ストレス/ストレスフリーの思考術

過去も他人も変えられない!悩むよりも大切なこと

【公認心理師が解説】他人や過去は変えられません。他人や過去のことばかりくよくよと考えてしまうのは人の常ですが、それで悩んでばかりいてもよいことはありません。カウンセリングでよく使われる「変えられるのは自分と未来」という言葉をベースに、自分をよりよく変えていくヒントをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

「他人と過去」は変えられない、変えられるのは「自分と未来」

過去も他人も変えられない! 悩むよりも大切なこと

他人と過去のことに悩み過ぎて、苦しくなっていませんか?


「あの人の性格、何とかならないのかしら」「私はなぜあのときに、あんなことを言ってしまったのだろう」。このように、人はとかく他人や過去のことばかりを考えて、くよくよ悩んでしまうものです。

こうした悩みを抱える方に、私はあることわざをお伝えしています。それは「他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来」という言葉です。

「相手に変わってほしい」といくら期待しても、相手がこちらの思い通りに変わってくれるとは限りません。なぜなら、「他人の気持ちは他人のもの」だから。本人が「たしかにそうだよね」と納得すれば、変わってくれることもあるかもしれません。それでも、100%こちらの思い通りに相手が変わってくれるとは限らないのです。

過去も同様です。育った環境やたどってきた道、あらゆる失敗、こじれた関係など、「どうして、こうなってしまったのか」「なぜあのとき、こうしなかったのか」と、人はいつまでも悩んでしまうものです。でも、そうしたことをいくら考えても、過去の事実は変わらないのです。
 

「自分」を変えるには、考え方のくせを変える

うまくいかないのは、自分の「思いぐせ」に問題があるのかも?

うまくいかないのは、自分の「思いぐせ」に問題があるのかも?



変えられない「他人」や「過去」に執着するより、変えることのできる「自分」と「未来」をどうするか、考えていくこと。その方が何倍も合理的で有益です。では、どのように変えていけばいいのでしょう?

まず「自分」を変えるには、自分の「思いぐせ」に気づくこと。それがストレスを招きやすいものになっていたら、「認知療法」で修正するのがお勧めです。

普段、無意識のうちに選択している考え方のパターンは何でしょう? たとえば、物事を「○か×か」と二極化して考えている。いっときの感情にとらわれ、「自分はいつも失敗する運命」などと決めつけている。このようなことが多くありませんか?

こうした非合理的な考え方を「認知のゆがみ」と呼び、代表的なゆがみは10パターンあります。具体的には、「「ストレス思考10パターン」をチェック!という記事で解説していますので、ご自分の考え方に近いものがあるかどうか、ぜひチェックしてみてください。

これらの認知のゆがみに気づいたときには、そのゆがみにそって物事を考えるのをやめること。そして、「こう考えて苦しくなっているけど、この考え方は本当に合理的なのかな?」というように捉え直してみましょう。これをくり返していくのが「認知療法」です。

たとえば、「このテストに受からなければ、私の人生は負けだ…」といった極端な考えにとらわれ、苦しくなったとき、自分の思考がどの認知のゆがみのパターンに近いのかを検討します。そして、頭の中で現実的で合理的な考え方に修正していきます。

「テストに不合格になっただけで、なぜ『人生まで負けだ』と決めつけるのだろう?」「人生のルートはいくつもあるし、人生は何度でもやり直していいのでは?」というようにその都度、自分に問いかけていきましょう。悩んでいる友だちに語りかけるように、自分にも語りかけていくといいでしょう。
 

「未来」を変えるには、目の前の小さな行動を変えていく

未来を変えるには、「小さな変化」を積み重ねること。うまくいっていることを続ける、うまくいかなければ違うことをする

未来を変えるには、「小さな変化」を積み重ねること。うまくいっていることを続ける、うまくいかなければ違うことをする


では「未来」の方は、どのように変えていけばいいのでしょう? アメリカを中心に発展してきた心理療法の一つに「ブリーフセラピー」(短期療法)という方法があります。この療法の中心哲学である3つのルールに、未来を変えるヒントがあります。

【ルール1】今やっていることがうまくいっているなら、変えなくていい
【ルール2】一度やってうまくいったことは、繰り返していこう
【ルール3】うまくいっていないなら、違うことをやってみよう


とてもシンプルなルールです。目の前の小さな行動を変えれば、未来は変わります。一度やってうまくいったことは、次もその方法でやってみましょう。うまくいったことを何度も続けると、それが得意になります。得意なことができると、自信がついていきます。この繰り返しにより、自分がよりよく変化していきます。

そして、今取り組んでいる方法で成果が出ないなら、他の方法を試してみましょう。うまくいかないのは、今の自分に合っていない方法だからなのかもしれません。自分に合うことに取り組んでいれば、楽しさややりがいを感じ、時間を忘れて没頭できたりします。そうしたものは自然に続けていきたくなるため、時間とともに上達し、得意になっていきます。

くり返しになりますが、「他人」と「過去」は変えられません。変えられるのは「自分」と「未来」です。あなた自身がよりよく変われば、周りの人もあなたに影響され、いつの間にかあなたが望むように変わっていくかもしれません。

そして、自分の未来がよりよいものになれば、過去に対する思い(くやしさ、後悔など)も変わっていきます。「嫌な思いもたくさんしたけど、すべて肥やしになっている」というように、自分の過去を肯定的に捉えられるようになるからです。

ぜひ、変えられない「他人」と「過去」に悩むより、「自分」と「未来」をどのように変えていくのかを考えてみましょう。きっと、今までより何倍もよい変化が現れると思います。

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