏な村が一気に豊かな村になったかのようです。

おいしいスープのイメージ画像

温かで美味しいスープを一口飲めば、誰もがみんな幸せに!

「兵隊たちの嘘は人々を喜ばせる嘘だ」などと言うつもりはありませんが、「みんなで持ち寄る」という知恵が人々を幸せにしたことは事実のようです。読者の1人は、兵隊たちはだましたのでなく、食材の代わりに知恵を出したのだと言いました。あなたはどう思いますか? 読む人によっていろいろな解釈ができそうですね。

さて文章では語られていませんが絵を見ると、村人は兵隊たちの出発時になんとお土産まで持たせているようです。そのお土産を手にスタコラサッサと逃げてゆくような兵隊の後姿を見ると、やっぱり詐欺師のお話だったのかもという疑惑がぬぐいきれません。

このように、大人にとって示唆に富み様々な解釈ができる作品ですが、小さな子どもたちがその意味を汲みとれるかというとなかなか難しいかもしれません。それでも、村人と兵隊が互いにだましたりだまされたりする愉快なお話とその巧みな展開を、子どもたちが大いに楽しんでくれることだけは間違いありません。


【書籍DATA】
マーシャ・ブラウン:文/絵 こみやゆう:訳
価格:1728円
出版社:岩波書店
推奨年齢:5歳くらいから
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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